ポケットに携帯を入れたままコタツに入って低温火傷を負ったということで賠償すべしという高裁の判決が出たというニュースがありました。
最初にニュースで読んでも、以下のどちらかわかりませんでした。
- 携帯電話がコタツの熱を集熱して熱くなった
- コタツの熱で異常動作して、携帯電話自体が発熱した
1) だとしたら、ここまで製造物責任としてカバーしきれるものか、マニュアルのカバー範囲としても考えてしまいます。
製造時に、通常50度程度の環境下での加速試験程度はやっていそうに思いますが…まさかそのカバーが熱くなって低温火傷を負う恐れが…というのはやっていないでしょうし。
以下、引用
小磯武男裁判長は「(携帯電話は)ポケットに収納し、こたつで暖をとることは通常予想され、取扱説明書で禁止したり、危険を警告する表示をしていない。製造物が通常有すべき安全性を欠き、製造上の欠陥があると認められる」とした。
過熱の原因について小磯裁判長は「事故当時に携帯電話が連続通話状態で45度前後になっていたことや、こたつの熱が外部熱源になり、電池に作用したことなどが考えられる」と指摘した。
男性側の立証責任については「通常の使用にもかかわらず異常が発生したとすれば足り、具体的な欠陥の特定は必要ない」とした。
2007年7月の仙台地裁判決は「こたつが原因の可能性が高く、携帯電話に設計や製造上の欠陥は認められない」と判断。男性側が控訴していた。
引用ここまで
■最大の疑問
これが最大の疑問なんですが。
コタツでポケットに入れて寝た。ここまでは良いでしょう。
でも。
「携帯が連続通話状態にあった」って…これは「寝たまま、コタツに入れた電話をかけっぱなしにしていた」ということではないのでしょうか?
これが予見できる通常の使い方というのでしたら、マニュアルはどこまで書けばよいのでしょうか。
これが判例となると、メーカーにとってもかなり厳しい話になりそうです。
JTDNAと書いてもほとんどの人は知らないだろうと思いますが…
http://www.jtdna.or.jp/
何をやっているところかというと、PL関連から、取扱説明書や製品の包装など表記のガイドラインとかやっているところ。
http://www.meti.go.jp/product_safety/
http://www.nite.go.jp/
それと、MCEIでお会いした梁瀬先生の講座があって、取扱説明書をどう書くかということの話をうかがった。
どれも実務に密着していて面白い話であった。
正直、役人の人と大学の先生の講義で僕が眠くならないのですから。
■メンテナンスは大切 教育はもっと大切
製品寿命の記載とメンテナンスの話のなかで、印象に残ったエピソード。
某事故が起きた石油FF暖房機。
製品寿命というか、パーツの一部に使用していた材料が経年劣化して事故につながったということでった。
それ自体は不幸な事故であり、事故防止にはという話にもなるのだが、興味深いのは「その製品が最も多く売れていた(はずの)北海道では事故が1件もなかった」」という話であった。
種明かしをすると、「北海道では『暖房が故障すると命に関わる』ため、シーズン前にはメンテナンスする習慣が根付いていた」という話である。
こう書くと「ああそんなことか」と思うかもしれないが、実に重大な示唆に富んだ話である。製品は正しくメンテナンスしないと安全に使い続けることはできないのだ。
機械を仕事で使っている人には当然の話です。
でも、一般消費者にはほとんど届いていない。このあたりが取説屋の仕事なんだろうなぁと思ったのでした。
今回はちょっと消費者庁関連の話をするつもりだったのですが、ちょっと予定を変更して軽い話を。
…実は体調を崩してしまったので。
さて、今回は「テクニカルライターになるにはどうしたらよいか」について書いてみます。
どうやってなるか、と言われても
最初におことわりしますが、テクニカルライター養成のスクールはありません。
正確には、初心者向けのスクールはありません。ある程度の経験者向けとかはありますが…。
資格も役に立つものはありません。これも、認定試験がありますが、どっちかというと「社内で資格取らないと主任になれないぞ」という意味合いが強いです。
現在、テクニカルライターの置かれている状態は、30~40年前のデザイナーさんの立場と似たり寄ったりだと考えてください。
当時は「デザインなんて社内でやるもの」でした。よっぽどのことがなければデザイナーに依頼するなんて考えがありませんでした。
それを先達の皆様が市場を切り開き、状況を変えてきたのです。
現在「テクニカルライターです」と自己紹介すると、けげんな顔をされたり「そんな仕事あったんだぁ」と言われます。
