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【わかりやすいマニュアルの作り方】第207回 「読み物」としての取扱説明書

2013年9月19日 木曜日

前回も、取扱説明書はユーザーサポートだけに使うものではないということを書きました。

また制作された取扱説明書も、公表するメディアは紙だけには限らないということとセットで理解されることです。

今ではインターネットを使ってPDFなどで公表することができます。取扱説明書の中には、当然、製品中で利用している技術についての単語などが含まれていますから、その中のキーワード検索するとその製品のテキストが検索される、ということにもなる可能性があります。もっとも、この辺はGoogleなどの検索サイトの検索仕様などによってきますので可能性という所に止まりますが。
製品がユーザーの目に留まる可能性が高くなるということなのです。

「取扱説明書なんか公開したところで、実際に困っている人以外は読みやしないよ。」
普通に聞くと、妥当に聞こえます。
ですが、これは正しくありません。
僕の知る範囲でも、最低限で2種類(プラス1)の人たちは取扱説明書を読み物として読みます。

今回はこの人たちについて書いてみます。

■技術系の読み物として

最初の人たちは理系の人たち-あるいは技術系の人たちです。わかりやすく言うと、パソコン雑誌や天文雑誌、科学雑誌技術雑誌などを読む人たちです。昔「子供の科学」とか「科学」(学研の「科学と学習」の…です)を喜んで読んでいた人たちといえばわかるでしょうか。

科学・技術系の雑誌は、必ずしも必要な情報を得るために購読されているとは限りません。技術系の人たちはこういう雑誌が面白くて読んでいるのです。
だったら広告のような「文化系向け」の書き方(その製品を使った時の、様々なメリットや、良い結果を列挙しているスタイル)ではなくて、その製品に関する技術的な情報を公表するだけでも楽しんで読んでくれる層がいるということなのです。
そして、この人たちは何かあったときに技術的な相談を受けることが多いオピニオンリーダーである可能性が高いです。

また、取扱説明書は、最終消費者であるところの一般ユーザー向けとはなっていますが、あくまでも技術書であるというくびきからは逃れることができません。
ですがそれだけに、「技術文書を目にすることに慣れている」理系・技術系の読者にとっては、かえって読みやすいといったこともあるかもしれません。

たとえば、組立家具の場合など、出来上がった結果の写真だけではなく、「組立の手順」を見ることができれば、技術的な知識があれば、その製品がどのような性格を持っているのかまで知ることができます。実に興味深い読み物ではないですか(もっとも手抜きをした仕様だと、手抜きもばれてしまうため、そういう仕様の製品を作っている場合には公表はおすすめできません)。

■手順書として

手順書としてというのは、必ずしも理系・技術系でなくても文章を丁寧に読む事を苦にしない人たちです。分かりやすく言うと、文書や様々なドキュメントを読むことを日常的に行っている人たちです。法律や契約、会計・経理、サービスなどの文書を扱っている人たちを指しています。

この人たちは技術系の人たちほどこういった文書を読み慣れているわけではありませんが、さまざまな手順について説明・解説した文書については同じぐらい慣れている人たちといってもいいでしょう。
ただし、「技術的理解力」と言う点では上の技術者、の人たちにはさすがに、一枚遅れをとります。それだけにこの人たちに「わかりやすい」と理解されないと、お客様には買ってもらえないと考えるべき人たちです。
もしも法律家の人に「わかりにくい」と思われたとしたら、実はそれは商品としての製品には、【欠陥】があるということになるのです。いわゆるPL法上の問題ということになります。
こちらは、読者が「製品」としての説明ではなく、「商品」としての説明を求めているということになります。これがわかりやすく使いやすければ、その商品は優れた商品ということになります。

これは広告とは違った意味で、その商品の良さを直接お客様に説明する良い機会ともなります。
そしてこの人たちはまた上の技術者の人たちとは別の意味でオピニオンリーダーである可能性が高いのです。商品購入の決定権がある、といえばわかるでしょうか。

