「取説屋:石井ライティング事務所」の代表兼テクニカルライターのブログ 本家サイト http://torisetuya.com

【わかりやすいマニュアルの作り方】第157回取扱説明書は公開しよう

寒いですね。

いまが一番寒い時期ですから仕方ないですが、それにしても雪がなかなかとけません。
うちではバイクを使っているのですが、結構広い範囲の駐車場の雪が溶けずにそのまま凍り、出口がふさがれてしまいました。
雪がなくなって安全にバイクを出せるようになるまで、ほぼ一週間かかりました。

■取扱説明書はどんなときに使う?

今回は取扱説明書の公開についての話です。
ちなみに、メーカーさんで取扱説明書を制作している場合を想定しています。

さて、まず根本的な話から。
取扱説明書はどんな時に使いますか?
そうです。買った直後と、しばらく使っていて使い方がわからなくなったり、トラブルが起きたときですね。
購入直後は公開していても、あまり見ることはないでしょう。なぜなら紙で印刷された取扱説明書が手元にあるからです。
では、2年くらい使用した後に使い方がわからないことが出てきたらどうでしょうか。

たしかに、取扱説明書には「この取扱説明書はいつでも参照できるように大切に保管して下さい」と書いてあります。自分もそう書いています。
ですが、実際にはどうでしょうか。
「速攻で取扱説明書は捨ててしまう」という人はさすがに少数派だとしても、「外箱の中に入れっぱなしで押し入れのどこかにしまった」「どこにあるか忘れた」といった人がかなりの割合を占めるのではないでしょうか。
あ、これは決して自分の体験談ではありません。ただの一例です。念のため。

こうしたときに、Webで公開してあれば、少なくとも検索できるユーザーは見つけることができます。
また、トラブルの場合にしてもたとえば「停電によって時計がリセットされて12:00になってしまった」「電池の交換方法が分からない」程度のこと、リセットしたり再設定したりすればすむことであれば、ユーザーが自分で時計を再設定すればすみます。うまくいくと、ユーザーサポートにかかってくる電話がわずかではあるかもしれませんが、減るかもしれのせん。
もっとも、減ったとしても「かけるのを止めた」件数は調査する方法がないので、どれだけ減ったのかは定量化した調査は難しいと思いますが。

■公開した取扱説明書のもうひとつの使い道

実は、公開した取扱説明書の使い道はもうひとつあります。
「買う前に取扱説明書を見てみる」ということです。
少なくとも、自分と他の知り合いも何人かしています。
宣伝は基本的によいことしか書いてないということは前回書きました。それに対して、取扱説明書には製品に関するすべてのことが書いてあります。
メンテナンスや清掃の方法、消耗部品がある場合(フィルター、ボンベ、電池など)は交換方法と消耗部品の価格や消耗部品の寿命、こんなことは取扱説明書にしか書いてありません。
家電製品の場合、こういった情報は使い勝手に大いに影響します。しかし、広告からはこういった情報を得られるとは限りません。もちろん、店頭に行ってその商品を直接さわり、店員さんに聞けば教えてくれるでしょうが、そうすると、そこで何かを買わなければ悪いような気になってしまいます。
Webで調べようと思ったら、その製品をすでに買った人のユーザーレポートを探すしかなく、見つかる保証はありません。
ですから、自分は買う前に取扱説明書を参照できる方がありがたいです。

そして、もうひとつ。
これは自分がこういった仕事をしているからこその感じ方かもしれませんが、取扱説明書を公開しているメーカーの方が信頼がおけるような…気がします。
第一には、ユーザーサポートをやる気があるかどうかが透けて見えるということ。
もう一つは、取扱説明書には「良いことも悪いことも含めて」書いてありますから、そういうことも含めて公開しても使う人の利便性を優先する会社だと考えられることです。

以上の理由から、弊社としては取扱説明書はできだけWebにて公開(パスワードなど付けない)することをお奨めします。

もちろん、弊社では紙の取扱説明書と同時に公開できる形式のPDFも同時に提供させていただいております。と、宣伝をさせていただいたところで、今週はここまでに。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所


