今回は、調査と並ぶもう一本の柱、取材について書きます。
製品は、自分で調査するのはもちんのことですが、取材させていただかないとわからないことは大変多いのです。
■仕様書調査の限界
最初の調査は「仕様書」による資料調査から開始します。
もちろん、資料はしっかり読みます。ですが、資料には書いてないことも多くあります。
ここで言う書いてないことというのは、技術的な内容に限りません。いえ、技術的な内容に関しては、ほとんどの場合はしっかり書いてあるのがほとんどです。
とはいえ、自分は技術の一般的な常識はもっているとはいえ、詳細な知識にはどうしても欠けるとろがあります。
たとえば、あるPC関連のあるデバイスに「最大転送速度48Mbps」と書いてあったとします。
まぁ、これは某メモリカードの最大転送速度だったりするわけですが、理論値ではそうであっても、そのデバイスがカードを2枚させるようになっていたりすると、実用上は大きく状況が変わってくるわけです。
「スロットが複数あるけど、同時使用は一枚だけ」
「複数同時にアクセスできるが、大幅に速度が低下する」
「アクセススピードは、接続インターフェースの限度による、それを複数で分けて使うので、その分速度は下がる」
「速度は低下しません。常にフルスピードです」(←ありえません)
ざっと考えてみただけで、こういったオプションが考えられるわけです。しかし、これらのことは仕様書を見てもけっこう高い確率で書いてなかったりするのです。
これは別に、悪意があって書いてないということではなく、単純に「技術的に常識だろう」と仕様書を書いた技術者が思い込んでいるのが原因です。
したがって、このあたりが、仕様書による調査の限界となるのです。これより詳しく知るには取材を行う必要があります。
■取材はどうするか
できれば、取材の前に予備調査として仕様書を見ておくことが望ましいです。
とはいえ、その場で初めて物を見るということも希ではない取説屋としては、そうベストを望むわけにもいきません。
対象となる物を見たら、まず普通は「これはたぶんこういう物だな」という推測が働きますが、それでもあえて「これは何ですか」と聞くところから始めます。
これは自分のやった仕事ではまったくありませんが、たとえばイーモバイルさんのAndroid端末など、普通に見たら「ああ、これはPDAだな」と思ってしまいますが、実際には「モバイルルーター」として販売されています。とすると、取扱説明書もモバイルルーターとしてのものを書いて、他の機能はすべて「その他の機能」として書かなければならないのです。
だから「これは何ですか」と聞くところから始めなければならないのです。
技術的なこととは限らないのです。
そして、もうひとつ。
できればユーザーサポート・営業の人に話をしたいのです。
クレームの電話を受けたり、現場でお客様の話を聞く人は、確実に「お客様がどこで迷うか」の情報をもっています。
そういった情報があれば、トラブルの起こりにくい取扱説明書を作ることができるのです。
取材と調査、絶対に取扱説明書の準備はこの2本立てが必要なのです。