この人たちに、アピールできるチャンスが増えるという事は非常に望ましいことではないでしょうか。

■おまけの人たち

さて実はそれ以外にも読んでくれる人たちがいます。
自分もそれに含まれるのではないかと思うのですが、【何でも読む】人たちという一団が。

  • 大量の本を読む。
  • 読むものがありさえすれば何でも読む。

こういう人たちが、取扱説明書が公開されていればとりあえず読んでみるといった行動をとる可能性があります。
この人たちは上の人たちのような決定権はないかもしれません。
でも、情報提供者・発信者としてはものすごく力のある人たちです。読むこと、掲示板などに書くことを全く苦にしない人達ですから。
自分や家族はたぶんこのへんにはいるでしょう。

こういう人たちのことも忘れてはいけないのです。

■プロのマニュアル屋として

最後にプロのマニュアル屋、テクニカルライターとして言わせてください。

きちっと書かれたしっかりとした取扱説明書は、読んでいて楽しいです

法律的に問題が発生するようなものではない、しっかりとした取扱説明書は読んでいて楽しいものなのです。

この辺を理解してもらうようにすること、これが、私たちの仕事の、やるべき事の一つなんでしょうと思っています。

がんばらなくちゃ、と。

 


【わかりやすいマニュアルの作り方】第191回 では取扱説明書はどうしよう?

2013年1月30日 水曜日

今回はちょっと週末に出かけたりしていたため、ブログの更新が遅れています。申し訳ありません。
実のところを言うと、去年の年末などにあった様々なことについても書きたいのですが、当分はプライバシーの問題があるので書くことができません。まだあまり楽しい話しでもないのでそれでよいのかもしれません。

■取扱説明書を使えるようにする

前回は「使えない」取扱説明書について現状を説明しました。はっきり言うと泣けるレベルだというのが正直なところです。
では、どのようにすれば取扱説明書を作れるようになるでしょうか?
自分の営業としては、プロの取扱説明書の編集者に相談してみることと言いたいところなんですが、正直なところ、編集者を探し出すことは難しいと思います
ではその代わりに何をやらなければならないかというと、一番は、技術セクションだけではなく、営業部およびユーザーサポートの人たちに発売する前の取扱説明書を読んでみておいてもらうことです。
最初はものすごくひどい評価が戻ってくると思います。しかし、その中には必ず役に立つ意見が入っています。
前回の ブログには以下のような「ひどい」始まり方をした取扱説明書について書きました。

  • ライセンス条項
  • 無線LANについて(法規)
  • Bluetoothについて(法規)
  • DVD(レーザ)について(法規)

ココには以下のようなコメントが続いていました。

はっきり言うと、予算が許すならこんなものは別冊にすべきです。
そうできないなら、最後にでも回すべきです。

たぶん営業の人やユーザーサポートの人は同じようなことを言ってくれると思います。

■使えなければ意味がない

エンジニアの人は、「だって全部書かなければならないと内容なんだから仕方がないじゃないか」と反論したいと思います。
それ自体は真実です。しかし、法規については知っておいてほしいということであっても、肝心かなめのパソコン自体の操作の方法がわからなければ、そもそもその法規に関連する操作を行うことができないのです。
「とりあえず使えるようになる」
初めての取扱説明書は…まずこのことを目指すべきなのです。
パソコンであれば開始して終了するといった基本的な操作と、使ううえでのポリシーや使うときの基本的な注意が一番最初に来ている必要があります。

■コストについて

上で書いたようなことを実現しようとすると、例えば取扱説明書は何冊かの分冊にする必要が出てくることが考えられます
そうすると制作と印刷のコストが上昇します。「ただでさえコスト削減が必要なのにそんな悠長なことをやっていられるか」という反論が考えられます。
でもよく考えてください。
上昇する制作と印刷のコストはどれだけですか?
もしかしたら、ユーザーサポートが分かりにくい取扱説明書のせいで発生する人的コストの方が大きいのではありませんか?
もう一つ。
「あそこのパソコンは取扱説明書が全然わからない」といった評判が立って売り上げに悪い影響を与えるかもしれません。
これらの数字は、とても評価しにくいものです。目に見えないコストの一種だといってもよいかもしれません。
しかしそのコストは、上昇する制作と印刷のコストと比較した場合はどうでしょうか?
さらにこれらの制作物は、現在ではウエブの制作などにも流用することが可能な、デジタルデータなのです。
FAQといったような形で積み上げていくことも考えられます。