【わかりやすいマニュアルの作り方】2012年新年特別版

あけましておめでとうございます。

遅めではありますが、新年のご挨拶を申し上げます。

さて、新年第一回は特別編です。今回は取説の作り方ではなく、弊社石井ライティング事務所は、今年どのようにしようかと考えてる内容について書こうと思います。

技術的な内容については、今回はお休みさせてもらいます。申し訳ありません。

■今年の目標

「取説屋」というものがあり、それは「自分の会社でも普通に依頼できる」ようなものである、たとえていえば街のデザイン事務所と同じようなものであることをできるだけ多くの方に理解して頂く。

また、「取扱説明書は技術者や営業担当の片手間では作れない、専門技能を必要とする専門職である」ことを同時に理解していただく。これは特別なことではなく、上記のデザイン事務所のことを考えてみればお分かりいただけるだろう。確かに、Illustratorを使って、ポスターを作ることはだれでもできる。だが、それが商品になるレベルかということである。ちなみに自分はデザイナーではないのでポスターを作ることはできない。

もうひとつ、製品のボックスに書く内容や広告の内容と取扱説明書はコンセプトが異なり、したがってやはり広告制作を得意としているデザイン会社にも、「良い取扱説明書」を制作するのは難しいと言うことである。もっともこれは裏を返せば自分には「良い広告のキャッチ」は作れないということでもありますが。

■目標その2

取扱説明書は製品に必要なものであるという理解を広める。

これについては方法を考え中である。これが理解されないと、取説屋という仕事は広がらない。

現状では、PL法が要求するかたちになっているが、こういった強制力によるものではなく、「取扱説明書は製品に必要なものである」というコンセンサスが広まって欲しい。

自分はいま、メーカーからバイヤーに売り込みをかけるときに「商品自体に語らしめるツール」として必要なのではないかと考えている。宣伝用のパンフとはコンセプトが異なる文章なので、商品の内容(場合によっては「危険」などの表記で欠点も含む)をしっかりと伝えることができる。

また、取扱説明書をメーカーではなく販売会社に制作してもらうことは可能ではあるが、そのかわりに製品の販売ルートが、その販売会社に限られてしまうという問題が発生する。

だから自分はメーカーに自分の製品について自社で取扱説明書を付けるというコンセンサスが広まって欲しい、そして自分のところがそのお手伝いできると良いなと考えているのである。

なんだか、堅い内容になってしまったが、新年だし、たまにはこういう話もありであろうか。

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【わかりやすいマニュアルの作り方】第152回よくあるレイアウトについて続き

今回は、前回の続きです。

ここではよくある例を挙げてみます。見出しは以下のように設定されているとします。
■大見出し ●中見出し ◆小見出し

前回提示したよくある例は以下の通りです。
■設定
●初期設定
小見出しは略
●機能設定
◆画面設定
◆サウンド設定
◆操作設定
◆通信設定
◆セキュリティ設定

それに対して、弊社の修正提案の内容は以下の通りです。
■初期設定
小見出しは略
■機能設定
●機能設定の入り方
●画面設定
●サウンド設定
●操作設定
●通信設定
●セキュリティ設定

実際のところ、上のような例はとても数多く見られます。
では上の例ではどこが問題なのかについて説明していきます。

最初から答えを書いてしまうと、機能設定以下のレベルの見出しが、レベルが低すぎるということです。

レベルが低過ぎるとどのようなことになるかというと、デザインにもよりますが、読者はレベル3以下の、見出しのブロックをそれぞれ「別のもの」とは認識しません。
そういう意図とで作っているなら良いのですが、「設定」という製品の仕様に縛られて取扱説明書の内容をそのまま作ったのであれば、読者は混乱することになります。

もちろん、この例はわざわざそのように書いたのですが、同じ「設定」の項目であるからといって「セキュリティ」と「サウンド」を同時に、まぁせいぜいのところ続けて設定したいと考える人がどれだけいるでしょうか。
自分はそういった人はごく少数だと考えています。
「セキュリティ」の設定をするときは、「セキュリティ」だけを。
「サウンド」の設定をするときは「サウンド」だけを。
それぞれ設定すると思うのです。

「サウンド」の設定と一緒に「画面」を設定するかもしれないし、「セキュリティ」の設定と「通信」の設定は一緒に行うことはよくあります。しかし、それでもページ単位で独立していた方が探しやすくなることは間違いありません。必要であればそれぞれの参照ページをつけておけばすみます。弊社ではむしろそういういった作り方を推奨しています。

