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【わかりやすいマニュアルの作り方】第220回 取扱説明書は部品です

2014年9月5日 金曜日

前にも書いていることとかぶってきますが、取扱説明書を作成する技術、【ドキュメンテーション】は日本ではようやく学会ができただけで、まだちっとも研究が進んでいません先日も、「危険の説明」をトップに小さい字で何ページも書いている取扱説明書だとか、そもそも表組みになっていて読みにくいとか、部品の名称が後に書いてある取扱説明書とか、もう言い訳のできないようなものをいくつも見ました。
説明をするためには、説明する対象製品の部品名称がわかっていないと読者には理解できません。
ソフトウェアでも、それぞれのメニューの名称がわからないと、設定させるために表示させる方法がわからない、ということになってしまうのです。
そして、取扱説明書には限界もあります。
情報公開と安全のための情報提供はできますが、それでも、本質的な安全性の確保は製品それ自体がもたらさなければなりません。取扱説明書で説明したからと言って責任を逃れることはできないのです。

仕様書から取扱説明書は自動ではできません。
また、文学を学んでも仕様書の読み方は学ぶことができません。

さらにそれだけではすまず、法律的な内容も商品に付いている取扱説明書には必要とされているのです。
取扱説明書というもののなかでもっとも簡単なことを言うと、取扱説明書はすぐになくなってしまってはダメですし、責任主体が明記されている必要があったりします。簡単に言うと、社名がきちんと見やすく書いてあるのは「義務」だったりする、ということですね。

「なんで?」と思うかもしれません。
だからこそ、タイトルの内容が生きてくるのです。取扱説明書は、製品の部品であり、法的文書でもあり、なおかつポリシー(があれば)を伝える唯一の手段でもあるのです。
パッケージに書いて、という手段はないわけではありませんが、取扱説明書以上に捨てられるのが早いことはまちがいないでしょう。
宣伝の文書とか、パッケージとかと一番異なるのは、ユーザーは取扱説明書をどの時点で手にするか、ということです。
宣伝は、買う前です。
読んで、買ってもらうための物です。
パッケージは店頭で見てもらって、買ってもらうための物です。

でも、取扱説明書は……
取扱説明書だけは買っていただいた後に正しい使い方をしてもらうための文書です。
どっちかというと部品に近いのです。
そして、実は、取扱説明書だけでは【本質的に危険な製品】の安全性をアップすることはできないのです。

こういった事項を研究する、PL研究学会というものができつつあります。
シンポジウムやセミナーも準備ができつつある。

こういうことに、次世代につながってこその取説屋だと思います。
がんばろうかな、とか思います。


【わかりやすいマニュアルの作り方】第206回 取扱説明書の立場は?その2

2013年9月11日 水曜日

前回、サイトで取扱説明書を公開するということを書きました。

前回書いた事を、今回ももう一度書かせていただきます。

本来、サイトに取扱説明書を公開するということは、ユーザーサポートのためというのが目的でした。しかし実際にはそれ以外に買う前に取扱説明書を見ておこう、買うための判断の材料としようといった方法でも使われるのです…というかこの方法は実際にうちの妻がやっていました。

■取扱説明書とユーザーサポート

前回も話が途中でズレてしまったのですが今回もちょっとズレさせてもらいます。

ユーザーサポートという言葉がありますが、このユーザーサポートというのは一体誰が行うのでしょうか?
自分はもともとソフトウェアのメーカーに勤務してというところから社会人としての経歴を始めたために、ユーザーサポートと言うとメーカーが行うものという頭がありました。
しかしちょっと考えてみると、「ユーザーサポートは必ずしもメーカーが行うものでは無いのだ」ということがわかってきました。

当たり前ですよね。駅前の個人商店が、大きなネットワークのお店に比べて好まれている理由としては「お店の人が親切だから」と言うのはごく当たり前に聞かれる話です。
「お店の人が親切」というのはどういうことか…言い換えると「販売後のサポートをお店の人が行ってくれる」ということに他なりません。
別にユーザーサポートはパソコンや電気製品に限りません。お菓子だって、かぼちゃだって肉だって…サポートしてくれるなら、それはとてもありがたいことだと僕は思います。

■メーカーさん「取扱説明書」を付けて売込みましょう!

