「取説屋:石井ライティング事務所」の代表兼テクニカルライター改めマニュアルディレクターのブログ

【わかりやすいマニュアルの作り方】第97回マニュアル制作者に必要な能力

先日、様々なメーカーさんとの交流会に行ってきました。
そこではまだ直接商売の話にはなりませんで、相変わらず「そういう仕事があるのか」という反応が、数多く見られました。
まあ、日本中探しても「マニュアル制作者」の養成をしているところはほとんどない(厳密には始めたところがあります)状況なので、仕方がないところではありますが。
「マニュアルなんて、日本語を書ければ誰にでも書けるだろう」と思っている方がまだ多いということですが、実務でやってみますと、そんなことでは全く制作できないという、壁にぶち当たるはずです。
マニュアル制作者に必要な能力を、リストアップしてみます。
この内容は以前にも書きましたが、その時代よりも、必要な能力がいくつか増えているのです。

■技術的理解力

まず真っ先に必要なのはこれです。
「この製品なんだかわかんないけど、とにかく書く。」これではよい取扱説明書は絶対にできません。
技術的な詳細についてまで知っている必要はありませんが、その技術が何なのかといったことまでは知っている必要があります。
■説明をする技術力
テキスト・イラスト・写真・図表・デザイン・構成など全てをひっくるめて指しています。
とにかく、わかりやすく説明する能力です。
個々の文章の書き方から、全体の構成の作り方まで、広い範囲を含んでいます。

■成果物を作る能力

印刷物・ヘルプ・htmlその他どんなメディアであれ、最終成果物を作る能力です。
印刷の基礎知識から、レイアウトデザイン-しかし、ここでは説明のためのデザインではなく、印刷物として必要な小口やノドといった知識を指しています。
また、技術的に「このテキストは絵の回りを、回り込ませることができるかどうか」といったことを知っている必要があります。
このあたりの技術を持たず、たとえば、Wordでテキストと図表だけ作り、製品写真をデジカメで撮影して、すべて印刷屋さんに持ち込めば、取扱説明書を作ることはできます。
しかしそういった方法で作られた物が、良い出来であるということは少ないでしょう。
全部自分でやる必要はありません、しかし、少なくとも、どのようにして作るかの指示が書けるだけの、技術は必要なのです。
■法律的な知識
「取扱説明書に何を書くか」「取扱説明書はどう書くべきか」
このあたりを規定する知識です。
実務としては、「会社名・連絡先は必ず掲載されていなければならない。」や「使い方の最初には、危険・警告・注意といった内容を記載する。」といったことを知っていなければなりません。
これも厳密な法律知識が必要なわけではありませんが、PL法や消費者保護法、および各業法が「どんな思想に基づいて何を目的として作られているか」ぐらいは知っている必要があります。
実は、この部分が、今までの説明と違うところです。今までは、こんなに法律的な知識が普通だと自分では思っていませんでした。
ただ、知らないでいますと、いろいろとヤバい(デザイナーや制作者個人が訴えられたという実例があるものですから)ので、最低限は自分の身を守るために必要だということです。
今週はこのあたりで…

【わかりやすいマニュアルの作り方】第96回何にでも説明はあった方がよい

ここ何年かで産業構造が大きく変わっています。
個人商店が減り、大規模小売店や通信販売にどんどんシフトしています。
ここでそれを論じても、どうなるわけでもないのですが、生産者(必ずしもメーカーとは限りません、輸入をしてる方も含まれます)は、今までのように知識のある、店員さんに売ってもらうことができなくなりました。

しかし、それでも商品に説明が必要なことがあることは変わらず、説明の必要性は、まったく減っていません。
さすがに生鮮食料品に関しては、お店の人が調理の仕方などを説明してくれているようですが、電気製品などに関しては、店員さんの知識の低下は、かなりのものがあります。もちろん、プロの店員さんはいますが、比率としては明らかに低下しています。

■誰が商品の説明をする?

しかし、商品の説明をしなければなりません。
そのためにどうするか。方法は一つしかありません、商品そのものに語らせることです。
つまり、説明が不要な商品を作る。これが理想ですが、それができないのであれば、商品に説明書をつけます。

このとき、間違えてはならないのは、取扱説明書は商品の一部だということです。
一番よくあるのが「取扱説明書は商品の付属物である」という勘違いです。
「付属物だから、とりあえず付いていればいいや」という結果につながります。
これは大きな間違いです。
どんなに良い機能があっても、その機能の使い方が分からなければ、その機能はないのと変わりません。
むしろ、わかりにくいだけであればクレームの原因となるだけですから、むしろない方が良いとも言えます。