■取扱説明書制作は理念

取扱説明書は製品に付属している製品を、分かりやすく使うための部品です。
ページを切り詰めることよりも、お客様が機能を使おうと思ったときに使いやすくする。製品を構成する部品にコストダウンを優先して安いものを使って、製品が使いにくくなる。それでは製品全体の評価を落としてしまいます。
それと同じことです。

わかりやすく使えなければ、取扱説明書は存在の価値がありません。
機械、製品の仕様に従って取扱説明書を作るのは間違いではありませんが、より良い作り方があります。
お客様の使い方を考えて、それにしたがって取扱説明書を制作するべきです。
弊社では、このような理念に基づいて取扱説明書を制作しております。
良い製品を提供して、お客様に喜んで頂きたいメーカー・販売会社の皆様、弊社の取扱説明書を試してみませんか?

弊社では、福祉用品・生活雑貨・電子デバイス・機械設備等々、さまざまなジャンルの取扱説明書を承っております。

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【わかりやすいマニュアルの作り方】第151回 文字組とわかりやすさ

前回でこの【わかりやすいマニュアルの作り方】も150回を超えていたのですね。
自分ながら驚きです。
一応はとついてしまうものの、仕事のネタだけでこんな回数を書けるとは思っても見ませんでした。

最初は2008年6月30日ですから、4年とちょっと続いているということになります。
最近は、ここの内容を使って取扱説明書制作-または既存の取扱説明書の修正のコンサルティング゛も手がけようかと思っています。

■文字組とわかりやすさ

さて、本文です。

今回はとりあえず、現在社内などで取説を作ることになっていて、既存のものがわかりにくいという人向けです。
はい、タイトルの通り文字組を見直して見てください。そして、その取説のすべてのページに同じスタイルを適用してください。それだけで(と言ってもページ数によっては結構な作業量です)その取説はぐっと見やすくなるはずです。

■本文と見出し

「本文は文字が大きいほど見やすくて分かりやすい」ははっきり申し上げまして嘘です。
文字は意味のある一固まりずつにまとまって、それを論理だって並べてなければ意味はとれません
まずは、機械的に意味のあるブロックごとに見出しが付いていることを確認してください。
次に、ワープロであれば、以下のルールに従ってそれぞれの見出しと本文を書式設定してください。

  • 大見出し/レベル1見出し
    太いゴシック14pt以上
    見出しの前に改ページする(できれば自動で)
    この内容は「インストールする」「設定する」「使い始める」といった大きな区切りです。これより意味的に小さい内容の見出しが「大見出し」になっていたら、その見出しはレベルを「中見出し / レベル2見出し」に落としてしまってください。
  • 中見出し / レベル2見出し
    太いゴシック12pt以上
    段落罫線などで、ページをいっぱいに区切る。
    視覚的に、ブロックが認識できるように設定する。
  • 小見出し / レベル3見出し
    本文と同じフォント。太字、インデントなし。
    このレベルの見出しはなくても良い。
    むしろ小見出しが多いということは、見出しレベルの設計を、中見出しにならないか見直ししてみるとよい。
  • 本文
    2~4文字分のインデントをつけてください。
    このインデントの目的は「見出しと本文が違う」ということを明らかにするためです。 多くの素人さんが作成した取扱説明書はここができていない場合がしばしば見られます。
    見出しと本文があまり違わず、気軽にa. b. 1. 2. …などと付けてしまった結果、大幅に検索性が落ちるというか、自分がどこにいるのかすらわからなくなるという事態に陥ってしまうのです。

上の方で小見出しの項目で見出しレベルの再設計を考えた方が良いと書きました。

■よくあるレイアウトについて

ここではよくある例を挙げてみます。見出しは以下のように設定されているとします。
■大見出し ●中見出し ◆小見出し

以下に、よくある例を示します。
■設定
●初期設定
小見出しは略
●機能設定
◆画面設定
◆サウンド設定
◆操作設定
◆通信設定
◆セキュリティ設定

こんな感じで書かれているものをよく見ます。
実際、これの何処に問題があるのか、と思われるでしょう。

デザインにもよりますが、レベル3である小見出しは、論理的ブロック内の区分けです。つまり、画面と操作と通信とセキュリティの設定は「すべて同じ論理的ブロックに含まれる」ということです。
これだけの膨大な内容を一つのブロックとして理解するのは、普通の人には困難なことです。人が一つのブロックとして理解できるのは1つかせいぜい2つの見開きまでです。8ページも10ページも同じ中見出しの文章があったら、それは見出しの設計がおかしいです。
たとえ、仕様書の設計がそうなっていても、従わなければならない理由はありません。見出しの設計から見直すべきです。

