「取説屋:石井ライティング事務所」の代表兼テクニカルライターのブログ 本家サイト http://torisetuya.com

【わかりやすいマニュアルの作り方】第144回 データナンバリングとバックアップ

 

今回はデータのバックアップと二重化についての話をします。
弊社では、というよりも自分の仕事のスタイルとして、バックアップを必ず残すということは、ポリシーというよりも基本的な仕事スタイルとしています。

■バックアップについて

バックアップを取るのは、ハードウェアやOSのトラブルで読めなくなることを警戒してですが、実はデータを失うときはむしろそういったトラブルよりも人為的なミスでデータを消す…もっとはっきり言えばデータを空にして元データを上書きしてしまうことです。
システム的なトラブルには大体の場合は予兆があります。システムが、滑らかに動作しなくなったり、今まで見たことのないようなエラーが表示されるようになったり、あるいはハードウエア的に変な音がする、といったことも含まれます。
ですからこういったことに気がつけばその時点でバックアップをもう一度取るといった対策をすれば、ある程度までは損害を防ぐことができます。
もちろん、ある日突然起動しなくなる。といったことはありますかせ油断は禁物ですが。しかし、それよりも恐ろしいのは、ファイルを開いた状態でうっかり「すべてを選択」して、EnterとかSpzceキーを押して、Ctrl-Sを押してセーブしてそのまま終了してしまうことなのです。
なぜ、終了してしまうまでを含めているかというと、終了さえしていなければまだCtrl-Zで操作の取り消しをしていけばデータの復帰が出来る可能性があるからなのです…
もちろん、その結果は数バイトのサイズのファイルが残るだけです。
手の施しようもない悲劇です。

■データナンバリングについて

弊社では、数週間から一カ月、場合によっては何カ月にもわたって同じファイルを書き直して原稿を作成していく場合があります。
まあ、一週間に一度は、ハードディスク全体のバックアップを取っているので、前記のようなトラブルが起こったとしても、最悪先週のデータは残っているということにはなりますが、仕事をする上では致命的と言って良いレベルの大惨事でしょう。
しかし残念なことに、この悲劇を完全に防ぐことはできません。
そのため、長く同じファイルを使い続けているということは、日数が伸びるにつれ統計的に内容を失う確率が高くなっていくわけです。
そして、納期が厳しい最終日近くに一週間前のバックアップに戻されたら……泣くに泣けません。納期が近くなった場合には、多くの場合、メールでファイル送ったりして、結構バックアップがとれている場合もあります、しかしそんな偶然に頼るわけにはいきません。
そこで、筆者は毎日同じファイルを使う場合は、当日の朝、そのファイルのコピーをエクスプローラーで作成して、「ファイル名に」その日の日付をつけるようにしています。
当然ながらファイルを新規作成するときも、作成日をファイル名に含ませています。

例:
file20110912を使っている場合

コピーすると↓のファイルができる。
“file20110912のコピー”

ファイル名を変更する。
“file20110913″ ←ファイルの操作をした日付

そして、実際の作業はこのファイルを開いて行います。
こうすることにより、たとえ何らかのミスが発生してファイルの内容が失われるトラブルが発生したとしても、「昨日作成したファイルまでは残っている」ということになるからです。
ただし、ファイルがたまっていくことになりますから、適当なタイミングで整理をする必要はあります。
もちろん一日分の作業が失われるのはとても痛いことですが、それでも一週間分の作業が失われることに比べると断然ましです。

■もう一つのメリット

さて。

実は、このように履歴を取ってデータを残しておくことは、バックアップの安全性、という視点だけではなく、他にもいくつかのメリットがあります。
一つめは、やはり安全性です。
弊社のような仕事では、一つのファイルを元にして似たような内容のファイルを作ることがよくあります。
こうした時に、最新のファイルをもとに新しいデータを作ると、「ついうっかり」最新のファイルをテンプレートとしてしまうという事故が起こります。
しかし、履歴がとってあれば、2~3日前のデータを使えば「そんなに内容に違いはない」ですから、安全にほぼ最新データからテンプレートを作成できます。
ちなみに、最初の段落で書いた「内容の全消し」というのはこの作業で起こったことでした。
話がそれました。
このような形の履歴を取っておくことのメリットですが「変更依頼に対応しやすい」というメリットもあります。
取扱説明書制作の仕事では、ある程度までできた時点でクライアントにチェックを依頼します。デザイナーさんなんかも、同じような仕事ですね。
そしてクライアント参加の指示や意見に従って最新版から調整を行います。
これで、一方向に進んでいけばことは簡単なのですが、ときどき「前の方がよかった、前のみたいに直してくれ」という意見が出てくる場合があります。
こうした場合、履歴のデータがとってあると、とても助かるのです。
もちろん新しく作ることはやぶさかではありませんが、それでも納期がきついときには、データがあると助かることは変わりありません。