説明と本体は一体なのです。
昭和時代の製品のように単機能の製品であれば、必要ない場合もあるかもしれませんが、現代の製品では考えにくくなっています。
むしろ、ユーザーの方も知識が低下している(お米を洗剤で洗う消費者が居る時代です)ことを考えると、説明がきちんと付いていない商品はそれだけで欠陥であるということです。

■PL法でいう表示欠陥とは

PL法には「表示欠陥」という言葉があります。
文字通り、事故が発生したときに取扱説明書や表示やシールなどが不足していたり、間違っていたりして、危険を防止できない場合に言われることなのですが、実はこれはとても恐ろしいことなのです。
PL保険に入っていらっしゃるとしたら、是非とも約款を見直してください。そこには次のようなことが書いてあるはずです。

表示欠陥がある場合は、この保険は支払われない。

このことは、JTDNAのセミナーで知ったのですが、言い換えると、「取説に欠陥があったら、保険金は出ないよ」ということです。
脅すわけではないですが、これは相当にヤバいはなしです。
ちなみに、表示欠陥というのは、取扱説明書の中に、メーカーの連絡先が書いてなかったという場合なども含まれます。

今は、消費者保護ということで、こういった方向がどんどん強化されているようです。

厳しい時代です。

【わかりやすいマニュアルの作り方】第95回それでもポイントは愛

前回の直接的な続きです。
突然、歌のタイトルのようなものが出てきて驚かれたかと思います。
しかし、まぎれもない前回の続きです。
ですが、前回とは全く趣が変わってしいるので驚かれるかもしれません。

■愛が無くては始まらない

さて。

前回の「取説屋」のお客様層について、もう少し掘り下げて考えました。
すると、お客様は「自分の仕事に誇りを持っているプロ」だという結論になりました。
つまり私はプロと仕事をしたかった。ということなのです。
プロは、自分の作ったもの責任と愛を持っています。
責任を持つのはプロとして当たり前、愛がないならプロとしてやるべきではありません。

つまり、私、取説屋は、こういう「プロとしての技能」を持っています。
一緒に、良い仕事をしたいです。

ただ、それだけのことです。

■説明が必要な時代

本当は、取扱説明書が不要な製品が理想だというのは私も知っています。

でも、昔とは販売方法も変わりました。
昔は、お店で、対面販売をしていました。
今は、対面販売よりも、電話インターネットファクスを使った通信販売の比率がはるかに大きくなっています。
昔ならば、店員さんは専門家でした。商品の説明もしてくれました、サポートもしてくれました。アフタサービスももちろんしてくれました。
ですが今は、そういった、説明などについてはほとんど望めなくなっています。
商品の情報については、製品を出すが、メーカー側、生産者側が提供しないといけなくなっています。
消費者保護法との関連もありますが、何より、通信販売の説明のもととなるものは商品の説明です。

生産している人や会社が商品の説明をつけなければ、通信販売の業者は一般的な説明をつけることになります。
あなたの商品が「こんな特色があるのでこう売りたい」と思っても、それを伝えない限り、伝わりません。
販売会社に口頭で説明しても、それはなくなります。
「説明をこうつけてほしい」そう思ったなら、紙かデータでつけるべきです。
そしてそれをお手伝いできるのが、私「取説屋」だと考えています。

「取説屋」は、取扱説明書ばかりを作っているとは限りません、リリースやニュース原稿のもとだって作れるのです。
自分の商品はこういうものだ、と説明したことがある方は、ぜひご相談ください。

【わかりやすいマニュアルの作り方】第94回 取説屋のお客って誰だろう?

更新が遅くなってすみません。

体調不良と仕事の多忙が重なったのと…実は今、仕事の全体的な見直しを行っています。
ということで、まず「取説屋のお客って誰だろう?」というところから考えています。
私はほとんど取扱説明書を作る側でした。
ですから、「取扱説明書が必要」という状態になったことがありません。
そこでどういう人が「プロの作る取扱説明書」が必要な人はどういう人なのかを考えてみました。
すると少し面白いものが出てきました。

■ただの取説とプロの取説

取扱説明書は、電気製品などには必ず付いてきます。
しかし、その多くはエンジニアや手の空いてる人に適当に書かせたような割といい加減なものです。
低価格の製品であれば、その傾向はより強くなります。
極端に言えば、100円ショップの製品にはほとんど取説はついていません。
つまり、これらの人たちは、製品の説明としての「取扱説明書」は必要でも、「プロの作った取扱説明書」は不要だと考えているということです。
私はこういう人たちを相手に売り込んでも、無駄ということです。
なぜなら、その人たちはプロの技を欲していないのです。私の提供できるのはプロの取説です。
そうです。私の提供するのは「プロの作った取説」であり、ただの取説ではないということがわかってきたのです。
では、「プロの作った取説」が必要なのはどういう人でしょうか。
私は、このように考えました。
・自分の商品をよりよく使ってほしい。
・自分の打った商品をきちんと手入れして長く使ってほしい。
(厳密には上に含まれますが…)
・売った後も自分の商品に責任を持ちたい。
こういう人ではないかと考えました。
商品もどんなに素晴らしく作っても、それでも説明は必ず必要です。
そして、商品を作る人は、説明のプロではありません。
広告を作る人も、説明のプロではありません。仕事の内容が異なるのです。