上記の例は、こう設計すべきところです。
■初期設定
■機能設定
●機能設定の入り方
●画面設定
●サウンド設定
●操作設定
●通信設定
●セキュリティ設定

こういった見出しの見直しをして、きちんとフォーマットしてやると、テキストの修正をしなくても見違えるほど見やすくなる場合があります。
この項目は長くなってしまったので次回に続きます。

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【わかりやすいマニュアルの作り方】第149回 安全装置について

木枯らしの第一号も吹いていったん寒くなったかと思いましたが、また夏日が来るとかいう気候でどうなっているのでしょうね。恐らくは、太陽活動の変化などによるもので、人間の活動とはあまり関係のない気候の変化だと思いますが、急激な変動は暮らしにくくなって大変です。

さて今回は、少し個人的な事柄から入ろうと思います。…実は、普段使っている二輪車を買い換えました。
今まではスズキのアドレスV100、これが同じくスズキのEN125に。

シート下のヘルメット入れが無くなったとか、スクーターからギア付きのオートバイになったとかいろいろ編かはあるのですが、それ自体ではなく周辺の話からです。

■盗難防止器具の外し忘れ

実は今までアドレスでは、ハンドルロックとカバーしかしていなかったのです。

カバーをめくってみると、20000キロ近く走ったボロいスクーターが出てくるのでは、盗む方もやる気が起きなかっただろうとは思いますが、本来はもっときちんと防犯対策をすべきところではありました。まあ幸い、盗まれたりいたずらされることはありませんでした。

しかし、今度は新車(正確に言うと二千キロ走っていない新古車)なのと、ショップでつける盗難保険に「チェーンなどの施錠をすること」ということが条件として記載されていたため、チェーンロックを付けることにしました。

そして、付けた翌日、早速やってしまいました。

チェーンを外し忘れて、そのままエンジンを掛けてスタート…

幸い、チェーンの長さがあったのと、移動した距離が1メートルほどだったので、ガツンとぶつかる前に停止することができました。はっきり言って僥倖以外の何者でもありません。

ちなみに、多数販売されているオートバイ用のブレーキロックやミナU字ロックにはどれもこれも「外し忘れに注意」という注意書きがついている。これは、逆に言うと外し忘れが如何に多いか、ということを証明しているようなものです。

これを個人責任というのはどうか、とちょっと思います。ある意味、商品に問題があるといえるかもしれません。

■組み合わせによるセイフティ

話はチェーンロックに戻ります。保険の関係上からも、問題があるといっても、ロックをしないわけにはいかないわけです。

ところで、普段使っているバイクのカバーには、チェーンロックを通すための穴が開いています。この穴はチェーンロックを外側から通し、カバーを外せないようにするためのものと認識していました。

しかし、視点を変えてみると、これはチェーンロックをしたまま走り出すことを防止するために最も優れた方法であるとも言えます。

これはどういうことかというと、
チェーンロックを外さない限りカバーを取ることができず、どうやってもまたがって走り出すことはありえない。
ということになるわけです。

こういうシステム構成をフールプルーフといいます。一時置いておくだけで、チェーンロックだけをかけてカバーをしないという状態は、自分の場合ではまず考えられないため、大変安全度の高い方法といえます。

最後に取扱説明書の話に戻しますが、弊社ではシステムとして「こういう方法であれば安全」という方法と、「こういう設定もできるが危険がある」という場合は、手順としては安全な方法のみを記載し、それ以外の方法は追加的な一覧などのところに記載して、あえてその方法を選択しなければ、危険な方法にならないように記載しています。

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【わかりやすいマニュアルの作り方】第140回 脅迫マーケティング

先週は伊豆大島に休暇に行ってきて、お休みを取らせて頂きました。
おかげさまで、しっかりリフレッシュできて、ガンガン仕事に打ち込めます。

さて。今週は取扱説明書の売り方についてです。

■取扱説明書を売り込む方法

取扱説明書を売り込むには、いくつかの方法があります。
1つには、良いものを地道にやる。
2つめがタイトルの「脅迫マーケティング」である。

実際のところ、1つめの方法ではなかなか仕事は大きくならない。
だが、いちど一緒に仕事をさせていただければ、末永くおつきあいが可能である。なんといっても、普通は強いということである。

さて。
今回は2つめの「脅迫マーケティング」の話をしようと思う。
悪いネーミングというか、ネーミングに悪意が見えると思うが、自分はこの方法が嫌いなのである。
勘の良い人ならば何を言っているのかわかると思うが、取説の売り込みに法律で脅す方法である。
「当社の制作したものでないと、裁判で負けます」とはっきりは言わないものの、そういう意味の言葉で営業をかけるやりかたである。

■脅迫的マーケティングは好かん!