とはいえ、自分はメーカーさんが好きなので、メーカーさんへのヒントとして、書かせて頂きます。ちょっと煽ります。

メーカーできっちりした取扱説明書を作って、それを製品と一緒にして、それを売る流通さんに売り込んでみましょうよ!

製品だけよりもしっかりとした取り扱い説明書が付いていれば、それは「製品」ではなく「商品」としての差別化をした上で販社に売り込むことができるようになります。

メーカーで製品だけでなく「製品の使い方」も一緒に売り込んでみましょうよ!

製品の使い方について最も詳しく知っているのはメーカーさんです。
想定している使用者について一番はっきりと分かっているのもメーカーさんです。

そして何より、製品に付けた取扱説明書は、どこの販社にも持っていくことができます。
実際、販社でそれぞれの製品の取扱説明書を作るのは、当然コストもですが作業工程や販売までのスケジュール調整を考えると、できれば販売会社での取扱説明書制作などやらないですむに越したことがないという事は明らかだと思います。

■取扱説明書をユーザーはどう使うか

そしてもう一つ。出来上がった取扱説明書は、ユーザーサポートだけに使うわけではないのです。

今回のブログの冒頭にも書きましたが、取扱説明書は紙ばかりではありません。
Webに公開することもできます。取扱説明書は買うための判断の材料としようといった方法でも使われています。

売り込みのための、広告のやり方についてはメーカーは説明することが得意ではありません。でも製品を使うための方法についての説明でしたら、きちんとしていてわかりやすいかどうかといったことは判断ができます。

製品の扱い方やメンテナンスの方法などは、理系や技術系の人間にとっては、それ自体が興味あるコンテンツなのです。
公開すれば、そのために読んでくれるようなものです。

また長くなってしまったので次回に続きます。

 


【わかりやすいマニュアルの作り方】第191回 では取扱説明書はどうしよう?

2013年1月30日 水曜日

今回はちょっと週末に出かけたりしていたため、ブログの更新が遅れています。申し訳ありません。
実のところを言うと、去年の年末などにあった様々なことについても書きたいのですが、当分はプライバシーの問題があるので書くことができません。まだあまり楽しい話しでもないのでそれでよいのかもしれません。

■取扱説明書を使えるようにする

前回は「使えない」取扱説明書について現状を説明しました。はっきり言うと泣けるレベルだというのが正直なところです。
では、どのようにすれば取扱説明書を作れるようになるでしょうか?
自分の営業としては、プロの取扱説明書の編集者に相談してみることと言いたいところなんですが、正直なところ、編集者を探し出すことは難しいと思います
ではその代わりに何をやらなければならないかというと、一番は、技術セクションだけではなく、営業部およびユーザーサポートの人たちに発売する前の取扱説明書を読んでみておいてもらうことです。
最初はものすごくひどい評価が戻ってくると思います。しかし、その中には必ず役に立つ意見が入っています。
前回の ブログには以下のような「ひどい」始まり方をした取扱説明書について書きました。

  • ライセンス条項
  • 無線LANについて(法規)
  • Bluetoothについて(法規)
  • DVD(レーザ)について(法規)

ココには以下のようなコメントが続いていました。

はっきり言うと、予算が許すならこんなものは別冊にすべきです。
そうできないなら、最後にでも回すべきです。

たぶん営業の人やユーザーサポートの人は同じようなことを言ってくれると思います。

■使えなければ意味がない

エンジニアの人は、「だって全部書かなければならないと内容なんだから仕方がないじゃないか」と反論したいと思います。
それ自体は真実です。しかし、法規については知っておいてほしいということであっても、肝心かなめのパソコン自体の操作の方法がわからなければ、そもそもその法規に関連する操作を行うことができないのです。
「とりあえず使えるようになる」
初めての取扱説明書は…まずこのことを目指すべきなのです。
パソコンであれば開始して終了するといった基本的な操作と、使ううえでのポリシーや使うときの基本的な注意が一番最初に来ている必要があります。