現在おかれている状況はこんなものです。
未開の荒野と言っても言い過ぎではないかもしれません。
開拓者になるなら…
それでもテクニカルライターになりたいということでしたら、どうにかして業界にもぐりこんでください。
この業界で仕事を始めるには大きく分けて、3つの方法があります。
- 1つめはマニュアル制作会社に入ること
- 2つめはメーカーのマニュアル制作セクションに入ること
- 3つめはフリーライターとしてテクニカルに的を絞っていくこと。
3つめについては、僕が語れるような内容でもありませんので、割愛します。
長くなったので、次回の更新に続きます。
前回は体調不良で、更新ができなくて申し訳ありませんでした。
ということで今回はまとめに入ります。
最後は人件費…下げられません
さて。
最近、翻訳の方とDTPの方、それぞれとお話しする機会がありました。
どちらの方も、私たちテクニカルライターと同じように、「ネット時代になってから「値段のたたきあいとなって、単価が大幅に下がった」という話になりました。
単純な値段競争をしたら、私たち専門家は素人の人に負けてしまいます。
だからどうやって、専門性をアピールして仕事を取るかといった話になりました。
このシリーズの第2回で書いた「納期厳守」
第3回以降の「品質」
・技術的バックグラウンドと法律や安全に関する知識
・部品としてのテキストの質の良さ
・テキストの再利用性
それぞれ得意なジャンルは、微妙に違っていますが、全員こういったものをもっているプロの人たちです。
しかし、それでも単純な価格差…3割の差が付くならば、私たちにはどうしようもありません…には勝てない場合があります。
でも、私たちはプロです。
このやり方で売っていくしかないのです。
とすると、中間業者(制作会社)をパスして直接取引するか、あるいはマニュアルが普及していないが絶対に必要な業種を探していくことでマーケットを広げていくしかないと考えています。
コストに関する話は、今回で終了です。
次回はちょっと方向を変えてみようかと思います。
Tags: コスト, マニュアル, 作成, 価格, 制作, 取扱説明書, 取扱説明書・マニュアル制作・作成, 操作説明書
Posted in 制作コスト, 取扱説明書・マニュアル制作・作成, 未分類, 経営 | 取説屋:石井 宏治 2010年3月17日 |
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品質とは何かの続き、その2です。
前回は、製品(プロダクツ)の部品としてのテキストの品質について書きました。
テクニカルライターの作っているテキストは、最終消費者の手に直接渡る性質のものではありません。
マニュアルを最終製品としますと、テキストは最上流工程となります。
ですから、後工程のことを考えた製品作り(テキスト執筆)をしなければならない、というのが前回の内容です。
■テキストの再利用
「テキストの再利用なんて簡単じゃないか、適当に過去のファイルを開いてコピー&ペーストすれば一発でしょう。」
その通りです。目的のテキストのあり場所がわかるならば。また、そのファイルが何かの拍子で上書きされていない限り。
●テキストの履歴を取っておく
よくある話で、「ここの原稿は前回の打ち合わせの時の内容に仕様を戻したから…」ということが起こります。
普通にテキストを書いていて、「●●操作説明書原稿」といったファイルを作成して上書きで更新していると、こういうときには、コピー&ペーストする元のテキストが上書きされ、前の原稿はなくなっている…なんてことになるわけです。
実は、自分の経験でもこういったことは結構あり、対策として自分は長い期間のかかるものは日付管理で履歴を取りながら原稿を作成しています。
テキストのサイズはたいしたものではありませんから、毎日ログを取っていても問題ありません。
●内容の検索性
そして、もうひとつテキストを再利用する場合に問題となるのは「あれどこに置いたっけ」です。
もちろん、目的のテキストのフレーズでもわかっているならば、現在ではGoogleデスクトップやGrepといった検索技術で探し出すこともできますが、必ずしもそういった場合だけとは限りません。
ではどうするかというと、インデックスを使用します。
テキスト本体やフォルダにわかりやすいタイトルを付けるのは当然のこととして(これだけで見つけ出すのがぐっと容易になります)、
そして、以前にも何度か書きましたが、Microsoft Wordでテキストを作るときにはアウトライン機能を使って見出しを自動設定していますし、テキストファイルの場合は、■や●といった約物を見出しに設定していますから、これらを手掛かりにジャンプしていったり、アウトラインプロセッサに読み込んで探せばよいわけです。