今回はパソコンを例にとって説明しましたが、取扱説明書が必要な製品は実に多岐にわたります。どんな製品であっても基本的には同じことが言えます。
良い取扱説明書を作る方が、結局はコストが安くなるのです。
ということで 、当初はプロによる取扱説明書制作をおすすめするという営業活動をしているのです。

まあ、とりあえず話をするだけでも、弊社「石井ライティング事務所」もついでによろしくお願いいたします、と。


【わかりやすいマニュアルの作り方】第179回プロの道具について

2012年8月7日 火曜日

暑いです。他のことが言えなくてすみません。

天気としては異常だと思います。35度とかそれ以上は、人が生活できる温度ではありません。

やむをえずクーラーを入れて生活。少なくとも仕事をするときにだけは止められません。

■プロの使う道具について

さて。

今回はプロフェッショナルが使う道具の取扱説明書について書こうと思います。

プロフェッショナルの使う道具は、アマチュアの使う道具と何処が違うのでしょうか。

設計をしていらっしゃる人には説明不要な話とは思いますが、あえて書かせて頂きますと「制限が少ない」ということに尽きます。

自分は以前はソフトの開発職をやっていたことがありますので、開発用ソフトウェアの話を例にとってみます。

最近では普通の人のパソコンに開発環境がインストールされることは減りました、というかインストールされていても使うことが減ったため、見ることが少なくなったというのが正しいのかもしれません。実際にはオフィス付属のマクロツールやJavaなどが入っていることが多いのですが。

それはさておき、開発ツールを使用してプログラムを作成すると、できるプログラムにはOS / ハードウェアによる以外の制限がなく、よく考えて作れば(しばしば希望していなくても)実行環境を破壊したり、外部記憶装置を壊したりすることもできました。

電動工具なんかはもっとはっきりしていますね。もちろん安全対策はしてありますが、それでも作業効率を考えて、ある程度のところまでとなっています。

手で使う道具、たとえば包丁は刃がむき出しです。「こどもがはじめて使うほうちょう」といった製品でないかぎり、尖った切っ先や鋭い刃がついています。

■安全意識について

プロの使う道具は以上のように危険を含むことがあり、それをコストとして容認しているものだということです。

昔は、プロの道具は素人には手に入りませんでした。

しかし、今では洗浄機程度ならともかくとして、ホールソーやチェーンソーなどでも簡単にホームセンターで手に入ります。ホームセンターでカートの上に載っけてレジに持って行けば高校生でも買えるでしょう。むしろ、大きな包丁の方が買いにくいかもしれませんが。

ましてや、インターネット通販を利用すれば、お客様がどんな人かを確認することは不可能です。

ですから、取扱説明書も変わらなければいけないのです。

昔は「常識を持ったプロ」が「プロの安全基準」で購入した製品を使用していました。

プロは毎日のように同じ作業を行いますし、怪我をしたりしてはオマンマの食い上げになります。だから、安全確認がしっかり身についています。

毎日工事現場に入る人で安全帽を忘れる人はほとんどいないでしょうが、1日体験で見学に来た小中学生は言わなければ安全帽をかぶりません。

そういうものなのです。

現在は、便利になりました。あらゆるものが簡単に手に入ります。

しかし、そのかわり、自分は素人としてその商品を手に入れることが多いことを忘れないようにしないといけません。

商品を提供する方としては、たとえそれがプロ向けの商品であったとしても、「もしかしたら、素人が使うかもしれない」ということを考えて取扱説明書をつけたり、パッケージングしたりしなければならないのです。

「これはプロ向けの商品です」と言うのは事故が起こったときには通用しません。「素人でも簡単に入手できた」と言われて終わりです。

「誰にでも売ることができて」販売のチャンスが増えたということは、同時に「素人が買うかもしれない」のでうかつな扱いをされて事故を起こすリスクも増えているのです。

面倒なことではありますが、まずきちっとした安全対策を書いた取扱説明書を付属した方がよいと思います。

弊社は、安全対策に力を掛ける皆様の力になりたいと考えています。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所