ということで、同じファイルを更新し続ける場合、このように日付をつけた新しいデータを前に作ることは、大変お勧めです。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所


【わかりやすいマニュアルの作り方】第142回体育会系の説明

先週末までの猛烈な暑さが過ぎ、やっとひと息がつけるようになりましたね。

今回は、ちょっと変わった方面から書いてみようと思います。

■私のするとおりにしなさい

実は今、妻が某教習所に通っている。それも、二輪免許を取るためである。

二輪免許に関しては、評判が結構良いところを選んでいった。指導が確実で、内容は確かである。それについては間違いない。

しかし。
指導方法については、少なくとも話を聞くかぎりでは、どうも「体育会系」にかたよっているように思える。

もちろん、自動二輪はかなりの部分が、肉体的な運動なので「体育会系」の指導方法は間違っているとは言い切れない。
実際、自分が大型自動振りをとったときの、いにしえの都民自動車教習所の練習やら、いまでもやっているだろう砧や府中の二輪交通安全教室での練習は、理屈よりも圧倒的に「身体にたたきこむ」方式だったし、それは今でもとても役に立っていて感謝している。

とはいえ。

問題はちょっと違う。大型自動二輪の一発試験のための練習や免許を持っている人の技能向上のための訓練ではなく、免許を取るため、言い換えれば「乗れるようになるため」の練習だからだ。

ちなみに「私の言うとおりにしなさい」という指導方法は、だいたい以下のような感じになる。

オートバイのメインスタンドをかける方法についての指導です。

  1. 指導員がやってみせる。「このようにやります。」
  2. 「では、やってみてください。」
  3. できない。
  4. 怒る。「なぜ言ったとおりにしないのですか。」

運動神経の良い、あるいは勘と目の良い人、あるいは基本的に、パワーがあり力ずくであげられる人ならこれでも問題ないでしょうが、妻はさんざん苦労したあげく、うまくできず帰ってきました。

■説明をするということ

簡単に書きましたが、上記の方法は説明ではありません。

手本を見せてその通りにできるのはごく一部の人だけです。まず、普通の人は「まっすぐ立つ」ことからしてできていない、とこれは余談。

帰ってきて、落ち込んでいるので、うちのアドレスV100をひっぱり出して練習をすることにしてみました。取得する免許は、小型限定なのでこれで重量の点では問題はない。

とりあえず、やってみてもらう。だが、全くスタンドが上がる様子がない。

教習所での説明の内容を聞いてみる。

「車体をまっすぐに立てて、車体を引き上げる」

たしかに、間違ってはいない。

だが、これでわかる人は何度も言うが運動神経が良い人だけだ。まっすぐ立つという感覚の訓練を受けたことがないと、普通の人にはそんな感覚はない。

仕方がないので、メインスタンドの立て方を指導する。

  1. 「メインスタンドが地面に着くまで出したら、ちょっと左右に揺すってメインスタンドの、両足が着地しているところを探して」
    両足がついたところで車体が垂直に立ったことになる。
  2. 「スタンドの上に体重をかけて、てこの力でぐっと上がる感じをつかんで」
    力で引っ張り上げても相当のパワーがないと車体は上がらない。
  3. 「上がったら車体を後ろにちょっと引っ張って」これで、すとんとメインスタンドが立つ。

教習所では何度やってもできなかったという妻が、数回手伝いながらやると感覚を覚えたようでできるようになった。

言うまでもなくこういったことは技術である。技術である以上、やり方は説明が可能だ。

自分は、警視庁指導センターや府中の自動車試験場などでかなりの時間を練習に費やしたから(つまり下手だったから)説明の仕方を覚えたのだが、勘が良く、見ただけですぐにコツを飲み込める人間にとっては、こんな説明は面倒くさいだけであろう。