一度、検査を通ったテキストは、部品としての再利用性があります。
これを利用する人でコストを下げることにつながっていくわけです。
次回の更新ではまとめにしようと思います。
品質とは何かの続きです。
■取扱説明書の原稿の品質とは(承前)
前回は「技術的バックグラウンド」と「法律や安全に関する知識」の2つを挙げました。今回からはそれ以外の2つについて説明します。
1つめは、「部品としてのテキストの質の良さ」であり、もうひとつは「再利用性の高さ」です。
私たちテクニカルライターはテキストを商品として書くことを要求されています。
それが、こういった面に反映されているのです。
●部品としてのテキストの質の良さ
ここまでのところでは、普通のユーザーさんが読んでも、「ああ、操作説明書の品質ってこんなことだな」と理解できることと思います。
しかし、ここでいう「部品としてのテキスト」というのは、今までのとはフェーズが異なります。
私たちマニュアル屋は、依頼すれば「印刷できるそのままのデータ」を作れると思っていらっしゃるかもしれません。
実際、うちでもそれに近いこと(簡易DTPまで)はやっていますし、そういう側面もあります。
しかし、本質的には私たちテクニカルライターはライターであり、デザインや組版(DTPオペレーション)は本業ではありません。
そのため、これらの業務は外部に委託する場合が多いのですが、問題はこうした場合に関してです。
DTPオペレーターの方が一番よくご存じだと思いますが、「使いにくい原稿」というものがあります。
極端に言うと、文字の左揃えをスペースで加工したり、見出しに色をつけたりしてあるだけで、書式指定すらされていないWordのデータです。
こういったもの渡されると、DTPオペレーターは、原稿をいちいち読み解きながら、オペレーション作業をしなければなりません。
書式指定してあればWordの機能を使って見出しを拾い出したりできるのですが、その話はまた別に。
DTPオペレーターにとっては、元のWord原稿を見ないでそのままテキストだけで組版ができるのが最も効率の良い作業方法です。
ですから、私たちプロのライターは下流工程のことを考えつつ、テキストにタグやマーカーを入れつつ原稿を作成していきます。
簡単なところでは、ここでもやっているように中見出しには■をつけ、小見出しには●をつけるといったルールなども含まれます。
長くなってしまいました。
次回の更新に続きます。
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Posted in テクニカルライター, 制作コスト, 取扱説明書・マニュアル制作・作成, 未分類 | 取説屋:石井 宏治 2010年2月24日 |
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コストの話の続きです。
今回は品質の話です。
■取扱説明書の原稿の品質とは
では、品質とは何でしょうか?
まず、当然外的な条件、ページ数や文字数が要求仕様にあっていることは最低限でも必要です。
原稿が完成していることとか、明らかな間違い(文法的であったり、タイプミス・変換ミスであったり…これらは実はチェックすることと、ツールを使うことでかなり減らせるのである)といった基本的な要件は満たしていると仮定した上で、の話です。
ここまでキープできていればとりあえずよしとする場合もあります。ですが、それでは、腕の振るいどころがありません。私たちテクニカルライターはプロですから、それなりに品質による差別化を図っているのです。
●技術的バックグラウンド
テクニカルライターは、前述したように技術者ですから、他のジャンルのライターよりも技術的造形があり、それが原稿に反映されます。
ファッションのことを何も知らずにファッション雑誌に書いたら物笑いになるでしょうが、マニュアルの場合は、「書いている人、全然わかってないんじゃないの?」というものが意外と多くあります。
●法律や安全に関する知識
マニュアルを仕事としていますと、自然と知的財産権や安全に関する知識が増えていきます。
そして、それは原稿にも反映されますし、「こういう製品であれば、これも必要」といった内容の追加もできます。
これらは仕様書や資料にはない場合が多いのです。
続きます。
さて、コストの話の続きです。
■取扱説明書・操作説明書の制作価格の妥当性とは
価格の妥当性は、品質や納期と見合うかどうかによります。
