さて、前回に引き続いて電気用品安全法(電安法)の解釈に変更があったことについて書きます。
この件について、ちょっと昼食時の雑談で業界の人と話をしたのですが、実はこの変更、家庭向け電気用品のリモコン操作の根本にかかわることの変更なので、とても大きく大切な変更なのですが、驚くべきことに法律や条例の変更ではなく、経済産業省による法律の解釈の変更に過ぎないという事を言うと、とても驚いていました。
当然だと思います。なんといっても本当に根本から安全基準が変わるのですから。
詳しい解釈についての解説は置くとして、何が変わるかということについて全体的な話をします。
■改正の内容について
前回書いたようにこの解釈の変更については既に適用されています。まぁ、それはよいとして。
今回追加された内容が何かと言うと、今までは電気回線か赤外線でしか操作ができなかったリモコンを、通信回線を通じて操作できるように変更したということが最大の変更点です。
家の外からでも、携帯電話などを使って自宅内の家電を操作できるようにする、ということです。
…まだわかりにくい。なんなんだこれは。
要するに、次のようなことができるようになったということです。
- 帰った時に家の中が暑いからスマホで家のエアコンをonにする。
- 家のビデオで録画するのを忘れていたけど、外からスマホで録画セットをする。
- 自宅に誰かいるように見せかけるため、外から照明をつけたり音楽を鳴らしたりする。
- 家の中のセキュリティ用監視カメラを外から操作する。
今まではこういう事は法律的に全くできませんでした。
具体的なデバイスの話をすると、恐らく数百円のデバイスでこういった機能は組み込めるのではないかと思われます。
まぁ、これだけの大変化が、経済産業省の解釈ひとつで変化したということなのですから、大騒ぎになっても無理は無いところです。
●追加された内容
さて、内容の解説に戻ります。
ここが、最大の変更点です。極めて重要なので、概要を抜き書きします。
通信回線を利用した遠隔操作機構を有する機器で次の全てに適合するもの。
- イ. 遠隔操作に伴う危険源がない又はリスク低減策を講じることにより遠隔操作に伴う危険源がない機器と評価されるもの。
- ロ . 通信回線が故障等により途絶しても遠隔操作される機器は安全状態を維持し、通信回線に復旧の見込みがない場合は遠隔操作される機器の安全機能により安全な状態が確保できること。
- ハ. 遠隔操作される機器の近くにいる人の危険を回避するため、次に掲げる対策を講じていること。
対策の内容は、簡単に言うと「リモコンより手元操作優先、遠隔操作は手元でオフにできるようにしろ」と言うことです。 - ニ . 遠隔操作による動作が確実に行われるよう、次に掲げるいずれかの対策を講じること。 (対策の内容省略:この対策の内容についてはまた別の回に解説します。)
- ホ . 通信回線(別表第四 1(2)ロの解釈 1 に掲げるもの及び公衆回線を除く)において、次の対策を遠隔操作される機器側に講じていること。 (対策の内容省略:この対策の内容についてはこちらも別の回に解説します。)
▼別表第四 1(2)ロの解釈 1 に掲げるものとは
1.「器体スイッチ又はコントローラーの操作以外によつては、電源回路の閉路を行えないもの」ということです。
元の文書には、これらコントローラーの操作や安全についての諸条件が詳細に記載されていますが、ここは取扱説明書のブログなのでここでは省略します。
- ヘ . 通信回線のうち、公衆回線を利用するものにあつては、回線の一時的途絶や故障等により安全性に影響を与えない対策が講じられていること。
- ト . 同時に 2 箇所以上からの遠隔操作を受けつけない対策を講じること。
- チ. 適切な誤操作防止対策を講じること。
- リ . 出荷状態において、遠隔操作機能を無効にすること。
読んでいただけば、おわかりのように大変に厳しい内容です。
本当は今回のブログの更新で全部説明しようと思っていたのですが、ニ・ホあたりの内容を全部記載していては、あまりにもボリュームが大きすぎますので次回にでもまわそうかと思います。
……と言うか、もはや取扱説明書とはかなり関係のない内容になってきてしまってるのではないかと少し心配しています。
それにしても、今時「イロハニホヘト」でリスティングしてるのは、、役所の文章以外では聞いたことがありません。なかなか興味深いところです。
内容的には、なにより、これが「全てに適合するもの」というところが大きいです。
ただし今回追加されたのは、こういった回線を使ったリモコンの操作が可能になったという点なので、かなり厳しい内容であったとしても大変革であるということについては間違いありません。
■リンク
最後にもう一度リンクを貼っておきます。
・経済産業省>消費者政策>製品安全ガイド>電気用品安全法のページ>(3)解釈・Q&A
http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/kaishaku.htm
・電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈の一部改正について(20130424商局第1号)
http:www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/kaishaku/gijutsukijunkaishaku/kaiseibun20130510.pdf
◆電気用品安全法
http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/topics.html