身体道楽日記 その12

レベルアップは2ストローク?<99/02/02>

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今回はここに書いてはいますけれども、「武術」も「水術」も「バイクのライディング」でも共通する話で技量のレベルアップの話です。


99/05/08 追記

この内容は「複雑系」という学問領域で研究されている内容と、ほぼ同じことです。興味のある方は、該当の書籍をお読みください。
この成長のシステムは、ニューラル・ネットワーク理論で説明できる…と思います。

「複雑系」新潮社 M・ミッチェル・ワードロップ 3300円

ISBN4-10-533101-9

高価なので図書館などで借りられるとよいかも(^_^)


きっかけ

武術に限らず、身体を動かすものの稽古をしていると、しばらくの間技量が伸びない時期が続き、それから突然技量がアップするというように感じていました。
ちょうどRPGでレベルアップするときと同じように、突然強くなったり、うまくなったりする、と。
ここからバイク乗りモードとクロスオーバーして、稽古をガソリンエンジンにたとえて話をします。

圧縮

稽古を積み、経験が溜まっていくときというのは、ちょうどシリンダー内に混合気(ガソリンの霧状のものと空気が混ざったもの)に圧力をかけた状態みたいなものだと思います。
基本稽古をする、套路を繰り返す、素振りをするといったことが、これにあたります。
この状態では、ほとんどの場合自分が何をやっているのかわかりません。また、先輩方がその先のレベルに達しているのを見ると、「稽古を続けていくとああなれるんだろうな」とは思うものの、自分との違いがよくわからりません。
そして、この状態は自分でもよくわかっていないところにどんどん圧力をかけていくので、キツい時期でもあります。

点火

充分に圧力が高くなったら、そこに「それは何をするためのものか」という「理」を通すことにより、圧力の高まった混合気に点火します。
そして、爆発が発生し、ぐぅんとピストンを押し下げ、フライホイールを回すのです。

これは、先生(師匠)がヒントを与えることで、スパークプラグで火を飛ばしてやるか、あるいは圧力が高まって自然発火する場合の2つがあると思います。
もちろん、適正な時に火を飛ばせる先生はすばらしいのですが、でも、それ以上に自分で「理」をつかみ、いわば
自然発火するときは、本人にとってすごい感動があります。
教える側はその先を当然知っています。ですから、それを教えたいに違いないと思うのです。でも、それをしないで自分で気付くと、教えられるよりもはるかに大きな感動となって、技量を伸ばし、稽古を進める推進力となると思うのです。

もっとも、圧縮比を高めすぎたエンジンでよく起こることですけれども、自然発火すると、シリンダーヘッドを吹き抜けたりして危ないんですれども。
そうなる前に火を飛ばすのも先生の役割なのかもしれません。そう考えると、先生はすごく大変だなぁ、と思います。

排気

混合気に点火し、爆発が発生した後は、そのガスはもう燃えませんから排気しなければなりません(ジェットエンジンのアフターバーナーといった例外は考えないでください)。
稽古のときも同じことが起こります。
1つ上に上がった直後は、いったん全部を組み立てなおさなければならないことがあります。その結果、一時的に下手になったり、弱くなったりします。
でも、これはいったん前の燃えかすを出してしまうためには必要なプロセスだと感じています。
そうして、排気が終ったら、また新しく稽古を始めて次の燃焼サイクルへと続いていくのです。

フライホイール

「稽古は楽しい」という言葉がありますが、実際のところはどうなんだろうなぁと思います(^^;)。
もちろん、身体を動かすことは楽しいですけれども、常識的に考えて、寒い中、あるいは暑い中、稽古をすること自体が楽しいってのはヘンじゃありません?
で、考えたのです。

「どうして楽しいんだろう?」

現時点ではやはり「感動」を味わいたいから、という答えになりました。
一番大きい感動は「理」が通って点火する瞬間ですが、その途中にもいくつも小さな発見があり、それに感動できるから楽しいと思えるのではないか、と。

それだけに、最初の感動に至るまでが大変なんだな、とつくづく思います。
いままで、バイクも水泳も、武術も、最初の「おもしろい」と思うところに到達する前にやめてしまった人達をたくさん見ました。そういう人達を見るたびに「もったいないよなぁ」と思うのです。
この「面白さ」または「感動」があれば続くに違いないのに、と。
だから「感動」がフライホイールで、次のサイクルへと続けていくのだと思います。

エンジン特性

えー、僕の稽古の特性はうちのGB500TTと一緒で、シングルエンジンのロングストローク・低回転で大トルク型です。
ひとつひとつ、次のレベルに上がるまでに時間はかかるけれども、爆発ひとつずつは大きい力を出す。そんなタイプだと思っています。
他にも、ショートストロークのマルチシリンダーですとか、いろんなエンジンがありますが、僕は今のやり方が好きです。

「理」が先走ると、経験が追いつくまで大変、と感じていますし、高回転でいっぺんにいろいろ覚えられるほど器用でもないです。
これはこれでやり方なんでしょうけれど、僕は経験を積み、それから
理で火をつけてやる、という方が好きなんです(^_^)。

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