「取説屋:石井ライティング事務所」の代表兼テクニカルライターのブログ 本家サイト http://torisetuya.com

【わかりやすいマニュアルの作り方】第168回名前を付けよう

先日まで寒いと思っていたのが急に暑く感じるようになりました。

季節の移り変わりは早いものです。もう、ゴールデンウイークも、あっという間に過ぎ去ってしまいました。

■名前を付ける

名前を付けるといっても、子供に名前を付けるとか、製品名を付けるといったことではありません。製品名や記号は製品を販売する以上当たり前のこと、として考えています。

もっとも弊社が取り扱った取扱説明書の中でも、いくつかの製品には製品名や、形式番号が付けられていないというものがありました。こうした製品ではたいへん原稿が書きにくく感じたものです。

以前にも書きましたが、作っている人と、使う人とでは、製品に対する意識が大幅に違います。使う人はそのその製品を初めて見て、なんだかわからないままに、自分の過去の経験から類推します。

その想像が当たっていればよいのですが、間違っていると全く訳のわからないものとなります。
例えば、放熱用の羽根が付いていたとします。その羽根を持ち運び用の取っ手と勘違いしたら、どうなるでしょう。持ち運んでいると、強度不足で折れる可能性があります。 また、放熱用として風のよく当たるところに羽根が置かれず、期待する放熱効果が得られない可能性があります。結果として製品がオーバーヒートを起こすかもしれません。

こうした場合に、取扱説明書のわかりやすいところに(通常は、「各部の名称」として取扱説明書の、最初のページ)に「放熱用ウイング」という名称が記載されていれば、こうしたことは防ぐことができるのです。

■ソフトウエアの画面名称

実は、製品がハードウェアである場合は、まだこういったことは起こりにくいといえます。最も問題が起こりやすいのは、設定画面がたくさんある、ソフトウエアの場合です。

ソフトウエアを制作している人は、自分がどこの設定を行っているのか熟知していますから、「設定」画面が6つあっても困りません。まあ名前がないのは困るだろうということで「設定1」「設定2」「設定3」といったアバウトな名称が付けられている場合すらあります。

こうした場合は、ソフトウエアの画面に従う、というのが取扱説明書を制作する場合の原則ではありますが、あえて独自の画面の名称を付けてといったやり方もあります。

「基本設定画面」(設定1)、「通信設定画面」(設定2)、「画面設定画面」(設定3)などのように機能に従って名称を付けてしまうのです。もしかすると、その名称は誤りだ、というクレームが付けくかもしれません。そのときはあきらめて修正しましょう。しかしそれだけはっきりしたクレームが付けくことは、名称がはっきりしている、つまり機能がはっきりしていることなので喜ぶべきことだとはいえます。逆に言うとまずそんなクレームが付けくことはありません。

また、プロでない人が書いたヘルプや説明には、しばしば「その画面で」とか「この画面で」といった説明を見ることがあります。
その直前の操作によってその画面に遷移した結果の画面が表示されている場合が多いのですが、ユーザーは、必ずしも継続的に操作を行っているとは、限らないということがあります。
もしかしたら、操作の途中で御手洗いに立ったり、コーヒーを飲みに行ったり、電話に出たりするかもしれません。

そうすると、「この画面って何だったっけ?」ということになってしまうかもしれないのです。
これを防ぐには、「この画面」と書かずに、「通信設定の2枚目の画面で」と書けば良いだけです。

細かいようですが、きちっと名前を付けて、その名前で呼ぶことは、お客様の操作ミスを防ぐうえで、大変に重要な役割を持ちます。

今回はこんなところで…

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【わかりやすいマニュアルの作り方】第167回編集長の話

前回に続いて、編集の話を書きます。
前回は趣味で作成した取扱説明書の話ですが、今回はもうちょっとまじめです。

■編集の話

編集の話です。
編集とは何をするかというと、おおざっぱに言うと「素の文章をきちっと章・節・項に分け、長すぎる文章は短くしたり、句読点をきちんとしたりする。目立たせたい言葉には括弧を付ける。」といった、「文章の後処理」と「DTP(昔で言う製版)のための指定&前処理」といった作業を指します。