■プロの取説が必要な人

そして、もしかしたら、こんな人たちこそが「プロが作った取説」が必要なんじゃないかと考えてみました。
多分、取説をつけるなんて考えたことがないようなものです。
・米
最初に考えついたのは米でした。
うまい米の保管の仕方、炊き方、むらし方。
炊飯器に入れれば、米は炊けます。
でも、本当は「わかっちょらんな、こげすればもっとうまいのに、知らんから…」と思っていらっしゃる方が、多くいるのではないかと思います。いや、確信しています。
もちろん、安い米では意味がないかもしれませんが、服無くとも、ブランド米と言われる美味い米を誇りを持って作っていらっしゃる方は付けた方がよいでしょう。
「そんなの常識だ」は、残念ながらもう通用しない時代なのです。
調理器具
次に思いついたの鉄のフライパンでした。
今うちでは卵焼きが上手に焼けるようになりました。
そのためにはフライパンの状態を上手にメンテする必要があります。
水を飛ばして油をひく。焦がしすぎない。
調理ではなく、道具の手入れ方法について。
きちんとすれば寿命が長くなることはいうまでもありません。
・服・靴
お手入れの仕方。
妻と話をして出てきたものです。
知らない素材について、どうメンテナンスしたらよいかわからないから、全部クリーニングに出してしまう。
洗濯してそのまま乾燥機にかけてしまったら縮んでしまった。
形くずれした。
靴がかびた。
こんな事だって、取扱説明書がついてはもしかすると防げるかもしれないのです。
こういう商品を売っている人たちが、本当は「プロの取説」が必要なのだと考えるようになりました。

【わかりやすいマニュアルの作り方】第93回重要書類としてのマニュアル

今回からというか、しばらく前からですが方向を変えてきています。
方向を変えた理由は、いままでの「ただの取説制作者」から「相談できる取説屋」へと変わろうと思っているからです。

今回、代表の石井は講習と試験を受けてPL関連のNPO、JTDNAの正会員となりました。
試験なんて、武術の昇段試験とか、二輪の限定解除以外、ずっと受けていなかったので、大変に緊張しました。

さて、そのJTDNAですが、「内閣認証NPO法人」で、PLについて研究しているおそらく日本で唯一、取扱説明書についてPLの視点で研究している団体です。
東京商工会議所への相談から、梁瀬和夫先生をご紹介いただき、そちらからご紹介いただいたのが、このJTDNAでした。
予想を大いに裏切ってありがたかったのは、その事務所が自転車で行ける距離だったということですが…。
とりあえず、次回のセミナー(無料)はこちら。また、梁瀬先生のお話です。

TDNA製品安全セミナー及び勉強会

申込書は以下のPDFをダウンロードして記入してFAXにて。
平成22年5月~7月のセミナーというページにリンクがあるのですが、なかなか見つけづらいと思いますので、直リンにて。

https://docs.google.com/viewer?url=http://www.jtdna.or.jp/PDF/2010seminer_annai100506.pdf

■重要文書としての取扱説明書

ということで、ここからが本文です。マクラの方が長くなって申し訳ありません。

上のマクラとも関係しますが、取扱説明書が、どうして、PLと関係するのでしょうか。
実は勉強はじめるまで、取説屋をやっている自分も、法律的な詳しいことは知りませんでした。税策の実務については詳しいのですが、法律的な裏付けに乏しかったのです。

本来ならば厳密に定義して書かなければならないのですが、社長ブログ、ということで、簡単に書かせていただきます。
取扱説明書に問題があると、PL関連で裁判になったとき、「表示欠陥」として、確実に負けます。
「だって、書いてないじゃないか」
これだけです。抗弁の余地はありません。

■リスクマネジメントとしての取扱説明書

都市伝説となっている「猫を電子レンジに入れて乾かそうとした人が、裁判して多大な賠償金をメーカーから取った」(ちなみに、ウソです)という話がありますが、これはマニュアルの不備(生き物を入れてはいけないと書いてなかった)ということで負けたということになっています。
では、細かく「●●をしてはいけない」を延々何ページにもわたって書いておけば良いかというと、今度は「字が小さすぎて読めなかった」とか別のことをいわれることになるわけです。