【わかりやすいマニュアルの作り方】第170回制作者の常識を疑え

2012年5月22日 火曜日

昨日は金環日蝕でした。グラスを手に入れた人はもちろんのこと、幸いにも雲が薄くかかったので裸眼でも観察できた方が多かったのではないでしょうか。

もっとも、自分の記憶しているはるか昔の太陽観察キットはもっと薄い色で、現在では透過性が高くて不適切な製品として市場から排除されるようなものだっただろうと思います。まぁ、もうひとつ昔ですと、ガラスにロウソクのすすをつけてそれを通して、ということになってしまうかもしれませんが。

■メーカーの常識

さて。

今回は「常識を疑え」ということです。

私はテクニカルライターとして、家電製品を最も得意としています。ですから自分の常識レベルとしては、一般ユーザーよりも、メーカーの方に近くなっている、と言えると思います。それに加えて趣味がアウトドアとオートバイと武道であったりするため「自分の手を動かして何かをする」ということに苦労を感じません。むしろ、楽しみに感じるといえるかもしれません。

さて、今回は何気なく人のブログを見ていて発見したことです。今回、その人は見つけた状態をすでに解消しているということですし、その人を非難するのが目的でもありませんので、そのブログを示すことはしませんが、内容としては以下のようなことでした。

うちのキッチンでは不便だからIHヒーターの上に1口のIHヒーターを置いて使っています。

待ってください。自分の常識ではIHヒーターの上にはIHの機器(炊飯器など)は置いてはいけないはずでした。
なぜかというと、上に置いた機器の電磁誘導によって下の機器のIH部分に影響を与える、言い換えると下の機器が壊れる可能性があるからです。感覚的には電子レンジに、金線のついたお皿を入れてはいけないっていうのと同じぐらいの常識でした。

だって、電磁誘導です。上に置いたインダクションの機器が動作したら、下にやはり同様に電磁誘導コイルがあるとしたら、影響を受けないはずがないではないですか。壊れない方が不思議です。

しかし、残念ながら、これはメーカーの常識でした。

■何も知らないユーザー

これを書いていたのは名の通った経済評論家のブログでした。タイトルにまでIH on IHと書いていたでので、こういうことをすると問題があるとは一切認識していないようでした。
しかし、公開されているメーカーの取扱説明書を見ると、たとえばパナソニックのIHコンロではイラスト入りで禁止事項として示していますし、上に置くタイプのコンロでも、IHヒーターの上に置かないようにと書かれています。理由は、やはり下の機器が故障するからです。

ブログにはコメントをつけることができますし、「イイネ」といったボタンを押す機能もあります。確認してみると、多数の「イイネ」が付き、コメントも「すばらしいアイデアだ」と褒めるものがほとんど…一部には「下のヒーターが使えないじゃないか」というのはありましたが、そもそも禁止事項であるということがブログの書き手はもちろんのこと、ほとんどのユーザーに伝わっていないということがわかって、ゾッとしました。

常識が異なっているのです。

  • テントを張るときにはアンカーで固定すること。
  • 薬品は医療従事者の指示に従って服用すること。
  • 200Vの電源はうかつにあつかって感電すると大けがになること。

こんなことは、メーカーサイドの自分たちからすると常識のように思えます。そして、うっかり説明を忘れてしまって、そういう常識を知らないお客様がセルフの店舗や通信販売、またはインターネット販売で購入して事故を起こしたり、クレームを付けてくるのです。

そのためにも、自衛手段として事前のきっちりした説明や取扱説明書が大切になる、と書きたいところなのですが…

前述の経済評論家のブログと、それにコメントを付けた人たちすべてが、メーカーがわかりやすくイラストまでつけて禁止事項として書いているのに読んでいないのです…

これ以上の対策としては本体にシールとか表示するしかないのですが、取扱説明書の制作者としてはつくづく困ったものだと思います。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所


【わかりやすいマニュアルの作り方】第157回取扱説明書は公開しよう

2012年1月31日 火曜日

寒いですね。

いまが一番寒い時期ですから仕方ないですが、それにしても雪がなかなかとけません。
うちではバイクを使っているのですが、結構広い範囲の駐車場の雪が溶けずにそのまま凍り、出口がふさがれてしまいました。
雪がなくなって安全にバイクを出せるようになるまで、ほぼ一週間かかりました。

■取扱説明書はどんなときに使う?