■コストについて

上で書いたようなことを実現しようとすると、例えば取扱説明書は何冊かの分冊にする必要が出てくることが考えられます
そうすると制作と印刷のコストが上昇します。「ただでさえコスト削減が必要なのにそんな悠長なことをやっていられるか」という反論が考えられます。
でもよく考えてください。
上昇する制作と印刷のコストはどれだけですか?
もしかしたら、ユーザーサポートが分かりにくい取扱説明書のせいで発生する人的コストの方が大きいのではありませんか?
もう一つ。
「あそこのパソコンは取扱説明書が全然わからない」といった評判が立って売り上げに悪い影響を与えるかもしれません。
これらの数字は、とても評価しにくいものです。目に見えないコストの一種だといってもよいかもしれません。
しかしそのコストは、上昇する制作と印刷のコストと比較した場合はどうでしょうか?
さらにこれらの制作物は、現在ではウエブの制作などにも流用することが可能な、デジタルデータなのです。
FAQといったような形で積み上げていくことも考えられます。

今回はパソコンを例にとって説明しましたが、取扱説明書が必要な製品は実に多岐にわたります。どんな製品であっても基本的には同じことが言えます。
良い取扱説明書を作る方が、結局はコストが安くなるのです。
ということで 、当初はプロによる取扱説明書制作をおすすめするという営業活動をしているのです。

まあ、とりあえず話をするだけでも、弊社「石井ライティング事務所」もついでによろしくお願いいたします、と。


【わかりやすいマニュアルの作り方】第190回 コレはひどいと思う取扱説明書

2013年1月22日 火曜日

年末に購入した最新PC、しかしその取扱説明書は相変わらず使う人のことを考えていないのでわかりにくいものでした。

■相変わらずのPC取扱説明書

年末に妻のPCを国内某社のものに買い換えました。
Windows8搭載、最新プロセッサに十分なメモリと性能的には問題がありません。
もっとも、こうしないと、買い換えまで長い期間「遅いPC」に付き合わされる羽目になるからですが…PCが遅いのはともかくとして、ウェブサイトが速いPCを基準に作成されるようになって、ついでに表示される広告の動画が表示しきれなくて停止してしまうということになってしまい、業務の検索まで停止させられてしまう…。
なにか、少し横道にそれているような気がしますが、それはそれとして。
その、国産の大手メーカーのPCの取扱説明書が、取説屋から見たらひどいものでした。
はっきりと「ひどい」と書いている以上、どのメーカーかを書くと、それこそ訴訟の対象とでもされるおそれがありますので、どこのメーカーのものかは書きませんが。
それは、レイアウトや、パッと見のデザインはとてもキレイです。
しかし残念ながら「使う」という観点からすると、それはヒドいものだと言わざるを得ないのです。

次節から、どう「ひどい」のか説明します。

■「使う」ことを考えてない?

いや。
これは自分が作る場合でも阻止しきれないことがあるので、そういうときは果てしなく申し訳なくあるのですが…
冒頭に以下のものが来ていると、まず8割の人は読む気力を失うと思います。

  • ライセンス条項
  • 無線LANについて(法規)
  • Bluetoothについて(法規)
  • DVD(レーザ)について(法規)

はっきり言うと、予算が許すならこんなものは別冊にすべきです。
そうできないなら、最後にでも回すべきです。
誰がこんなものを読みたいですか?
少なくとも、自分は仕事以外では飛ばします。
書かなければいけないのはわかっています。
でも、こういう順番になるということは、読者-使う人のことをほとんど考えていないと評価されてもしかたないでしょう。

そして、ハードウェア全体の説明→セットアップと取扱説明書の内容は続いていくわけです。
たしかに、書いてある手順の通りに全部いっぺんに行うならそれはそれでよいのかもしれませんが。