実は、この作業をきちんとやっていないでデザインやDTPに回すと…どうやっても、わかりにくい「文書」ができてしまいます。それは、たとえて言えば塗装の前の面取りや仕上げを行わなかった場合に相当します。どうなるのかは言うまでもないでしょう。
ですが、どうしてこういったことを行わないのかというと、理由は簡単、誰も教えてくれないからです。
国語の教科書も(あえて言うと数学も)、実は言うと上のような手順の作業を必ず行っています。
しかし、教えるのは小説や古典文学(もしくは方程式の解法)の内容であり、その「見やすい本の作り方」については、ほとんどというか、自分の学校で学んだ範囲では教えてくれることはありませんでした。
習ったことがないことですから、できるわけがありません。
まぁ一部の才能のある人は、最初からきれいに書くことができますがこれは例外としましょう。
また、趣味で編集の技能を口伝で伝えられている人がいますが、これもまた例外と言うことで。

■編集とは何をする?

さて、では今回の本題です。「編集とは何をする?」という内容の一番上についてはすでに書きました。
「読者に読みやすくすること」が目標です。
この場合、読者というのは製品を買ってくれた人を指します。

しかし、往々にして最初の原稿を書く人も、その原稿をチェックする人も、誰も読者のことをよく知らないということがあります。
たとえば、書いた人も見る人も現場の人間でしたら、「こんなバカのことをするヤツは世の中にいないからとばしたってだいじょうぶだぜい」と思ってしまって、大きく書かなければいけない注意書きを小さく書いただけでよしとしてしまうところがないとはいいきれません。
なお、製品を一般に発売する際には、このことは特に気を付ける必要があります。
むしろ素人に近いスタッフを呼び集めて「こういうときどうする?」と実地に使わせて観察し、かつ聞いてみて、「危なそうだ」と思ったことはその操作や作業の方法のそばに書いておくべきでしょう。

話がそれました。
いろいろな機械で、手順が最初は一つで、順に機能によって分岐していく場合、それぞれのセクションの先頭に「この機能は●●を目的としています」と記載していないと、よくある「機能が羅列してあるが、その機能自体が何が何だか分からない」というよくある悪い取扱説明書になってしまいます。

■責任を取る編集長は大切

こういったことを防止するのは、たしかに何割かはライター(書き手)の役割です。しかし、取扱説明書というのはあくまでも書籍の一種です。そして、書籍である以上、全体の構成などについては「編集長」が責任を負わなければいけないのです。

会社によってこの編集長という名称は異なることがあります。しかし、だれか一人、最終責任を負う人は絶対に必要です。どんな名称であれ、内容二内容に責任を負う人がいなければ決して良い物はできないのです。

編集長は、当然ながら編集や執筆といった制作業務に精通している必要があります。
実務としての業務を知らなくては、スケジュールの調整などができないからです。
たとえば、三日間スケジュールを短くして欲しいと営業から言われた場合、それを受け入れて良い物かどうかを品質の面から判断するのは編集長の仕事だからです。

最初から、品質を保ったまま納期を短くすることが無理であれば、無理だと正直に言って、「品質を妥協するか、納期をなんとかしてもらうか」の二択をありのままに告げて経営者に判断してもらわねばなりません。(これを判断するのは営業の仕事ではありません)

品質は価値です。ですから、高い品質には高いコストがかかります。
同様に、納期もまた価値です。ですから、短い納期にはやはり高いコストがかかるのです。

コストを下げて、高い品質と短い納期。

そんな夢のようなことは残念ながらありえません。
そして、物事には責任者が必要です。

今回は、ちょっときついことを書いてしまいました。

来週は申し訳ありませんが、お休みさせていただきます。

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【わかりやすいマニュアルの作り方】第164回取扱説明書と必勝本・解説本