今回は取扱説明書の公開についての話です。
ちなみに、メーカーさんで取扱説明書を制作している場合を想定しています。

さて、まず根本的な話から。
取扱説明書はどんな時に使いますか?
そうです。買った直後と、しばらく使っていて使い方がわからなくなったり、トラブルが起きたときですね。
購入直後は公開していても、あまり見ることはないでしょう。なぜなら紙で印刷された取扱説明書が手元にあるからです。
では、2年くらい使用した後に使い方がわからないことが出てきたらどうでしょうか。

たしかに、取扱説明書には「この取扱説明書はいつでも参照できるように大切に保管して下さい」と書いてあります。自分もそう書いています。
ですが、実際にはどうでしょうか。
「速攻で取扱説明書は捨ててしまう」という人はさすがに少数派だとしても、「外箱の中に入れっぱなしで押し入れのどこかにしまった」「どこにあるか忘れた」といった人がかなりの割合を占めるのではないでしょうか。
あ、これは決して自分の体験談ではありません。ただの一例です。念のため。

こうしたときに、Webで公開してあれば、少なくとも検索できるユーザーは見つけることができます。
また、トラブルの場合にしてもたとえば「停電によって時計がリセットされて12:00になってしまった」「電池の交換方法が分からない」程度のこと、リセットしたり再設定したりすればすむことであれば、ユーザーが自分で時計を再設定すればすみます。うまくいくと、ユーザーサポートにかかってくる電話がわずかではあるかもしれませんが、減るかもしれのせん。
もっとも、減ったとしても「かけるのを止めた」件数は調査する方法がないので、どれだけ減ったのかは定量化した調査は難しいと思いますが。

■公開した取扱説明書のもうひとつの使い道

実は、公開した取扱説明書の使い道はもうひとつあります。
「買う前に取扱説明書を見てみる」ということです。
少なくとも、自分と他の知り合いも何人かしています。
宣伝は基本的によいことしか書いてないということは前回書きました。それに対して、取扱説明書には製品に関するすべてのことが書いてあります。
メンテナンスや清掃の方法、消耗部品がある場合(フィルター、ボンベ、電池など)は交換方法と消耗部品の価格や消耗部品の寿命、こんなことは取扱説明書にしか書いてありません。
家電製品の場合、こういった情報は使い勝手に大いに影響します。しかし、広告からはこういった情報を得られるとは限りません。もちろん、店頭に行ってその商品を直接さわり、店員さんに聞けば教えてくれるでしょうが、そうすると、そこで何かを買わなければ悪いような気になってしまいます。
Webで調べようと思ったら、その製品をすでに買った人のユーザーレポートを探すしかなく、見つかる保証はありません。
ですから、自分は買う前に取扱説明書を参照できる方がありがたいです。

そして、もうひとつ。
これは自分がこういった仕事をしているからこその感じ方かもしれませんが、取扱説明書を公開しているメーカーの方が信頼がおけるような…気がします。
第一には、ユーザーサポートをやる気があるかどうかが透けて見えるということ。
もう一つは、取扱説明書には「良いことも悪いことも含めて」書いてありますから、そういうことも含めて公開しても使う人の利便性を優先する会社だと考えられることです。

以上の理由から、弊社としては取扱説明書はできだけWebにて公開(パスワードなど付けない)することをお奨めします。

もちろん、弊社では紙の取扱説明書と同時に公開できる形式のPDFも同時に提供させていただいております。と、宣伝をさせていただいたところで、今週はここまでに。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所


【わかりやすいマニュアルの作り方】第148回今年やった仕事

2011年10月24日 月曜日

先週は申し訳ありませんでした。さすがに体調を崩してしまってはどうしようもありません。

先週は二度も、都立産業技術研究センターに行ったりと、なかなか忙しい一週間でしたが、途中でちょっとダウンしてしまうのは予想外でした。

まあそんなこと以外に、普段の足に使っている原付二種をスクーターからギア付きに買い替えることにしました。妻が免許を取ったという理由も大きいのですが、なによりギア付きがないと練習一つもできず寂しいのです。

さて。

本題に入ります。

■今年やってきた仕事

メインはIT関連。通信・マルチメディアから、デバイス・ソフト関連まで、なんでもござれ。さらに、説明図だけの仕事、杖、浄水器と広い範囲でやっています。

わかるとは思いますが、取扱説明書って商品であれば何にでも必要なんです。
まぁ、魚だの肉だの野菜だのといった生鮮食料品や本当の最小限のネジのような部品は除きますが。

特に今、中国や東南アジアから雑貨や電気製品を輸入して販売することがあると思います。しかし、ほとんどの場合コストの関係からか、それらにはろくな取扱説明書がついていません。

そんな商品、単価も高くないし、お客様だって輸入品だってわかっているから大丈夫だよと思ってはいませんか?