無線LANと有線LANとBluetoothと各種プリインストールソフトのソフトのセットアップとWindowsのアップデートとオフィスソフトのアクティベートにウイルス対策ソフトのセットアップ、プロバイダへの入会と続いています。
これを全部やろうとするとどう速く見積もっても1日がかりであることは間違いありません。

まぁ、それ自体は仕方がありません。それだけの機能が搭載されているのですから。
とはいえ、自分は「プロバイダへの入会」などはさわってもいませんが。

問題は、セットアップ以前に「今日は中断してPCを落とそう」と考えたときには取扱説明書の中程にある「Windowsをスタートする/終了する」という項目の後半の「パソコンの電源を切る(シャットダウンする)」を探し出さねばならないということです。
しかも、その説明の最初にはウォームスタートやスリープの原理の説明があり、「とにかく、いまは電源落としたいんだよ」というときには全然向いていません。

■無限ループ?

さて。
ここまでいろいろ書いてきましたが、実は最大のダメージを受けたのはこんなものではないのです。
それは、それでも我慢しながら「Windowsを終了する」という項目を読んでいったときでした。

そのまま引用します。

クイックモードでWindowsを終了するときはデスクトップ画面が表示されている状態で終了してください。

ちょっと待ってください。私はWindows8にさわるのはこれが初めてで、デスクトップにするにはどうすればよいかもまだわからないし、なによりもその終了の仕方がわからないので取扱説明書を開いているのですが。
結局、自分はそのPCをインターネット接続して、Web検索で「Windows終了」を検索して、メモを取って対応しました。
昔のPCを使っていた人間には「いきなり電源スイッチを切って落とす」というのが正解だとはかえってわかりませんでした。

これでは、取扱説明書はいけないのです。

次回にはどうすればよかったのかについての案を書こうと思います。

 


【わかりやすいマニュアルの作り方】第189回 テーマに沿ってものを買う

2012年11月27日 火曜日

今回は、ものを買うときの話をしようと思います。

いつもであれば穏やかに考えて、買うものを決めているのですが、今回はちょっと違っていました。
今回は、買うものを事前に決めていました。今回は、薬箱を買おうと考えていました。
間違って薬箱を踏んで壊してしまっていたのです。

■ポリシーに従ってものを買う

ところが、近くのスーパーの家庭用品売り場には、希望するようないままでと同じ、フタがとれないタイプの薬箱は売っていませんでした。

そのかわり、そこで扱っていた薬箱は、フタが本体に付いているタイプの箱ではなく、フタが取り外しできるタイプの箱でした。
フタは、箱本体から取りはずすことができます。便利、という点ではくっついているタイプの箱よりも便利かもしれません。しかし、外れてしまうと、フタがなくなったりするおそれもあり、必ずしも便利とは断言できません。

それは、自分の考えが「フタくがとれない方が薬箱は便利」というポリシーをもっていたからでした。ポリシーに従って薬箱を選ぶと、このタイプのは選択しないからでした。

■使いやすさの何割かはポリシーが決める

蓋が取れず、きちっと閉めることができ、密閉できる。

外側から内側を見ることができ、中身がわかる。

探していた薬箱はこんなものでした。ですが、見つかったのは、「外側から内側を見ることができ、中身がわかる」は満足しているが、蓋が外れることはありません。
見つかったのは、100%の使いやすさを満足するものではなく、イメージの方が使いやすいんじゃないかな、というようなものでした。

たしかに、自分のポリシーに従ったもののほうが使いやすいのは事実でした。

使いやすさの何割かは「ポリシー」で決まります。
その方が使いやすいのは事実です。
でも、その中から使いやすい形を選んでいくものなのです。

ポリシーと実際に使ってみた使い勝手の両方。

弊社では、どちらも重視して取扱説明書を作って行っています。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所