今日は本当に大変な春の嵐のようです。今日お出かけになる人は、十分気をつけてください。

でも春の嵐と共に、ようやく長かった冬も終わり、やっと暖かくなってくるようです。

つくしも芽を出し、桜の花が咲き、春の気分になってきました。新しい期が始まったところで、楽しく気合を入れて頑張っていきましょう。

さて。本題です。

■必勝本・解説本と取扱説明書

今回は、取扱説明書と必勝本・解説本の違いと棲み分けについてです。

実は私は、ゲームの必勝本にも携わったことがあります。

必勝本というのは、ある意味、取扱説明書の上位バージョン、といった風情のものがあります。

自分のやっていたのはシミュレーションでしたので、コマンドやデータの詳細な説明と、戦略、戦術の説明とリプレイといったところでしようか。

リプレイに関しては別としても、コマンドやデータの詳細な説明に関しては、付属の取扱説明書では版型やページ数の関係から思いっきり「詰めた」書き方をしなければならなかったところを、十分な余裕を持って書き直すことができたので良かったと思います。

また、ソフトウエアのリファレンス系の解説本の場合は、むしろ付属してる取扱説明書が充分なコマンドリファレンスが掲載されていないなどといったことがあったりして、むしろそちらの方が取扱説明書として使われる場合も多いようです。

もちろん、ゲームの必勝本などでRPGやアドベンチャーのストーリーの解説をしていたり、キャラクターのファンブックのようなものは取扱説明書とはまったく異なったものになりますが、それでも一部の必勝本・解説本は取扱説明書と近い構成をしているものがあります。

■違いはどこに?

それでは、必勝本・解説本と取扱説明書の違いはどこにあるのでしょうか。

簡単に言ってしまうと、身も蓋もない話で、一般に取扱説明書の方が制限が大きいということに他なりません。

まず、予算。さらに商品と同梱するためにパッケージに入る版型、さらに取扱説明書である以上、必ず書かなければならない記述など、取扱説明書の方が制限が大きいのです。

たとえば、ソフトウェアの取扱説明書の場合、丁寧にインストールと(あるならば)インターネットでのアップデートの方法、さらにソフトウェアの起動方法などを書きます。

必勝本・解説本では、こういった記述は必要ないということで、、ほとんどの場合はカットされ、その替わりににソフトウェアの内容・機能についての説明が多くなります。

さらに、危険に対する説明や警告も取扱説明書である以上、当然入ってきます。省略することはできません。

また、必勝本では商品を使った「応用操作」、たとえば調理器具であれば、炊飯機能を使った煮物作りなどを掲載できます。

そういう意味では、より商品に詳しく・深く切り込んでいくのが必勝本・解説本であり、最初に使う、初めての使うお客様が誰でも一応使えるようにするのが取扱説明書の役割と言えるかもしれません。

商品が素晴らしいと、より商品に詳しく・深く切り込んでいきたくなります。

でも、そのあたりの棲み分けも必要だと思っています。

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【わかりやすいマニュアルの作り方】2012年新年特別版

あけましておめでとうございます。

遅めではありますが、新年のご挨拶を申し上げます。

さて、新年第一回は特別編です。今回は取説の作り方ではなく、弊社石井ライティング事務所は、今年どのようにしようかと考えてる内容について書こうと思います。

技術的な内容については、今回はお休みさせてもらいます。申し訳ありません。

■今年の目標

「取説屋」というものがあり、それは「自分の会社でも普通に依頼できる」ようなものである、たとえていえば街のデザイン事務所と同じようなものであることをできるだけ多くの方に理解して頂く。

また、「取扱説明書は技術者や営業担当の片手間では作れない、専門技能を必要とする専門職である」ことを同時に理解していただく。これは特別なことではなく、上記のデザイン事務所のことを考えてみればお分かりいただけるだろう。確かに、Illustratorを使って、ポスターを作ることはだれでもできる。だが、それが商品になるレベルかということである。ちなみに自分はデザイナーではないのでポスターを作ることはできない。

もうひとつ、製品のボックスに書く内容や広告の内容と取扱説明書はコンセプトが異なり、したがってやはり広告制作を得意としているデザイン会社にも、「良い取扱説明書」を制作するのは難しいと言うことである。もっともこれは裏を返せば自分には「良い広告のキャッチ」は作れないということでもありますが。

