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【わかりやすいマニュアルの作り方】第137回 翻訳だけでは取扱説明書は無理です

6月が終わり、いよいよ夏本番が近づいてきました。
弊社はクーラーを使わずに、「空調服」という怪しげなアイテムで夏を乗り切ろうとたくらんでいますが、どうなることやら、です。

さて。今回は翻訳と取扱説明書の関係の話です。

■翻訳しただけでは取扱説明書になりません

最近も問い合わせがありましたが、英語や中国語の取扱説明書がある場合、「これを翻訳すればそのまま日本語で取扱説明書として使える」と思って問い合わせをしていらっしゃるお客様がいます。

はっきり申し上げますが、大間違いです。
技術翻訳に慣れた腕の立つ翻訳者さんが行った場合にのみ、きちんとした日本語として読めるテキストにしあげてくれる場合もあります。もっとも、これだけできる人は少々値段が上がり、ライターに書いてもらうのと大差なかったりするかもしれませんが、それはそれだけの価値があるから、仕方ないことでしょう。

さて。そうでない場合。

英語を読めるから、といって翻訳にはならないのは、どの業界でも当然のこととして知られているとは思いますが、とても簡単な実例を見てみましょう。
英文の取扱説明書に以下のように書いてあったとします。日本語ではどうなりますか?

Getting Start

これはほぼ慣用句みたいなものです。取扱説明書の翻訳に慣れている人ならば、迷わず「スタートガイド」と答えると思います。しかし、取扱説明書をあまり扱ったことがない、普通の翻訳をしてきた人にとっては、「さて、どうしよう?」といったものになるはずです。

■文化の違い

日本とアメリカの間でも、技術的な文化はかなり違います。

先程の書き方もそうですが、機器の取扱説明書に平然と”Enjoy!!”とか書いてあります。
日本で、それを真に受けて「さぁ、楽しみましょう!!」なんて書いたひには、間違いなくクライアントさんからの次の仕事はありません。

ただ、英文の取扱説明書は日本のそれに比べて構造化されている場合が多く、資料として見ると、日本の取扱説明書よりも優れている場合もあります。

ただし、図解のセンスに関しては日本の漫画とアメコミくらい描き方に差があるため、そのまま使うのはまったくお奨めできません。

また、説明の順番に関しても、「どうしてこうなるのかな?」といった場合がしばしば見られます。一応、論理的ではあるのですが、感覚的に違うなというものを感じざるを得ません。

■制度・法律の違い

もうひとつ面倒なはこちらかもしれません。

アメリカの場合FCCの認定を取っていれば、電気製品を発売できます。
当然ながら、この認定は日本では何の意味もありません。

ところが一部の取扱説明書では、どういうわけかこのFCC認定の内容をそのまま翻訳して掲載してある場合があります。
繰り返しますが、日本国内では全く意味のない記述です。

日本で売るものであれば、当然の制度と法律にのっとったものでなければいけません。特に取扱説明書は、製品の一部であり、お客様に説明を提供する唯一の方法だからです。

こういった理由から、弊社では「翻訳しただけでは取扱説明書は役に立たない。」と申し上げております。

きちんと製品を見て、操作して、エンジニアさんに取材をして、きっちりと原稿を書く。
弊社ではこういった方針で取扱説明書を作っております。

貴社の良い製品に、良い取扱説明書を提供したいと考えております。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所

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