とんでもない間違いです。

そんな商品、誰が信用してくれるというのでしょう。

■何だって商品自身が説明すべき

いま、ここを見ていらっしゃるのでしたら、ここのサイトを作っている人間にメールして、3~5万も出せば、ベトナム語や中国語のペラを日本語の法規に則った、わかりやすい、きちんと連絡先も書いてあるペラに作り替えることができる、ということはお分かりのことと思います(あー、ベトナム語の翻訳はつけてくださいさすがにそのままでは読めません)。

実際のところ先ほど説明したような各種の商品についても、「作れる」という確信はあって制作の依頼をお受けしていますが、一番最初にやることは常に、「その商品を使う人がどのようにして使うか」という取材であることは変わりありません。

その商品を、誰がどのようにして使う、それをイメージできるようにならないと、使い方の説明はうまくできません。それは説明を紙に落とし込んだ取扱説明書でも当然同じことになります。

その説明書、ぱっと見てイメージが伝わらない、よく読めば書いてあるけれども、では絶対にお客様は読んでくれません。そしてわからないままに、サポートへ電話をしてくるのです。当然ながら内容を理解していませんから、問い合わせの内容も割ととんちんかんになります。営業やサポートの手間が、大変食われるわけです。

お客様側から見ると「何これわかりにくい説明書」ということで、いきなりマイナス印象です。すぐに使えない、お客様にとっても不幸です。

弊社は、特にジャンルを限っていません。

取扱説明書というと、何となく電気製品や動力を使う製品のように感じますが、そんなことはありません。

どんなジャンルでも、操作するところ・動く物があるのであれば、弊社は喜んで取扱説明書を、お作りしますどうぞ、お気軽にご相談ください。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所


【わかりやすいマニュアルの作り方】第98回 取扱説明書って何のためにあるの?

2010年8月3日 火曜日

前回は、梁瀬先生のセミナーの内容をアップさせて頂きました。
今回は、取扱説明書の根本、「取扱説明書は何のためにあるか」というお話をしようと思います。

■取扱説明書は何のためにあるか

いきなり結論を書いてしまいますと、「取扱説明書の目的は、製品を正しく使ってもらうため」にあります。

そんなに難しそうなこととは思えませんね。

では、それがどうしてこんなに問題になるのかというと、「正しい」という部分にあります。

「正しい」というのは、メーカー側から見た、「正しい」と思う使い方です。これを伝える必要があるのです。

■正しく使わないと、メーカーもユーザーも不幸に

正しい使い方がわからないと、ユーザーは、間違った使い方をするか、あるいはもっと困ったことに「全く使えない」と言うことが起こります。

全く使えないと、当然ながらユーザーは起こってユーザーサポートに電話をしてきます。まず個のを減らす、これが「良いマニュアル」の目的の一つです。

これまでは、だいたいそう言ったことを書いてきました。しかし、問題はそれだけではありません。

製品を、正しく使わなかった場合、何事もなければよいのですが、不幸なことに事故につながる場合があります。

正しくない使い方も、勝手に使っていて問題がないぶんにはまぁかまいません。しかし、ひとたび事故が発生した場合は、ユーザーの「誤使用」ということになり、「取扱説明書に正しい使い方の記述がない」または「取扱説明書に、その使い方を禁止されていない」といった場合、とても困ったことになってしまうのです。具体的には。PL裁判を起こされて負けます。

では、禁止事項をずらずらと並べばよいかというと、これがやっぱり読みにくい。読みにくすぎると、「読めない」と断じられて「書いてないのと同じ」になってしまいます。

ではどうするかというと、今までも何度か書きましたが「正しい使い方を書く」ことが大前提です。そして「これ以外の使い方はしないでください。」と包括的に禁止してしまいます。