一部の健康食品の売り方にも似ている手法がある。
これを摂取して「良くなった気がする」なら良いではないかという意見もあるかもしれないが、そもそも最初から恐怖心を煽らない方がもっとよいのではないか。

自分は、「使いやすくなるとお客にメリットがある」「サポートのコストが下がる」と言って営業をしている。あ、他に「取説のような文書を作るのが大嫌いなエンジニアを、嫌いな仕事から解放します」とも言っている。

もちろん、自分の作るもの高品質であることは前提です。
たぶん、言い回しのちょっとした違いにすぎない売り込み方だが、自分は脅迫的な言い方はしたくないと思っている。
そんなやり方は卑怯じゃろう、と。

「良い製品に良い取説を。」
これがうちのポリシーです。
うちの製品がかわいくて仕方がない、そういう人と一緒に仕事をしたいです。

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【わかりやすいマニュアルの作り方】第139回 テンプレートを使う

今年はまた去年並に熱くなりそうです。おまけに節電ときますから、今年はどうしたものやら正直悩みます。
いくらなんでも、身体をこわしてしまっては意味がありませんから。

ちなみに、次回の更新はお休みします。早めの夏休みを取るためです。
申し訳ありません。

■基本的な定型化

さて、今回は作業の定型化について書きます。
取扱説明書という業務においては、実は意外なほどの割合が定型化できるものだということを書こうと思います。
また、逆に定型化しないでいると、ミスの発生を呼ぶ可能性が高くなる場合もあります。
取扱説明書は、対象となる会社によって一部ターンがのパターンがことなるとはいえ、お客様に説明するための文書であり、消費者基本法に裏付けられたものです。
ということは、製造/販売の責任主体である会社については必ず掲載しなければなりませんし、安全のための注意を欠かすこともできません。
当然、製品の仕様であったり、家庭用/業務用の区別、製品寿命といった、場合によっては落としたり見過ごしたりしがちな内容は、「この内容を書き換える:未定」として定型化しておいたほうが見落としやミスの発生が防げるというものです。

■上のレベルでの定型化

とはいえ、取扱説明書で書くことが決まっているとは限りません。
家庭用品であれば取扱方法とお手入れの方法、場合によっては破棄の方法を記載すればことはすみますが、現在のIT製品などでは、それだけではまったく不十分な場合がすくなくありません。
しかし、それでも基本的なパターンが適用できるという点は変わりありません。
たとえば、PC関連製品であれば、ほとんどの場合はデバイスドイバやユーテリティのインストールが必要ですし、スマートフォンであればアプリのダウンロードと登録が必要な場合が多いわけです。こういったことは、似たジャンルの製品を取り扱ったことがあるかどうかによってきますが、経験によって「こういった内容を書かなければならない」とわかってくるものです。
しかし、それがライター個人としての自分の中だけでわかっているだけでは、チェック機能が働きません。そのために、既存のPC関連のものをもとに書き直したりして、テンプレートとして使用するのですが、それだけでは、十分とはいえないのです。
どうして十分と言えないかというと「なにかが書いてある」からです。そうすると、なんとなくできているように見えてしまいます。
特に忙しいときや、疲れているとき(だいたいこの2つは同時に発生します)には、「それでよし」としてしまう恐れがあります。もちろん、それではいけないのです。
だから、新しいジャンルの製品の取扱説明書が終わった後には、ひとつず、そのジャンルのテンプレートを作ることが望ましいのです。
わからないところについては「未定」「不明」「資料待ち」と明記して。
こうすれば、書き落としや、ミスの発生の確率を下げることができるのです。

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【わかりやすいマニュアルの作り方】第137回 翻訳だけでは取扱説明書は無理です

6月が終わり、いよいよ夏本番が近づいてきました。
弊社はクーラーを使わずに、「空調服」という怪しげなアイテムで夏を乗り切ろうとたくらんでいますが、どうなることやら、です。