■目標その2

取扱説明書は製品に必要なものであるという理解を広める。

これについては方法を考え中である。これが理解されないと、取説屋という仕事は広がらない。

現状では、PL法が要求するかたちになっているが、こういった強制力によるものではなく、「取扱説明書は製品に必要なものである」というコンセンサスが広まって欲しい。

自分はいま、メーカーからバイヤーに売り込みをかけるときに「商品自体に語らしめるツール」として必要なのではないかと考えている。宣伝用のパンフとはコンセプトが異なる文章なので、商品の内容(場合によっては「危険」などの表記で欠点も含む)をしっかりと伝えることができる。

また、取扱説明書をメーカーではなく販売会社に制作してもらうことは可能ではあるが、そのかわりに製品の販売ルートが、その販売会社に限られてしまうという問題が発生する。

だから自分はメーカーに自分の製品について自社で取扱説明書を付けるというコンセンサスが広まって欲しい、そして自分のところがそのお手伝いできると良いなと考えているのである。

なんだか、堅い内容になってしまったが、新年だし、たまにはこういう話もありであろうか。

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【わかりやすいマニュアルの作り方】第153回 お金の話

寒くなってきましたね。本当に冬だと感じます。

もっとも、もう師走も1/3を過ぎているのですから、本当はそんなにのんびりしたことは言っていられないのですが……

■コスト-お金-手間の話

今回は、お金の話です。
実は、うちはページ単価で12000円くらいから頂いております。
正直もうちょっとと頂きたい案件もありますが、この時期無理は申し上げられません。
さて。
なんでそんなに高いんだと思われた方に、説明させていただきます。

ものすごく簡単に書くと、ほとんどが人件費-手間賃と言い換えても良いです-です。

仕様書をそのまま書き下して終わりであれば、それこそ社内の技術者に「書き直して」で終わるかもしれません。

しかし私達の持っているのは単なるリライトの技術ではありません。

ちょっと思いつく限り列挙してみましょう。

  • 商品を実際にテストして「お客様の使いやすい全体の構成」を作成します。
  • 図のイメージを考えて商品の写真を撮り、それを元に線画を書き起こします。
  • 安全上の注意や警告の内容を考えます。
  • 安全上の注意や警告を操作説明の文を読むのに邪魔にならないように、なおかつ誤解が生じるおそれがないように明瞭に記載します。
  • 製造または販売の責任者を明記します。
  • 特に購入後最初に行わなければならないこと(開梱、初期設定、設置、導入など)があれば別立てにして手順を説明します。
  • 操作方法を手順に従って記載します。
  • テキストの内容にあうように線画を調整し、必要な矢印やマークなどを描き加えます。
  • テキストや画像の材料が揃ったら、それらを本・パンフレットとして読めるようにきちっとかたちにDTP(組版)を行います。
  • 全体の読み直しと校正を行います。

これだけのことを行います。もちろん、場合によって行わないものもあるかもしれませんが。

■開発者の誇り

そして、これらの作業はほぼすべて自動化が難しいものです。自分たちはできるだけの自動化を心がけてはいますが、それでも難しいと言わなければなりません。
なぜならば、この手順は「開発」の手順の一種だからです。

取扱説明書は製品の部品の一つです。したがって、取扱説明書を制作するということは、製品の一部を制作することに他ならないわけであり、それはつまり「開発」の手順になります。

商品開発はどんなものであれ、単純作業ではありません。

弊社では「どんな商品」を「誰」が「どのように」使うのかをきちっと聞き取り調査を行った上で、それに見合うような取扱説明書を制作します。

それが弊社のポリシーでもある「良い商品によい取扱説明書を提供します」ということだと考えています。

そして、それゆえに、人件費-コストがかかってしまうことになるのです。

これについては申し訳ないと思います。ですが、弊社では「なんでも良いから安くやってくれ」ではなく「良い取扱説明書が欲しい」とおっしゃるお客様と仕事をしたいと考えております。

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【わかりやすいマニュアルの作り方】第142回体育会系の説明

