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【わかりやすいマニュアルの作り方】 第107回 紙の取扱説明書はなくなるの?

10月も後半になって、やっと涼しくなってきました。
ようやく、長袖と上着の出番です。
しかし、まだまだ昼間は気温が高くて、ちょっと歩くと汗ばんだりします。
おかげで、野菜が高いこと。高いのは仕方がないにせよ、、農協の直売所での品薄には参ってしまいます。なにしろ、買いたくてもブツがないものですから…

■紙の取扱説明書はダサい?

さて、本題に入ります。
石井ライティング事務所では「安全に関する記述」はいまのところ、紙に変わることができるメディアはないと考えています。
この件については連載の103回で書いておりますので、今回は触れません。
それとは別の理由で、石井ライティング事務所では紙のマニュアルはなくならないと考えています。
今回は、その話をしようと思います。

どうも、最近の新聞や雑誌の記事などを見ると、「厚くて、見にくい取扱説明書は読まない・ダサい」と考えられているようです。
たしかに、一昔前の携帯電話にはとても重い取扱説明書がついていました。自分も制作に携わった経験があるのですが、A5版で800ページほどあるメインマニュアルと、かんたんガイドと、その他にももう一冊あったようです。
これでは、買う方も重いですし、そもそも800ページ全部を読んでいたらどれだけ時間がかかるか知れた物ではありませんから、せいぜいがとばし読み、あるいはかんたんガイドだけ読んで、あとは枕か漬物石の代わりになるのは無理もないところです。

もっとも、これはお客様の場合で、販売店の店頭スタッフなどの場合はちょっと話が違っていたのでした。
お客様のと問い合わせに回答するため、随時参照するものでした。

つまり、辞書的な使い方ですね。そう考えれば、こうした取扱説明書を読む人が少ないのも納得ができます。どんなに良い内容であっても、辞書を最初から読んでいく人は数少ないですから。
なお、こういった形式のマニュアルはリファレンスマニュアルといいます。

■オンラインマニュアル(電子マニュアル)について

CD-ROMやメモリで提供される「オンラインマニュアル」(電子マニュアル)は、はじめはコンピューター関連から始まっています。
自分の知っている範囲では、開発ソフトや、コンピューターの業務システムに組み込まれたオンラインヘルプから始まっていたようです。

これは当然のことで、マニュアルあるいはヘルプは、それを参照するために表示できる環境が必要です。CD-ROMをただ眺めていても、害鳥を追い払う程度の役にしかたちませんし、ディスプレイのないオンラインヘルプはあってもなくても同じでしかありません。

こういった理由で、「オンラインマニュアル」に切り替えることができる取扱説明書は、「ディスプレイを備え、その情報を引き出すための操作ができる」環境が必要だとわかります。
近頃のPDA、携帯電話(スマートフォン含む)、デジカメ、ビデオ、テレビ、ゲーム機、HDD録画機、FAXなどが該当します。
逆に、ディスプレイとボタンがあっても、時刻しか表示できないデジタル時計は、オンラインマニュアルに切り替えることはできません。

■オンラインマニュアルについて

では、パソコンでCD-ROMを見れば良いという意見もありますが、これも常に見ることができるわけではない(外出先ではもうアウトです)、誰でも見られるわけではないといったことがあります。
それでも、一部の取扱説明書はパソコン用のCD-ROMに切り替わっています。これはどうしたことでしょうか。

紙の取扱説明書がオンラインマニュアルに切り替わっている理由は、「カッコいいから」「クールだから」という理由ばかりではありません。
内容のボリュームが増えすぎて、紙では提供しきれなくなってきたからです。

紙は、誰でもどこでも読めますが、重く、嵩がはって場所をとり、検索性に劣ります(その代わり、一覧性では紙にかなう物はありません)。
同時に、小さな機器に膨大な機能を詰め込んだ結果として、機器本体に比べて取扱説明書が数倍の大きさとなるといった事態となります。運送・在庫のコストも馬鹿になりません。
そこで、取扱説明書をオンライン化して提供しようということになるのです。

この、商品本体と紙の取扱説明書で大きさの差が最も激しいのがソフトウェアです。なにしろ、ソフトウェアにはサイズがありません。それだけに、どんな小さな機器にでも(メモリなどのリソースの許す限りの)膨大なソフトウェアを詰め込むことができるのです。ですから、ソフトウェア(デジカメやFAXなどの機器に直接搭載されたものも含む)は、どんどんオンライン化していくものと思います。

しかし、それ以外の物はたとえパソコンのハードウェアであっても、完全にオンライン化していくとは現状では考えられません。また、完全に紙のマニュアルがなくなるとも思いません。
たとえばパソコンのハードウェアの場合、CD-ROMがついていても、肝心のパソコンが組み立て中では見ることができません。他のデバイスにしても「電池の入れ方」などは、オンラインでは無理だと考えているからです。

つまり、自分場合は、マニュアルがオンライン化していくのは広い意味でのソフトウェアにかぎってのことだろうと考えています。

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