さて。今回は翻訳と取扱説明書の関係の話です。

■翻訳しただけでは取扱説明書になりません

最近も問い合わせがありましたが、英語や中国語の取扱説明書がある場合、「これを翻訳すればそのまま日本語で取扱説明書として使える」と思って問い合わせをしていらっしゃるお客様がいます。

はっきり申し上げますが、大間違いです。
技術翻訳に慣れた腕の立つ翻訳者さんが行った場合にのみ、きちんとした日本語として読めるテキストにしあげてくれる場合もあります。もっとも、これだけできる人は少々値段が上がり、ライターに書いてもらうのと大差なかったりするかもしれませんが、それはそれだけの価値があるから、仕方ないことでしょう。

さて。そうでない場合。

英語を読めるから、といって翻訳にはならないのは、どの業界でも当然のこととして知られているとは思いますが、とても簡単な実例を見てみましょう。
英文の取扱説明書に以下のように書いてあったとします。日本語ではどうなりますか?

Getting Start

これはほぼ慣用句みたいなものです。取扱説明書の翻訳に慣れている人ならば、迷わず「スタートガイド」と答えると思います。しかし、取扱説明書をあまり扱ったことがない、普通の翻訳をしてきた人にとっては、「さて、どうしよう?」といったものになるはずです。

■文化の違い

日本とアメリカの間でも、技術的な文化はかなり違います。

先程の書き方もそうですが、機器の取扱説明書に平然と”Enjoy!!”とか書いてあります。
日本で、それを真に受けて「さぁ、楽しみましょう!!」なんて書いたひには、間違いなくクライアントさんからの次の仕事はありません。

ただ、英文の取扱説明書は日本のそれに比べて構造化されている場合が多く、資料として見ると、日本の取扱説明書よりも優れている場合もあります。

ただし、図解のセンスに関しては日本の漫画とアメコミくらい描き方に差があるため、そのまま使うのはまったくお奨めできません。

また、説明の順番に関しても、「どうしてこうなるのかな?」といった場合がしばしば見られます。一応、論理的ではあるのですが、感覚的に違うなというものを感じざるを得ません。

■制度・法律の違い

もうひとつ面倒なはこちらかもしれません。

アメリカの場合FCCの認定を取っていれば、電気製品を発売できます。
当然ながら、この認定は日本では何の意味もありません。

ところが一部の取扱説明書では、どういうわけかこのFCC認定の内容をそのまま翻訳して掲載してある場合があります。
繰り返しますが、日本国内では全く意味のない記述です。

日本で売るものであれば、当然の制度と法律にのっとったものでなければいけません。特に取扱説明書は、製品の一部であり、お客様に説明を提供する唯一の方法だからです。

こういった理由から、弊社では「翻訳しただけでは取扱説明書は役に立たない。」と申し上げております。

きちんと製品を見て、操作して、エンジニアさんに取材をして、きっちりと原稿を書く。
弊社ではこういった方針で取扱説明書を作っております。

貴社の良い製品に、良い取扱説明書を提供したいと考えております。

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【わかりやすいマニュアルの作り方】第134回 取材の大切さ

ビックサイトの方に取材に行ってきました。

もちろん仕事で、エンジニアの方から話を聞くのが目的です。

もっとも、自分は船が大好きなので、帰りには有明ふ頭から水上バスに乗って帰りたくて困りましたが。

■取材の大切さ

今までにも何度か書いていますが、良い取扱説明書を作るためには、しっかりした事前取材が必要です。

事前取材には、当然ながらその商品について詳しい話を聞く、機能や特長について、話を聞く、といったことが一つ目の目的に挙げられます。

しかし、取材の目的はそれだけではありません。

エンジニアの方または、販売している方から「この商品の、どこが素晴らしいのか」という、「売る人の気持ち」を聞いてくることが必要です。

「そんなものなくても書ける。」その通りです。しかし、それが良いものになるかという点では、実物を見て、さらにエンジニアさんや販売員さんからお話を聞いた方が良い物になると断言できます。