【わかりやすいマニュアルの作り方】第180回サイトに置く取扱説明書について

2012年8月21日 火曜日

お盆休みが終わりました。残念なことに、お盆の日だけ雨が降るといったことでキャンプなどにいけませんでした。

お盆休みが終わっても、暑さの方は、いっこうに緩みません。

どうなっているのでしょう、この天気は。

■高機能と使い方

さて、最近、実家からいままで使っていたのより少しだけ高機能なオーブンレンジをもってきました。

いままで使っていた電子レンジは、センサーも何もなく、「強」「弱」と時間設定だけでしたのと、ターンテーブル式だったため、少し大きなお弁当を温めようとすると、引っかかってうまく回らずに困っていた…というのは追加された機能とは関係ない話ですが、要はオーブン機能とそれに伴って温度センサが搭載された機種になったということです。

温度センサは余熱や発酵・一定温度での調理に使います。もちろん、以前使っていた電子レンジよりも多機能で、いろいろなことができるはずです。
しかし、実際にはそのままではよくわかりません。

実際のところ、基本の操作である「予熱してオープン加熱」の操作すらわからなかったのです。

幸い、多少古い機種とはいえ、本棚に取扱説明書のコピー(なぜでしょう?)が残っていたので、それを参照することで、なんとか操作はわかるようになったのですが…

■安全な使い方を知らせる

オーブン機能付き電子レンジは、正しい使い方をしないと、事故-火傷や火事-が起こる可能性があります。

オーブン機能は、直火を使う分、電子レンジ機能よりも危険であることは間違いありません。

特に、余熱してから使うオーブン機能は、庫内が熱くなった状態で食材を入れますから、間違ってオーブンパンにふれてしまうと火傷を和する可能性がありますし、庫内に水を掛けたりすると、水蒸気爆発が起こる可能性もあります。

だから、正しい使い方の説明と、やってはいけない使い方の説明を、その機能の使い方の近くに書いておかなければならないのです。

ざんねんながら、この取扱説明書はそういう構成になっておらず(最初に禁止事項が並んでいました)、また、それは少しわかりにくく、「余熱にはどれだけの時間がかかるのか?」ということを調べるためには、取扱説明書全体をひっくり返してみないとわかりませんでした(本来、余熱に関する操作の記述のすぐそばにあるべき記述です)。

しかしそれでも、取扱説明書がなければ、オーブン機能も、その他の機能も使えず、単に「ターンテーブルではない・回らない」電子レンジとしてしか使えなかっでしょう。

安全のためにも、機械をきちんとその機能を使うためにも。

取扱説明書は公開すべきです。1製品に付き1つのPDF程度であれば、現代のWebサーバーでは維持するのはさしたることではありません。

製品の寿命が続く限り、使い方がわからないことも同じ期間発生します。

そして、安全な使い方とセットで説明する機会を逃がすべきではありません。

ということで、製品の取扱説明書はWebに公開しておくようにしましょう。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所


【わかりやすいマニュアルの作り方】第179回プロの道具について

2012年8月7日 火曜日

暑いです。他のことが言えなくてすみません。

天気としては異常だと思います。35度とかそれ以上は、人が生活できる温度ではありません。

やむをえずクーラーを入れて生活。少なくとも仕事をするときにだけは止められません。

■プロの使う道具について

さて。

今回はプロフェッショナルが使う道具の取扱説明書について書こうと思います。

プロフェッショナルの使う道具は、アマチュアの使う道具と何処が違うのでしょうか。

設計をしていらっしゃる人には説明不要な話とは思いますが、あえて書かせて頂きますと「制限が少ない」ということに尽きます。

自分は以前はソフトの開発職をやっていたことがありますので、開発用ソフトウェアの話を例にとってみます。

最近では普通の人のパソコンに開発環境がインストールされることは減りました、というかインストールされていても使うことが減ったため、見ることが少なくなったというのが正しいのかもしれません。実際にはオフィス付属のマクロツールやJavaなどが入っていることが多いのですが。

それはさておき、開発ツールを使用してプログラムを作成すると、できるプログラムにはOS / ハードウェアによる以外の制限がなく、よく考えて作れば(しばしば希望していなくても)実行環境を破壊したり、外部記憶装置を壊したりすることもできました。