では、どうすればよいか、という対策、リスクマネジメントとしての対策をとればよかったのです。

ちなみに。上の「猫電子レンジ」の件は、正解は一つではありませんが、うちでならこうしますという回答例を載せておきます。

「本製品(電子レンジ)は、食品を温めるためのものです。使用目的以外に使用しないでください。」

基本的に、これで全体に網がかかります。
このうえで、細かい内容の注意を書いていけばすんだのです。

長くなってきましたので、今回はここまでに。

【わかりやすいマニュアルの作り方】第92回 マニュアルの立場

前回はあまりの仕事の忙しさに、更新をお休みしてしまいました。
仕事があるのはとてもよいことですが、できればきちんと更新はしていきたいと思っています。申し訳ありません。

■マニュアルの立場

さて。今回は「マニュアルの立場」についてです。
実は、ということではないのですが、私は今週末に講習を受けて、PL対策に対応したマニュアルを作る資格を取る予定でいます。

昔話になりますが、自分がこの仕事(テクニカルライター)を始めた頃は、マニュアルは製品の付属物で、法的な定義はありませんでした。
今でも、製品の付属物だと思っている方は多いようです。
でも、実は今ではそれではいけなくなってしまっています。

先日の、消費者保護法の改正により「メーカーまたは販売者は、消費者にわかりやすく情報を伝える義務」が課せられました。

PL事故が起こった場合、きちんとした取扱説明書がないと、「表示欠陥」となってしまい、「やってはいけないこと」を記したものがないために、莫大な金額を支払わされる…ということもないとはいえなくなってしまったのです。

そうです。
マニュアルは、いままでの「製品の説明書」から「消費者に製品のことをわかりやすく伝える」ための文書へと立ち位置を変えました。しかも、以前とは異なり、法律的な裏付けのある文書になりました。

■立場は変わっても

もちろん立場は変わっても、私達テクニカルライターにとっては「わかりやすいマニュアルを作る、という点では変わりはありません。しかし、マニュアルを作るにあたって今までの判例や。規則に基づいて作る必要が生じてきました。

また今まではマニュアルを、主に業界団体の基準に従って作られてきましたが、業界団体のマニュアルが不十分であるとされる判例が相次ぎました。
そのため、現在では、業界団体ではなく、第三者機関によるチェックを受けたものが必要とされています。

というわけで我田引水ですが、今回その第三者機関であるJTDNA(内閣府認証NPO法人)の「テクニカルデザイナー」という資格を取るために講習を、受けに行くことにしたのです。

ということで、これから石井ライティング事務所の制作するマニュアルは、JTDNAの「取扱説明書ガイドライン」に沿ったものに変わっていくと思われます。
PL法で訴えられないための安全ではなく、お客様の本当の安全のために、という点は変わりません。

これからも石井ライティング事務所をよろしくお願いします。

「携帯電話の過熱でやけどに賠償 仙台高裁」について

ポケットに携帯を入れたままコタツに入って低温火傷を負ったということで賠償すべしという高裁の判決が出たというニュースがありました。
最初にニュースで読んでも、以下のどちらかわかりませんでした。
  1. 携帯電話がコタツの熱を集熱して熱くなった
  2. コタツの熱で異常動作して、携帯電話自体が発熱した
1) だとしたら、ここまで製造物責任としてカバーしきれるものか、マニュアルのカバー範囲としても考えてしまいます。
製造時に、通常50度程度の環境下での加速試験程度はやっていそうに思いますが…まさかそのカバーが熱くなって低温火傷を負う恐れが…というのはやっていないでしょうし。
しばらくすると、以下の記事が見つかりました。
以下、引用
小磯武男裁判長は「(携帯電話は)ポケットに収納し、こたつで暖をとることは通常予想され、取扱説明書で禁止したり、危険を警告する表示をしていない。製造物が通常有すべき安全性を欠き、製造上の欠陥があると認められる」とした。
過熱の原因について小磯裁判長は「事故当時に携帯電話が連続通話状態で45度前後になっていたことや、こたつの熱が外部熱源になり、電池に作用したことなどが考えられる」と指摘した。
男性側の立証責任については「通常の使用にもかかわらず異常が発生したとすれば足り、具体的な欠陥の特定は必要ない」とした。
2007年7月の仙台地裁判決は「こたつが原因の可能性が高く、携帯電話に設計や製造上の欠陥は認められない」と判断。男性側が控訴していた。
引用ここまで
■最大の疑問

これが最大の疑問なんですが。
コタツでポケットに入れて寝た。ここまでは良いでしょう。
でも。
「携帯が連続通話状態にあった」って…これは「寝たまま、コタツに入れた電話をかけっぱなしにしていた」ということではないのでしょうか?
これが予見できる通常の使い方というのでしたら、マニュアルはどこまで書けばよいのでしょうか。

これが判例となると、メーカーにとってもかなり厳しい話になりそうです。

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