先週末までの猛烈な暑さが過ぎ、やっとひと息がつけるようになりましたね。

今回は、ちょっと変わった方面から書いてみようと思います。

■私のするとおりにしなさい

実は今、妻が某教習所に通っている。それも、二輪免許を取るためである。

二輪免許に関しては、評判が結構良いところを選んでいった。指導が確実で、内容は確かである。それについては間違いない。

しかし。
指導方法については、少なくとも話を聞くかぎりでは、どうも「体育会系」にかたよっているように思える。

もちろん、自動二輪はかなりの部分が、肉体的な運動なので「体育会系」の指導方法は間違っているとは言い切れない。
実際、自分が大型自動振りをとったときの、いにしえの都民自動車教習所の練習やら、いまでもやっているだろう砧や府中の二輪交通安全教室での練習は、理屈よりも圧倒的に「身体にたたきこむ」方式だったし、それは今でもとても役に立っていて感謝している。

とはいえ。

問題はちょっと違う。大型自動二輪の一発試験のための練習や免許を持っている人の技能向上のための訓練ではなく、免許を取るため、言い換えれば「乗れるようになるため」の練習だからだ。

ちなみに「私の言うとおりにしなさい」という指導方法は、だいたい以下のような感じになる。

オートバイのメインスタンドをかける方法についての指導です。

  1. 指導員がやってみせる。「このようにやります。」
  2. 「では、やってみてください。」
  3. できない。
  4. 怒る。「なぜ言ったとおりにしないのですか。」

運動神経の良い、あるいは勘と目の良い人、あるいは基本的に、パワーがあり力ずくであげられる人ならこれでも問題ないでしょうが、妻はさんざん苦労したあげく、うまくできず帰ってきました。

■説明をするということ

簡単に書きましたが、上記の方法は説明ではありません。

手本を見せてその通りにできるのはごく一部の人だけです。まず、普通の人は「まっすぐ立つ」ことからしてできていない、とこれは余談。

帰ってきて、落ち込んでいるので、うちのアドレスV100をひっぱり出して練習をすることにしてみました。取得する免許は、小型限定なのでこれで重量の点では問題はない。

とりあえず、やってみてもらう。だが、全くスタンドが上がる様子がない。

教習所での説明の内容を聞いてみる。

「車体をまっすぐに立てて、車体を引き上げる」

たしかに、間違ってはいない。

だが、これでわかる人は何度も言うが運動神経が良い人だけだ。まっすぐ立つという感覚の訓練を受けたことがないと、普通の人にはそんな感覚はない。

仕方がないので、メインスタンドの立て方を指導する。

  1. 「メインスタンドが地面に着くまで出したら、ちょっと左右に揺すってメインスタンドの、両足が着地しているところを探して」
    両足がついたところで車体が垂直に立ったことになる。
  2. 「スタンドの上に体重をかけて、てこの力でぐっと上がる感じをつかんで」
    力で引っ張り上げても相当のパワーがないと車体は上がらない。
  3. 「上がったら車体を後ろにちょっと引っ張って」これで、すとんとメインスタンドが立つ。

教習所では何度やってもできなかったという妻が、数回手伝いながらやると感覚を覚えたようでできるようになった。

言うまでもなくこういったことは技術である。技術である以上、やり方は説明が可能だ。

自分は、警視庁指導センターや府中の自動車試験場などでかなりの時間を練習に費やしたから(つまり下手だったから)説明の仕方を覚えたのだが、勘が良く、見ただけですぐにコツを飲み込める人間にとっては、こんな説明は面倒くさいだけであろう。

この説明方法を指して「体育会系の説明」と言います。

理解の良い人に教えるときには最も効率的な方法ではあるのですが、向き不向きがありすぎます。

弊社では、だれにでも分かる説明の方法を採用しております。

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【わかりやすいマニュアルの作り方】第132回 注意書きの作り方

今回は注意書きの作り方について説明します。

取扱説明書は、一般にその製品の、正しい使い方と「使ってはいけない使い方」について説明します。

ここまで説明してきた内容ではほとんどが「正しい使い方」の書き方について説明してきました。
しかし、正しく扱っていても刃の部分に手を当てると危険なものや。熱くなるものは数多く存在します。
これらの製品は、決して欠陥製品ではありません。正しくは使えば怪我をしない。
間違った方法で取り扱えば怪我をする。当然のことです。