電動工具なんかはもっとはっきりしていますね。もちろん安全対策はしてありますが、それでも作業効率を考えて、ある程度のところまでとなっています。

手で使う道具、たとえば包丁は刃がむき出しです。「こどもがはじめて使うほうちょう」といった製品でないかぎり、尖った切っ先や鋭い刃がついています。

■安全意識について

プロの使う道具は以上のように危険を含むことがあり、それをコストとして容認しているものだということです。

昔は、プロの道具は素人には手に入りませんでした。

しかし、今では洗浄機程度ならともかくとして、ホールソーやチェーンソーなどでも簡単にホームセンターで手に入ります。ホームセンターでカートの上に載っけてレジに持って行けば高校生でも買えるでしょう。むしろ、大きな包丁の方が買いにくいかもしれませんが。

ましてや、インターネット通販を利用すれば、お客様がどんな人かを確認することは不可能です。

ですから、取扱説明書も変わらなければいけないのです。

昔は「常識を持ったプロ」が「プロの安全基準」で購入した製品を使用していました。

プロは毎日のように同じ作業を行いますし、怪我をしたりしてはオマンマの食い上げになります。だから、安全確認がしっかり身についています。

毎日工事現場に入る人で安全帽を忘れる人はほとんどいないでしょうが、1日体験で見学に来た小中学生は言わなければ安全帽をかぶりません。

そういうものなのです。

現在は、便利になりました。あらゆるものが簡単に手に入ります。

しかし、そのかわり、自分は素人としてその商品を手に入れることが多いことを忘れないようにしないといけません。

商品を提供する方としては、たとえそれがプロ向けの商品であったとしても、「もしかしたら、素人が使うかもしれない」ということを考えて取扱説明書をつけたり、パッケージングしたりしなければならないのです。

「これはプロ向けの商品です」と言うのは事故が起こったときには通用しません。「素人でも簡単に入手できた」と言われて終わりです。

「誰にでも売ることができて」販売のチャンスが増えたということは、同時に「素人が買うかもしれない」のでうかつな扱いをされて事故を起こすリスクも増えているのです。

面倒なことではありますが、まずきちっとした安全対策を書いた取扱説明書を付属した方がよいと思います。

弊社は、安全対策に力を掛ける皆様の力になりたいと考えています。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所


【わかりやすいマニュアルの作り方】第178回 実用品の取扱説明書

2012年7月31日 火曜日

暑いです。もう言ってもどうにもならないです。まして、我が社は東京で最も暑いと言われる「練馬」の気温観測地点からほど近いところにオフィスがあるため、暑さもひとしおです。

あまりら最高気温を「練馬」観測所が記録するので、江古田の武蔵構内から石神井の方に観測所自体が逃げるという事態となるみたいです。

■取扱説明書のことが記事に…

珍しく、取扱説明書のことがWebの記事に取り上げられていました。

時事ネタで、すぐ古くなってしまいますので、件名は書きませんが、「ああ、あれか」と推測して頂ければ結構です。

さて。メディアに取扱説明書が取り上げられるのは、残念なことにそのほぼ全てが「不備がある」場合です。

今回も必須のアクティベーションができないといったトラブルが相次ぎ、パニックを起こすとさらにあせった操作を行ってしまい、被害を拡大させてい行くという典型的な事例のように記事では読めました。

これで、取扱説明書がいけないと言われたとしたら制作した人がかわいそうだなと自分なんかは考えますが、たぶん、制作を指示した人は「通信ができない」「起動できない」「日本語が表示できない」といった極めて基本的なトラブルは想像の外だったのでしょう。その結果としてこういったトラブルに対して「プリインストールされたヘルプ」や「問い合わせ窓口」で対応する羽目になったのですから、サポート要員の人こそご苦労様です。