この説明方法を指して「体育会系の説明」と言います。

理解の良い人に教えるときには最も効率的な方法ではあるのですが、向き不向きがありすぎます。

弊社では、だれにでも分かる説明の方法を採用しております。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所


しがない技術系のライターやっていて思うこと

ウチはメーカーさんに行って製品の話をエンジニアに聞いてから書くのが仕事なんだが、「メーカーがこれは面白い(役にたつでもいい)」と思って開発したものと、「マーケティングにより、こういうものが売れるとされた」から開発した製品では、なんだかしらんができあがった商品の「面白さ」が違う。
工業製品でこれなら、コンテンツなんかより一層その傾向が強いだろう。

いまのテレビ局で「これを作りたいから作った」というのが見える番組がどれだけある? そういうのが見えるのはアニメとか特撮とか映画とか、そういうのばかりじゃないか。
いずれ、ネットの「俺はこれを作りたい」という「技術・才能の無駄遣い」の連中に負けると思うな。

マーケティングで売るのは、売れるけど、本道じゃない。
クリエーターが自分が面白いと思うもの、自分の趣味に突っ走ったものを売らなくてどうする?
自戒を込めて。


【わかりやすいマニュアルの作り方】第131回 納品の話

今回は納品の話です。
というか、日本企業であればどこでも、納品…納期が最大優先であることは疑いのないところではありますが。

■納品とチェック

取扱説明書は、製品そのものに比較した場合、修正が容易という特徴があります。

しかし逆に言うと取説屋としては「いつまでたっても納品したはずの仕事がおわらない」といった事態になることになります。
このあたりはメーカーさんと事前打ち合わせがどこまでできているか、という点につきるのですが、修正作業自体が大きくなくても「忙しいところに予想外に」入ってくることがあるので、問題になることがあります。

取扱説明書は、制作方法は販促物などと同じ、印刷や版下製作です。
しかし、広告よりも製品に対する責任の度合いが強いため「かならず修正しなければならない」という強い動機が働くのです。

メーカーとしても、取扱説明書は製品の一部としてきちっとチェックする必要があります。
厳密には取扱説明書まですべて整っていてはじめて「製品」といえるからです。

納品する取説屋としては、もちろん大切な商品ですが、同様に内容をチェックするメーカーしても、製品の品質にかかわるのと同じ重さが要求されます。

■お客様にとっての取扱説明書

さて、メーカーと取説屋にとっては、こういうポジションの取扱説明書ですが、それを最終的に使うお客様の目からみたらどうなるでしょうか。

お客様にとっては、製品を扱うためのただひとつの手引き書です。

もちろん、その商品を対面販売して、サポートもできているならばまだ他の手段があるということになりますが、現在は対面販売よりも通信販売の比率が増え、お客様としては、頼れるものは文書だけといった状況になっています。

ですから、「お客様がきちんと操作できるか」は、制作者とメーカーのチェックにかかっていると言っても過言ではないのです。

そして、取扱説明書は納品の時に決定してしまいます。
だからこそ、チェックと納品がもっとも大切になってくるのです。

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【わかりやすいマニュアルの作り方】第130回 型を作る

GWも終わってしまいました。
世間の状態が大変に変わり、これから社会も変わっていくのかなぁなどと考えさせられました。

さて。
今回は「型」について話をします。型といってわかりにくければ、テンプレートでも雛形でも良いです。
取扱説明書を仕事として行うには「型」が必要だということです。

■「型」とはなにか?

何か、道楽でやっている武術関連ではこんな話を何度もしたような気がしますが、基本的には同じことです。
学習・訓練や業務を効率的に行うのにはどうしたらよいかを考えると、パターンを作ってそれを、身体に染み込むまで繰り返し、その後にその型から離れる…というのが、自分の考える理想です。