それだけに、やってはいけないことについても、はっきりと書くことが、必要になります。

■普段とは逆のことを考える

以前にテストの項目で書きましたが、禁止事項(危険なこと)および注意書きについては、自分の経験と想像力がものをいいます。

正しい手順を確認するのにも、技術的な素養が必要です。

しかし、「正しくないこと」を明記しこれをやってはいけないと書くためには、その正しくないことを想像する能力が、必要になってくるのです。

そのためにはどのように考えたらよいかを紹介します。

■やってはいけないことを調べる

一番簡単なのは、やってはいけないことを調べることです。

既存の取扱説明書の注意書きや、過去に書いたものを流用するといったことが代表的でしょう。

しかし残念なことに、この方法は今まで自分のやったことのないジャンルのものには使えないという問題があります。

次に、メーカーの人や販売の人に、今まで何か問題がなかったか、を聞いてみる、という方法があります。

これは、優れた方法です。
メーカーでは、かなりの部分のトラブルについて把握しています、したがって問題点についてもわかっている場合が多いです。しかし残念ながら、メーカーとしてはそれはまさしくやってほしくないことのため、情報が止まってしまう場合があります。
特に実際に事故になった事件などについては、メーカー担当者さんの口が重くなる傾向が高いです。まあこれはやむを得ないことですね。

では、「やってはいけないこと」というのはどのようにしたら、調べられるでしょうか。

簡単なのは「商品名」+「事故」や「トラブル」としてウェブで検索することです。
ただ、これはあまり効率がよい方法ではありません。有名な事件があれば何度も重複して出てきますし、小さくてすんだ事故については検索にかからない場合があるからです。

実は、筆者のお薦めとしては、公的機関が公開している「事故情報データベース」にあたってみることです。
NITEはもちろん、各種の団体が数多くの事故情報を公開しています。
これらのデータベースで、「商品名」で検索をかければ、かなりの数の事故情報が出てきます。

ここで表示された事故情報に目を通すと、事故の原因に幾つか共通するものが見えてきます。
たとえば、熱くなる機器であれば、不注意で触ってしまった、子どもが触った、ちょっとした時に席を外したら出火したといった具合に、同じような傾向が見えてきます。

ここまでがやってはいけないことに関する、事前調査です。

これを基に、実際の製品と合わせて注意書きを作成していくといった手順になります。

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【わかりやすいマニュアルの作り方】第131回 納品の話

今回は納品の話です。
というか、日本企業であればどこでも、納品…納期が最大優先であることは疑いのないところではありますが。

■納品とチェック

取扱説明書は、製品そのものに比較した場合、修正が容易という特徴があります。

しかし逆に言うと取説屋としては「いつまでたっても納品したはずの仕事がおわらない」といった事態になることになります。
このあたりはメーカーさんと事前打ち合わせがどこまでできているか、という点につきるのですが、修正作業自体が大きくなくても「忙しいところに予想外に」入ってくることがあるので、問題になることがあります。

取扱説明書は、制作方法は販促物などと同じ、印刷や版下製作です。
しかし、広告よりも製品に対する責任の度合いが強いため「かならず修正しなければならない」という強い動機が働くのです。

メーカーとしても、取扱説明書は製品の一部としてきちっとチェックする必要があります。
厳密には取扱説明書まですべて整っていてはじめて「製品」といえるからです。

納品する取説屋としては、もちろん大切な商品ですが、同様に内容をチェックするメーカーしても、製品の品質にかかわるのと同じ重さが要求されます。

■お客様にとっての取扱説明書

さて、メーカーと取説屋にとっては、こういうポジションの取扱説明書ですが、それを最終的に使うお客様の目からみたらどうなるでしょうか。

お客様にとっては、製品を扱うためのただひとつの手引き書です。

もちろん、その商品を対面販売して、サポートもできているならばまだ他の手段があるということになりますが、現在は対面販売よりも通信販売の比率が増え、お客様としては、頼れるものは文書だけといった状況になっています。