これ以外には使用方法をきちんと制限できる記述方法はありません。少なくとも筆者は他の方法を知りません。

正しい使い方をきちっとユーザーに伝え、かつ「それ以外はダメ」と伝える。

マニュアルに要請される役割は以前より増えているようです。

■追記

この98回は重複でした。98回が2つありました。お恥ずかしい…


【わかりやすいマニュアルの作り方】第97回マニュアル制作者に必要な能力

2010年7月21日 水曜日
先日、様々なメーカーさんとの交流会に行ってきました。
そこではまだ直接商売の話にはなりませんで、相変わらず「そういう仕事があるのか」という反応が、数多く見られました。
まあ、日本中探しても「マニュアル制作者」の養成をしているところはほとんどない(厳密には始めたところがあります)状況なので、仕方がないところではありますが。
「マニュアルなんて、日本語を書ければ誰にでも書けるだろう」と思っている方がまだ多いということですが、実務でやってみますと、そんなことでは全く制作できないという、壁にぶち当たるはずです。
マニュアル制作者に必要な能力を、リストアップしてみます。
この内容は以前にも書きましたが、その時代よりも、必要な能力がいくつか増えているのです。

■技術的理解力

まず真っ先に必要なのはこれです。
「この製品なんだかわかんないけど、とにかく書く。」これではよい取扱説明書は絶対にできません。
技術的な詳細についてまで知っている必要はありませんが、その技術が何なのかといったことまでは知っている必要があります。
■説明をする技術力
テキスト・イラスト・写真・図表・デザイン・構成など全てをひっくるめて指しています。
とにかく、わかりやすく説明する能力です。
個々の文章の書き方から、全体の構成の作り方まで、広い範囲を含んでいます。

■成果物を作る能力

印刷物・ヘルプ・htmlその他どんなメディアであれ、最終成果物を作る能力です。
印刷の基礎知識から、レイアウトデザイン-しかし、ここでは説明のためのデザインではなく、印刷物として必要な小口やノドといった知識を指しています。
また、技術的に「このテキストは絵の回りを、回り込ませることができるかどうか」といったことを知っている必要があります。
このあたりの技術を持たず、たとえば、Wordでテキストと図表だけ作り、製品写真をデジカメで撮影して、すべて印刷屋さんに持ち込めば、取扱説明書を作ることはできます。
しかしそういった方法で作られた物が、良い出来であるということは少ないでしょう。
全部自分でやる必要はありません、しかし、少なくとも、どのようにして作るかの指示が書けるだけの、技術は必要なのです。
■法律的な知識
「取扱説明書に何を書くか」「取扱説明書はどう書くべきか」
このあたりを規定する知識です。
実務としては、「会社名・連絡先は必ず掲載されていなければならない。」や「使い方の最初には、危険・警告・注意といった内容を記載する。」といったことを知っていなければなりません。
これも厳密な法律知識が必要なわけではありませんが、PL法や消費者保護法、および各業法が「どんな思想に基づいて何を目的として作られているか」ぐらいは知っている必要があります。
実は、この部分が、今までの説明と違うところです。今までは、こんなに法律的な知識が普通だと自分では思っていませんでした。
ただ、知らないでいますと、いろいろとヤバい(デザイナーや制作者個人が訴えられたという実例があるものですから)ので、最低限は自分の身を守るために必要だということです。
今週はこのあたりで…

【わかりやすいマニュアルの作り方】第96回何にでも説明はあった方がよい

2010年7月13日 火曜日

ここ何年かで産業構造が大きく変わっています。
個人商店が減り、大規模小売店や通信販売にどんどんシフトしています。
ここでそれを論じても、どうなるわけでもないのですが、生産者(必ずしもメーカーとは限りません、輸入をしてる方も含まれます)は、今までのように知識のある、店員さんに売ってもらうことができなくなりました。

しかし、それでも商品に説明が必要なことがあることは変わらず、説明の必要性は、まったく減っていません。
さすがに生鮮食料品に関しては、お店の人が調理の仕方などを説明してくれているようですが、電気製品などに関しては、店員さんの知識の低下は、かなりのものがあります。もちろん、プロの店員さんはいますが、比率としては明らかに低下しています。

■誰が商品の説明をする?