■取扱説明書にはオンラインで説明できない内容を書く

見出しに対策をすでに書いていますが、オンラインヘルプと同じ内容を書いてもお客様には見て頂けません。

電源関連、安全関連、オフラインでの操作、接続に関すること。

こういったことは、オンラインヘルプにおいてはいけません。理由は、これらのことでトラブルが発生した場合、どれもオンラインヘルプを見ることができないためです。

取扱説明書にはカッコいいとかクールといった見方があるのも知っています。自分の制作する取扱説明書ではできるだけ対応させて頂こうと考えています。

しかし、それでもなお。取扱説明書やパッケージは、本体注意書きは実用品なのです。

ヘルプは、ボリュームが大きくなっても検索をかけてその項目に一発で行くことができます。とても便利です。しかし、そのかわり、本体やパソコンが動いていないと見ることもできません。この関連でもっともよくあるのが「電池交換」に関するトラブルです。

「よし、電池換えるぞ」といって、古い電池を外したら、本体の電源が落ちてヘルプが見られなくなって電池交換の手順がわからなくなった…では困ります。取説屋としては、まったく仕事ができていないことになります。

適材適所という言葉があります。

紙のメディアは紙に適したところに、オンラインヘルプはオンラインがふさわしいところに、カッコいいかではなく、実用性を考えて選択すべきなのです。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所


【わかりやすいマニュアルの作り方】第174回記号について-続き

2012年6月26日 火曜日

6月に台風が来たかと思うと大雨と続きます。自然災害はあなどれません、皆様ご用心を…というのもあるのですが、今回のサーバーの大規模障害(おわかりの人にはわかるでしょうからあえて書きません)のようなことも、また会社をつぶすトラブルになりません。
他人やメカを信用しない、バックアップ体制を取っておくというのはできるだけ守りたいところです。

しかし、経験によると、トラブルはバックアップを取れないときにこそ起きるのですが…

■記号を変更するということ

今回は、前回に引き続いて記号の話です。まず、頭の中に「記号は標準化とその広報・教育が必要だ」ということを思い出しておいて頂けると理解が早くなります。

1ヶ月ほど前に「洗濯のタグ記号の変更」というニュースがあり、2回ほどそのネタを引っ張らせて頂いています。

記号は知っていないと役に立ちません。ですから、たぶん今回の変更でも家庭で洗濯を行う消費者にわかりやすいパンフレットや広報などの教育が大々的に行われるものと思います。実際、〇の中にPと書かれたマークを見て「駐車禁止?」という反応がテレビで紹介されていましたが、この状態では役に立たないでしょう。

報道によると、この変更の理由は「国外で服を売る際に、タグを複数付けなければならない」という製造側の理由であり、別に日本の消費者は困っていなかったわけですから、メーカーへの援助であると同時に、そのぶんは消費者には不便になるわけです。

ちなみに、先程のマークは「ドライクリーニングできます」というのが大意です。いままでであれば「ドライ」とカタカナで書かれていたマークが該当するそうですが…

現状では記号としての視認性が大幅に劣ります。

たぶん、この記号に全面的に移行するとしても、旧記号との相当の併用期間をおかないと、間違いが頻発することになるでしょう。

記号だからといってわかりやすいわけではないのです。

■取扱説明書の中の記号

さて。

取扱説明書にもたくさんの記号が使われています。

「禁止」であったり「注意」であったり…これらは、交通標識と同じマークを使用しているので、たとえ免許を持っていなくても、まぁ大概の人には通じるでしょう。この程度なら悪くありません。

しかし、「水濡れ禁止」とか「プラグ抜く」を記号として記載するのはどんなものでしょうか。

実際、これらのマークは業界ではフォントになるほど使われているのですが、こういった業界にいる私ですらこういった記号について教えられたことはありません。

しかも、「水濡れ禁止」とか「プラグ抜く」といった操作に関しては、その横に付いている本文を読まないかぎり、どんな場合にそういった操作を行わなければいけないのか、理解できないのです。

本文を読むのであれば、理解できない記号は無駄です。無い方が良い、むしろ害悪とすら言えるかもしれません。

他社の取扱説明書ではこのマークを使っているからうちも、ではわかりやすい取扱説明書はできません。実際に使う人のことを考えて、記号を使うべきかを判断していきたいと思います。