「製品にかける思い」これがわからないでマニュアルを作るのでは、あまり良いものができない、そう思えないでしょうか。

■人への取材、製品への取材

今回は、製品を作っているメーカー様への、取材がメインでした。

それと同時に、製品がどのように動くかについても取材をする必要がありました。

テクニカルライターという仕事は、人だけでなく、「もの」の言うことも聞かなければなりません。

製品を実際に操作してみて、その製品がどういうコンセプトをもって作られているかを理解する必要があります。

例えばパソコン向けの周辺機器であるならば、お客様は高い確率で技術に詳しい人である可能性が高くなります。

また、家庭用品であるならば、おそらく主なお客様は主婦であろう、と想像されます。

もちろん、主なターゲットが、だれであれ誰が読んでも分かるように、取扱説明書を書かなければなりませんが、それでも基礎知識の有無(例:パソコンユーザーにはUSBの基本的な説明は不要)は、現行の内容を左右します。

■実際の取材

今回の取材は、玄関ドアについてでした。

ビックサイトにおける展示会の出展物の取材でした。そのため、幸いなことに秘密の内容はなく、公開情報だけで構成されています。

今回、マンションのドアについて、可動部分の写真を33枚撮影してきました。
普通に見ると、どれもこれも似たような写真で、面白みはまったくありません。

ただ、実際に、カギが刺さっているところ、カギを抜いたところなど状況によって異なるものをきちんと撮影してあります。
それだけに、そっくりなものが30枚も、ということになるのです。

そして、今回は取材メモを公開します。内容は、カギを掛ける・開ける・カギを抜くといった一連の動作です。難しいことはありません。
ただこの動作は、自分が試してみて、カギを抜く方法がわからなかったことから丁寧にメモを取ってきたものです。

メモメモをとっているときに、社長さんに聞かれました。

「やはり物を見ながらでないと、難しいですか?」

自分はこう答えました。

「はい、やはり、ものを見て、いじってみてが基本ですから」

私たちはこう考えて仕事をしています。

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【わかりやすいマニュアルの作り方】第133回 文化を伝える

関東でも梅雨入りしましたね。何やら例年より十二日も早いということなので、今年の夏は去年のような酷暑にならなければよいなあと思っています。

さて今回は、雑談です。

■トイレの取扱説明書ラベル

先週、NHK-BSの”らいじんぐ産”にて、トイレの話をしてしいました。

そこで「洋式便器の裏に張られたシール」の話をしていました。
このシールはまぁ見たことがあると思いますが、洋式便器の使い方の説明を張ったものです。

本当は画像を貼りたいところですが、TOTOさんのサイトにもみあたらないので、画像を見て起こしたテキストを記します。厳密には著作権の問題があるのかもしれませんが、これくらいは目をつむって頂けるのではないかと。もちろん、クレームがあれば消します。

男子小用
フタ・便座とも上げて陶器部を出して使用して下さい

大便及び女子小用
フタだけを上げ後向きに便座に腰を掛けて使用して下さい

これに棒状の人間と便座の図が掲載されているというとてもシンプルなものでした。

■よくある誤解

今となっては間違う人も少ないかと思いますが、自分が小学生のころには、まだまだ洋式便器は少数派でした。洋式便器の使い方自体が難しい、というわけではありません。

ですが、正しく使わないと、困った事態が発生することは間違いありません。

取扱説明書が何のためにあるかということは、いくつかの理由があります。

  1. 使い方を説明する
  2. やってはいけないことを説明する
  3. 使い方の、背後にある文化を説明する

普通は最初の二つだけですむものですが、この洋式便器の、取扱説明書シールは三番目だったといえるでしょう。
今まで使ったことがない道具は、その使い方が難しくなくてもうまく使うことができないのです。

こんな簡単なもの誰でも使えるよ。
だから取扱説明書なんかいらないよ。

これが、もっともよくある取説に関する勘違いです。

おそらく洋式便器は、一言誰かが説明すればまず、使い方を間違えることはないでしょう。
でも、違和感があるのです。今まで使って行ってきた方法と異なる方法を使うということには違和感を感じます。この違和感は何かというと、実は「文化」の違いなのです。

そして、実は「製品を売るということは、自社の文化を売るということ」でもあるのです。

だから、違和感がある製品を売るということは、その会社独特の文化を売るということでもあります。

自分のこだわりがある部分は、きっちり説明して「こう使って欲しい」とち伝えて、最も良い使い方をしてもらい、最高の状態で使うことで、メーカーもユーザーもどちらも幸せになるべきなのです。

弊社は、そういったことにお手伝いできればいいな、と常に考えています。

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