とはいえ、型を離れるなんていうのは夢のまた夢で、そこまでたどり着くにははるかに遠いのですが。

■仕事内容を整理する

取扱説明書を書くときに先頭から順に書いていくと、よほど小さくて一度にに全体を把握できるモノを除くと、大概は混乱してしまいます。

「これを書いてなかった」

「これはここじゃなくて、後ろに入れるべきだった」

「ここを後ろに移動したら、別の機能について説明がなしで突然出てくることになる」

だいたい、こんなことが続発して、混乱するはずです。

どうしてこうなるのか。理由を言うのは簡単です。

「全体として把握していないから」です。

とはいえ、商品全体を把握するということは、並大抵のことでないことは事実ですが。

ただ、、いままで同様の商品を販売してきたのであれば、どのように売るか、すなわちどのように説明するかについては、蓄積があるはずです。

機械の説明をするのであれば、機械の「各部の名称」が分かっていないと、説明はできません。
「メインスイッチをオンにする」と書いてあっても、肝心のメインスイッチの場所がどこだかわからなければ操作はできません。
ということであれば、「各部の名称」は、取扱説明書の最初になければいけないことがわかります。

こういった細かいことの積み重ねが、「型」になっていくのです。

■「型」の例

では実際に、型の例を見てみましょう。

以下は十年以上前のゲームソフトの冒頭部分の例です。

  1. 挨拶:お買い上げいただきありがとうございます…
  2. タイトル:製品名と形式番号
  3. 対応機種:ソフトウェアが動作する機種、および動作環境
  4. ゲームの目的:このゲームの目的についての説明
  5. インストール:ソフトウェアのインストール方法の説明
  6. 起動と終了:ソフトウェアの起動と終了の方法
  7. ゲームの流れ:ゲーム内の各フェイズ・モードの説明
  8. 画面の見方:各モードの画面の見方

かなり大雑把ですが、こんな感じで書いていました。ゲームの目的などは前後しても良いのですが、対応機種→インストール→起動と終了といった流れは変更できません。

これを変更してしまうと、実際にゲームをプレイする際に差し障りが発生したりするからです。

ちなみに、終了が起動とセットになっているのは、「実際にこのようにした方が便利だ」ということから来ています。実際、ゲームを終了するのは、ゲームをクリアしたときだけではないから、というよりそういうことのほうがよほど希だといえるでしょう。

大概の場合は、途中でセーブしたり、あるいはちょっとプレイしてみて、そのまま中断するといった方が主となります。特に後者の場合、終わり方がわからないと「途中で中断して大丈夫なのか」と不安になります。一部のゲーム(実名を上げるとWizardryのことです!)ではリセットしたりして中断すると、そのままゲーム中に取り残されてしまうというものもあった時代ですから。

型はこうしたものを一つずつ積み上げていって「こういうときはこうしたほうがよい」というものです。
たとえば、弊社での「説明図は線画がよい」ということも型のひとつです。

まぁもっとも「我が流派には型なし」というところもありますから、これもひとつのやり方に過ぎないのかも知れません。

これを読んでいる皆様が自分独自のノウハウを積み上げていけることを望みます。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所


【わかりやすいマニュアルの作り方】第126回説明図について

このたびの東日本大震災および津波で、被災された方にお見舞い申し上げます。

更新が遅れており、申し訳ございません。
お仕事があってそれは大変うれしいのですが、ブログを更新する暇が取れないといううれしい悲鳴も上げることになってしまいました。

さて、今回は説明図について書こうと思っています。

■説明図とは

説明図というのは、いわゆる取扱説明書でよく見る線画のことです。

「ふたを開ける方法はこうで、スイッチはここにある」といったことを示すのに使われます。

こういったことはいくら言葉で書いても全然伝わりませんが、図を使えば図の中に矢印を入れれば一発でわかります。
もちろん使いどころを間違えると、かえって分かりにくくなったりもしますが。

さて、説明図はどうして線画で描くのでしょうか。
理由は絵の情報量にあります。

まずは、以下の三つの絵をご覧ください。

adapter-k adapter-k2 neji-k
写真 写真キリヌキ 線画イラスト

左側の絵ほどリアルで、右側ほど、簡略化されています。

絵であればリアルな方がよい、ということもありますが、取扱説明書に向いているのは、右側です。
これはどうしてでしょうか。

実は簡単なことで「説明に必要な情報だけを提示する」ことが、取扱説明書における説明図の役割だからです。

さらに、、一番右の図は「K」のマークが黒で書き込まれています。
実際には写真で見られるように、浮きだした形になっており、色も本体と同じ白です。
では、これが間違いなのかというと、取扱説明書としてはこれで正しいのです。