良い製品に良い取説を提供します


【わかりやすいマニュアルの作り方】第170回制作者の常識を疑え

2012年5月22日 火曜日

昨日は金環日蝕でした。グラスを手に入れた人はもちろんのこと、幸いにも雲が薄くかかったので裸眼でも観察できた方が多かったのではないでしょうか。

もっとも、自分の記憶しているはるか昔の太陽観察キットはもっと薄い色で、現在では透過性が高くて不適切な製品として市場から排除されるようなものだっただろうと思います。まぁ、もうひとつ昔ですと、ガラスにロウソクのすすをつけてそれを通して、ということになってしまうかもしれませんが。

■メーカーの常識

さて。

今回は「常識を疑え」ということです。

私はテクニカルライターとして、家電製品を最も得意としています。ですから自分の常識レベルとしては、一般ユーザーよりも、メーカーの方に近くなっている、と言えると思います。それに加えて趣味がアウトドアとオートバイと武道であったりするため「自分の手を動かして何かをする」ということに苦労を感じません。むしろ、楽しみに感じるといえるかもしれません。

さて、今回は何気なく人のブログを見ていて発見したことです。今回、その人は見つけた状態をすでに解消しているということですし、その人を非難するのが目的でもありませんので、そのブログを示すことはしませんが、内容としては以下のようなことでした。

うちのキッチンでは不便だからIHヒーターの上に1口のIHヒーターを置いて使っています。

待ってください。自分の常識ではIHヒーターの上にはIHの機器(炊飯器など)は置いてはいけないはずでした。
なぜかというと、上に置いた機器の電磁誘導によって下の機器のIH部分に影響を与える、言い換えると下の機器が壊れる可能性があるからです。感覚的には電子レンジに、金線のついたお皿を入れてはいけないっていうのと同じぐらいの常識でした。

だって、電磁誘導です。上に置いたインダクションの機器が動作したら、下にやはり同様に電磁誘導コイルがあるとしたら、影響を受けないはずがないではないですか。壊れない方が不思議です。

しかし、残念ながら、これはメーカーの常識でした。

■何も知らないユーザー

これを書いていたのは名の通った経済評論家のブログでした。タイトルにまでIH on IHと書いていたでので、こういうことをすると問題があるとは一切認識していないようでした。
しかし、公開されているメーカーの取扱説明書を見ると、たとえばパナソニックのIHコンロではイラスト入りで禁止事項として示していますし、上に置くタイプのコンロでも、IHヒーターの上に置かないようにと書かれています。理由は、やはり下の機器が故障するからです。

ブログにはコメントをつけることができますし、「イイネ」といったボタンを押す機能もあります。確認してみると、多数の「イイネ」が付き、コメントも「すばらしいアイデアだ」と褒めるものがほとんど…一部には「下のヒーターが使えないじゃないか」というのはありましたが、そもそも禁止事項であるということがブログの書き手はもちろんのこと、ほとんどのユーザーに伝わっていないということがわかって、ゾッとしました。

常識が異なっているのです。

  • テントを張るときにはアンカーで固定すること。
  • 薬品は医療従事者の指示に従って服用すること。
  • 200Vの電源はうかつにあつかって感電すると大けがになること。

こんなことは、メーカーサイドの自分たちからすると常識のように思えます。そして、うっかり説明を忘れてしまって、そういう常識を知らないお客様がセルフの店舗や通信販売、またはインターネット販売で購入して事故を起こしたり、クレームを付けてくるのです。

そのためにも、自衛手段として事前のきっちりした説明や取扱説明書が大切になる、と書きたいところなのですが…

前述の経済評論家のブログと、それにコメントを付けた人たちすべてが、メーカーがわかりやすくイラストまでつけて禁止事項として書いているのに読んでいないのです…

これ以上の対策としては本体にシールとか表示するしかないのですが、取扱説明書の制作者としてはつくづく困ったものだと思います。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所