ですから、「お客様がきちんと操作できるか」は、制作者とメーカーのチェックにかかっていると言っても過言ではないのです。

そして、取扱説明書は納品の時に決定してしまいます。
だからこそ、チェックと納品がもっとも大切になってくるのです。

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【わかりやすいマニュアルの作り方】第130回 型を作る

GWも終わってしまいました。
世間の状態が大変に変わり、これから社会も変わっていくのかなぁなどと考えさせられました。

さて。
今回は「型」について話をします。型といってわかりにくければ、テンプレートでも雛形でも良いです。
取扱説明書を仕事として行うには「型」が必要だということです。

■「型」とはなにか?

何か、道楽でやっている武術関連ではこんな話を何度もしたような気がしますが、基本的には同じことです。
学習・訓練や業務を効率的に行うのにはどうしたらよいかを考えると、パターンを作ってそれを、身体に染み込むまで繰り返し、その後にその型から離れる…というのが、自分の考える理想です。

とはいえ、型を離れるなんていうのは夢のまた夢で、そこまでたどり着くにははるかに遠いのですが。

■仕事内容を整理する

取扱説明書を書くときに先頭から順に書いていくと、よほど小さくて一度にに全体を把握できるモノを除くと、大概は混乱してしまいます。

「これを書いてなかった」

「これはここじゃなくて、後ろに入れるべきだった」

「ここを後ろに移動したら、別の機能について説明がなしで突然出てくることになる」

だいたい、こんなことが続発して、混乱するはずです。

どうしてこうなるのか。理由を言うのは簡単です。

「全体として把握していないから」です。

とはいえ、商品全体を把握するということは、並大抵のことでないことは事実ですが。

ただ、、いままで同様の商品を販売してきたのであれば、どのように売るか、すなわちどのように説明するかについては、蓄積があるはずです。

機械の説明をするのであれば、機械の「各部の名称」が分かっていないと、説明はできません。
「メインスイッチをオンにする」と書いてあっても、肝心のメインスイッチの場所がどこだかわからなければ操作はできません。
ということであれば、「各部の名称」は、取扱説明書の最初になければいけないことがわかります。

こういった細かいことの積み重ねが、「型」になっていくのです。

■「型」の例

では実際に、型の例を見てみましょう。

以下は十年以上前のゲームソフトの冒頭部分の例です。

  1. 挨拶:お買い上げいただきありがとうございます…
  2. タイトル:製品名と形式番号
  3. 対応機種:ソフトウェアが動作する機種、および動作環境
  4. ゲームの目的:このゲームの目的についての説明
  5. インストール:ソフトウェアのインストール方法の説明
  6. 起動と終了:ソフトウェアの起動と終了の方法
  7. ゲームの流れ:ゲーム内の各フェイズ・モードの説明
  8. 画面の見方:各モードの画面の見方

かなり大雑把ですが、こんな感じで書いていました。ゲームの目的などは前後しても良いのですが、対応機種→インストール→起動と終了といった流れは変更できません。

これを変更してしまうと、実際にゲームをプレイする際に差し障りが発生したりするからです。

ちなみに、終了が起動とセットになっているのは、「実際にこのようにした方が便利だ」ということから来ています。実際、ゲームを終了するのは、ゲームをクリアしたときだけではないから、というよりそういうことのほうがよほど希だといえるでしょう。

大概の場合は、途中でセーブしたり、あるいはちょっとプレイしてみて、そのまま中断するといった方が主となります。特に後者の場合、終わり方がわからないと「途中で中断して大丈夫なのか」と不安になります。一部のゲーム(実名を上げるとWizardryのことです!)ではリセットしたりして中断すると、そのままゲーム中に取り残されてしまうというものもあった時代ですから。

型はこうしたものを一つずつ積み上げていって「こういうときはこうしたほうがよい」というものです。
たとえば、弊社での「説明図は線画がよい」ということも型のひとつです。

まぁもっとも「我が流派には型なし」というところもありますから、これもひとつのやり方に過ぎないのかも知れません。

これを読んでいる皆様が自分独自のノウハウを積み上げていけることを望みます。

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【わかりやすいマニュアルの作り方】第125回 テストについて