前回、「寝ていた方がマシ」程度の金額で受注する人たちについて、
こんな人たちに依頼した原稿の品質や納期はあてにならないのは言うまでもありません。
と断言しました。
乱暴と思われるかもしれません。
また、該当する人は「そんなことは無い」と思うかもしれません。
ですが。
納期について
まず、納期です。
プロは納期を守ります。守れない人はプロではありません。
なぜなら「納期を守れない人」は仕事を発注する先として、まったく信用がおけないからです。
信用がなければ受注はありません。
そして、プロは自分の信用を看板として仕事をしているのです。「在宅ワークだから」「サイドビジネスだから」という理由で安く受注している人とは背負っている重さがハナからちがいます。
そういう人たちにもきちんと納期を守る責任感のある人も多いです。ただし、比率として、プロの方が納期を守る人が多いです。
私は20代前半、編集者をしていたときに、入稿日に発熱して出社できなかったことがあります。そのときは上司がフォローしてくださったので事なきを得ましたが、後日出社したときに言われました。
「たとえ倒れても入稿日には来なさい。倒れるのは入稿を確認してから。」
私は、その1回の失敗以来、この言葉を守っています。
納期に対する責任はそういうことです。
これが価格に対する対価だと思っています。
続きます。
この件は、取説-マニュアル(操作説明書)とは必ずしも関連しませんね。
次回は品質についてを書こうと思います。
次はきちんとからむと思います。
今回から「マニュアルのコスト」について書こうと思います。
■原稿の適正な料金って何だ?
さて。
今回からは、マニュアルのコストというある意味いちばんヤバげな話をしようと思います。
いや、別にもっと原稿料をよこせとかいった話ではなく。もちろん、たくさんいただけるにこしたことはりませんが。
取扱説明書…操作説明書の原稿の適正な料金って何だ、ということです。
今回はマクラだけです。
ぶっちゃけて言えば、労働に対する対価ですから、その成果物にどれだけの価値を見いだすかという話です。
ネットで探すと、とんでもなく低い価格のものがあります。
400字詰め原稿1枚200円以下、下手すると100円とか。日本語なんか誰でも書けるじゃないかということで値段の叩き合いをやった結果です。
こういう価格を提示されると、プロは逃げます。「寝ていた方がマシな値段」の仕事だからです。
どういうことかというと…自分が1時間に書ける枚数はだいたい計算できます。
そうすると、1時間にどれだけ稼げるかがわかるわけですね。
1枚200円として……まぁ5枚でしょうか。時給1000円。100円だとその半分の500円。
コンビニやファーストフードでアルバイトするほうがナンボかマシです。
しかも、自分は今で培ってきた専門性を提供した上でこの値段なら。
「寝ていた方がマシ」というのは、こんなところから来ているのです。
でも、こんな値段で応じる人がいるのもどうも事実らしいです。
「在宅ワークだから」「サイドビジネスだから」という理由のようですが。
でも。
こんな人たちに依頼した原稿の品質や納期はあてにならないのは言うまでもありません。
続きます。
なんだか、今週は随分暖かくなってきました。
10度どころではなく、15度を越えるのでポカポカです。
今回は少しまとめに入ろうと思います。
■テクニカルライターとは-再考-
テクニカルライターは、境界領域の技術者です。
そのため、マニュアルで説明を加えるよりも、「本体のここにシールで説明を張った方が良い」とか、「このパーツの部分の色を変えればいいんじゃないか」とか考えたりします。
しかし。
こういった意見は、小さい企業で社長に直接話ができる場合以外はまず取り入れられることはありません。
というか正しく言えば、その意見が開発者までまず届きません。
できれば社内で気が付くのが1番なのですが、ベストばかりを求めても得られるとは限りません。何とかして、私たちのユーザーインターフェイスに関する知識や経験を生かしたいと考えています。
もちろんそれが商売につながると良いということもありますが、エンジニアとデザイナーで製品をデザインするときに、インターフェースの専門家としての意見をを述べる機会があればなあ、思うことがよくあります。
今週で、テクニカルライターについては終了しようと思います。
途中から、熱くなってどんどん話題がそれて行ったのが理由です。
ちょっとまとまらなくなってきてしまいました。
さて。
来週からは、「取扱説明書のコスト」で行こうかと考えています。
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