しかし、商品の説明をしなければなりません。
そのためにどうするか。方法は一つしかありません、商品そのものに語らせることです。
つまり、説明が不要な商品を作る。これが理想ですが、それができないのであれば、商品に説明書をつけます。

このとき、間違えてはならないのは、取扱説明書は商品の一部だということです。
一番よくあるのが「取扱説明書は商品の付属物である」という勘違いです。
「付属物だから、とりあえず付いていればいいや」という結果につながります。
これは大きな間違いです。
どんなに良い機能があっても、その機能の使い方が分からなければ、その機能はないのと変わりません。
むしろ、わかりにくいだけであればクレームの原因となるだけですから、むしろない方が良いとも言えます。

説明と本体は一体なのです。
昭和時代の製品のように単機能の製品であれば、必要ない場合もあるかもしれませんが、現代の製品では考えにくくなっています。
むしろ、ユーザーの方も知識が低下している(お米を洗剤で洗う消費者が居る時代です)ことを考えると、説明がきちんと付いていない商品はそれだけで欠陥であるということです。

■PL法でいう表示欠陥とは

PL法には「表示欠陥」という言葉があります。
文字通り、事故が発生したときに取扱説明書や表示やシールなどが不足していたり、間違っていたりして、危険を防止できない場合に言われることなのですが、実はこれはとても恐ろしいことなのです。
PL保険に入っていらっしゃるとしたら、是非とも約款を見直してください。そこには次のようなことが書いてあるはずです。

表示欠陥がある場合は、この保険は支払われない。

このことは、JTDNAのセミナーで知ったのですが、言い換えると、「取説に欠陥があったら、保険金は出ないよ」ということです。
脅すわけではないですが、これは相当にヤバいはなしです。
ちなみに、表示欠陥というのは、取扱説明書の中に、メーカーの連絡先が書いてなかったという場合なども含まれます。

今は、消費者保護ということで、こういった方向がどんどん強化されているようです。

厳しい時代です。


【わかりやすいマニュアルの作り方】第95回それでもポイントは愛

2010年7月6日 火曜日

前回の直接的な続きです。
突然、歌のタイトルのようなものが出てきて驚かれたかと思います。
しかし、まぎれもない前回の続きです。
ですが、前回とは全く趣が変わってしいるので驚かれるかもしれません。

■愛が無くては始まらない

さて。

前回の「取説屋」のお客様層について、もう少し掘り下げて考えました。
すると、お客様は「自分の仕事に誇りを持っているプロ」だという結論になりました。
つまり私はプロと仕事をしたかった。ということなのです。
プロは、自分の作ったもの責任と愛を持っています。
責任を持つのはプロとして当たり前、愛がないならプロとしてやるべきではありません。

つまり、私、取説屋は、こういう「プロとしての技能」を持っています。
一緒に、良い仕事をしたいです。

ただ、それだけのことです。

■説明が必要な時代

本当は、取扱説明書が不要な製品が理想だというのは私も知っています。

でも、昔とは販売方法も変わりました。
昔は、お店で、対面販売をしていました。
今は、対面販売よりも、電話インターネットファクスを使った通信販売の比率がはるかに大きくなっています。
昔ならば、店員さんは専門家でした。商品の説明もしてくれました、サポートもしてくれました。アフタサービスももちろんしてくれました。
ですが今は、そういった、説明などについてはほとんど望めなくなっています。
商品の情報については、製品を出すが、メーカー側、生産者側が提供しないといけなくなっています。
消費者保護法との関連もありますが、何より、通信販売の説明のもととなるものは商品の説明です。

生産している人や会社が商品の説明をつけなければ、通信販売の業者は一般的な説明をつけることになります。
あなたの商品が「こんな特色があるのでこう売りたい」と思っても、それを伝えない限り、伝わりません。
販売会社に口頭で説明しても、それはなくなります。
「説明をこうつけてほしい」そう思ったなら、紙かデータでつけるべきです。
そしてそれをお手伝いできるのが、私「取説屋」だと考えています。

「取説屋」は、取扱説明書ばかりを作っているとは限りません、リリースやニュース原稿のもとだって作れるのです。
自分の商品はこういうものだ、と説明したことがある方は、ぜひご相談ください。