雪が降りましたね。季節外れでびっくりです。

さて。

今回はテストについて書きます。
え、なんで取説屋なのにテストと思った人、甘いです。
実は取説屋の仕事は書くことは三分の一くらいです。
より大きいのは、事前の取材と実物に対する調査と試験です。
取材については別の回に譲るとして、対象となる商品の試験について書きます。

■テストとは

当然ながら試験は対象となる商品によって方法は全く異なりますが、基本的にはクライアントさんから受け取った資料、場合によって仕様書であったり、パンフレットであったり、旧モデルのマニュアルであったりします。
というのは建前で、何も資料がない場合もあったりするのですが…
それはともあれ、まずはそういった資料を基に、試験を開始します。
試験はほとんどの場合、セットアップや使用前の準備から始まります。

■大切なのは「使う準備」

ユーザーはこういった操作を普通一度ーあるいはシーズンに一度しか行いません。でも、ここでうまくいかないと、その商品を全く使えないといったことになります。
普段の使用は、たいがいはルーチンワークです。そういった作業は間違いにくく、簡単になっています。まぁ正直なところ、毎日使うものがめんどくさかったら買い換えてしまうと思いますが…

ということで、使用の準備やセットアップ、ソフトウェアの場合はインストールを繰り返すことになるわけす。
ちなみに、ソフトウェアの場合は結構難しいことが多く、dllやフレームワーク、あるいはDirectXといった環境をインストールするので、完全なアンインストールができず、クリーンインストールのやりなおしなどはとても手間がかかることもしばしばです。

■テストに悪ずれを持ち込まない

さて、私たち取説屋がこういった試験をするときは、常に心がけていることがあります。
それは、「悪ずれをしない」ということです。
私たちは、実際のところを言えば、様々な商品を扱ってきたプロです。また、技術者でもあります。簡単な結線や工具を使って組み立てたり、ソフトにしても簡単なマクロを組むぐらいのことはできるわけです。
でも、それだけに「慣れ」は大敵です。
「ああ、ここのすきまはちょっとくさびで持ち上げといて」…ダメです。
一般のお客様はそんなことをしません。
組み立てている途中にバランスが崩れたらそこで作業が止まるのが普通です。
「悪ずれ」していると、これを見落としてしまいます。
「ああ大丈夫」で書いてしまうと、バランスをとって組み立てるのが恐ろしく難しいのを平気で書いてしまうことになりかねません。
きちんとしようと思えば、組立開始前に「ささえを用意する」か「2人で組み立てる」といった記載が必要なのに、これを落としてしまうのです。
これでは「わかりやすい取扱説明書」は作れません。

■ギャップを埋めるもの

「一般ユーザーの視点で」というのは言うのは簡単です。しかし、自分の技術者としての技術が上がっていくにつれ、かえって一般ユーザーの立場から離れてしまうのです。
では、そのギャップを埋めるのは何かというと2つあります。
1つめは、先ほどから書いているように、悪ずれをしない「注意力」です。見落としがなければ、とばしたりすることは減ります。
しかし、じつは一番大切なのはもうひとつです。
それは「想像力」です。

■想像力は無限に

椅子を考えたとき、普通は「座るためのもの」と考えます。
私たちのような取扱説明書を仕事にしている人は、次に「この上に立って踏み台として使う」ということを考えます。
でも、知人のマニュアル制作者はもう一つ先のことを見ていました。
「子供が飛び降りて遊ぶかもしれない」
これは正直すごいと思いました。彼は「子供がそういう行動をするのを常日頃見ていたから」と謙遜していましたが。
「お客様の立場で考える」
言うのは簡単です。しかし、どこでも飛び跳ねる元気な子供や、力が弱くなって目も悪くなったお年寄りのことも全部考えて、必要な範囲はどこまでかを決めて反映するということには、たいへんな「想像力」を必要とします。
ぞういった想像力は今の自分でも足りないと思っています。
人生は修行と言いますが、こういった想像力はまだまだ鍛える余地があります。これからもがんばっていこうと思います。

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