弊社は取扱説明書を制作する「取説屋」です。そのため、といっては何ですが、コストはとても大切です。弊社ではページ数千~一万といった金額を提示していますが、さて、これを外注ではなく社内でやればコストは抑えられるから、という意見は何度か承ったことがありますが、さていかがでしょうか。
■取扱説明書のコスト
先日某所で、雑談として話していたのですが、A4 / 50-60 Page程度の取扱説明書を作成することになった場合に「メーカーの社内で制作したら、いくらくらいかかるものでしょうか?」という話をしました。
そうしたら…軽い気持ちで聞いたこちらが驚くような回答が返ってきました。
「うーん、だいたい百万ですかね」
え? ひ、ひゃくまん?聞き違いかと思いました。その金額!どう考えても、うちで作った場合の二倍近い金額になるではないですか。
「TOPエンジニアが、二人ぐらい一ヶ月近く拘束されるんですよ。それくらいのコストにはなりますよ。」
「開発エンジニアが拘束されるのが嫌な場合には派遣の人を入れますけれども、やはり二ヶ月半ぐらいは頼むことになります。」
これらのコストを計算してみると確かに百万近くなると言うのは間違いが無いところです。別に無理に足し算したと言うことも全くありません。
■できた取扱説明書のパフォーマンス
では、そうしてでき上がった取扱説明書の性能はどのようなものでしょうか。
自分が「取説屋」という職業をやっているから言うわけではありませんが、日本においては、一般人向けの技術的ドキュメンテーション教育は一切行われていません。簡単に言い直すと「取説の作り方は何処でも指導しているところなんか無い」と言うことなのです。これを知ったときは、大変なショックでした。
自分はソフトウェアの開発をやり、出版業界の先輩方に取扱説明書と必勝本(ハンドブックとデータブック)の執筆と編集を学びました。そこで、取扱説明書の内容として書かれる技術と、編集の技術の両方を学ぶことができました。
読者の想定方法なども、このあたりで学んだことです。
したがって、技術的に優秀なエンジニアさんが手がけた場合でも、彼らは、編集やライティングについては、全くトレーニングを受けていません。したがって内容に間違いが無く、技術的にしっかりした内容であっても、一般ユーザーにとっては読みにくいものができあがる可能性がとても高いのです。これは社内のエンジニアさんに限りません。当然派遣の人も同様にトレーニングを受けていないはずです。つまり、あるレベル以上の取扱説明書は、作ることができたとしても、それは「個人の能力」によるもので、安定的に供給することは難しいと言うことを意味します。
私は他社の制作した取扱説明書を貶めたい思っているのではありません。単純に取扱説明書の作り方をトレーニングしてるところが「ない」と説明しているだけなのです。
この件については、次回もつづけたいと思います。