お客様にはここにマークがあるということが伝わり、マークの種類もわかります。
これをリアルにして、薄い線だけで文字を描いても、かえってお客様混乱するばかりです。

次回更新に続きます。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所


【わかりやすいマニュアルの作り方】第126回 取材について

今回は、調査と並ぶもう一本の柱、取材について書きます。
製品は、自分で調査するのはもちんのことですが、取材させていただかないとわからないことは大変多いのです。

■仕様書調査の限界

最初の調査は「仕様書」による資料調査から開始します。
もちろん、資料はしっかり読みます。ですが、資料には書いてないことも多くあります。
ここで言う書いてないことというのは、技術的な内容に限りません。いえ、技術的な内容に関しては、ほとんどの場合はしっかり書いてあるのがほとんどです。
とはいえ、自分は技術の一般的な常識はもっているとはいえ、詳細な知識にはどうしても欠けるとろがあります。

たとえば、あるPC関連のあるデバイスに「最大転送速度48Mbps」と書いてあったとします。
まぁ、これは某メモリカードの最大転送速度だったりするわけですが、理論値ではそうであっても、そのデバイスがカードを2枚させるようになっていたりすると、実用上は大きく状況が変わってくるわけです。

「スロットが複数あるけど、同時使用は一枚だけ」

「複数同時にアクセスできるが、大幅に速度が低下する」

「アクセススピードは、接続インターフェースの限度による、それを複数で分けて使うので、その分速度は下がる」

「速度は低下しません。常にフルスピードです」(←ありえません)

ざっと考えてみただけで、こういったオプションが考えられるわけです。しかし、これらのことは仕様書を見てもけっこう高い確率で書いてなかったりするのです。
これは別に、悪意があって書いてないということではなく、単純に「技術的に常識だろう」と仕様書を書いた技術者が思い込んでいるのが原因です。

したがって、このあたりが、仕様書による調査の限界となるのです。これより詳しく知るには取材を行う必要があります。

■取材はどうするか

できれば、取材の前に予備調査として仕様書を見ておくことが望ましいです。
とはいえ、その場で初めて物を見るということも希ではない取説屋としては、そうベストを望むわけにもいきません。

対象となる物を見たら、まず普通は「これはたぶんこういう物だな」という推測が働きますが、それでもあえて「これは何ですか」と聞くところから始めます。

これは自分のやった仕事ではまったくありませんが、たとえばイーモバイルさんのAndroid端末など、普通に見たら「ああ、これはPDAだな」と思ってしまいますが、実際には「モバイルルーター」として販売されています。とすると、取扱説明書もモバイルルーターとしてのものを書いて、他の機能はすべて「その他の機能」として書かなければならないのです。
だから「これは何ですか」と聞くところから始めなければならないのです。

技術的なこととは限らないのです。

そして、もうひとつ。

できればユーザーサポート・営業の人に話をしたいのです。
クレームの電話を受けたり、現場でお客様の話を聞く人は、確実に「お客様がどこで迷うか」の情報をもっています。
そういった情報があれば、トラブルの起こりにくい取扱説明書を作ることができるのです。

取材と調査、絶対に取扱説明書の準備はこの2本立てが必要なのです。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所


【わかりやすいマニュアルの作り方】第125回 テストについて

雪が降りましたね。季節外れでびっくりです。

さて。

今回はテストについて書きます。
え、なんで取説屋なのにテストと思った人、甘いです。
実は取説屋の仕事は書くことは三分の一くらいです。
より大きいのは、事前の取材と実物に対する調査と試験です。
取材については別の回に譲るとして、対象となる商品の試験について書きます。

■テストとは

当然ながら試験は対象となる商品によって方法は全く異なりますが、基本的にはクライアントさんから受け取った資料、場合によって仕様書であったり、パンフレットであったり、旧モデルのマニュアルであったりします。
というのは建前で、何も資料がない場合もあったりするのですが…
それはともあれ、まずはそういった資料を基に、試験を開始します。
試験はほとんどの場合、セットアップや使用前の準備から始まります。

■大切なのは「使う準備」

ユーザーはこういった操作を普通一度ーあるいはシーズンに一度しか行いません。でも、ここでうまくいかないと、その商品を全く使えないといったことになります。
普段の使用は、たいがいはルーチンワークです。そういった作業は間違いにくく、簡単になっています。まぁ正直なところ、毎日使うものがめんどくさかったら買い換えてしまうと思いますが…

ということで、使用の準備やセットアップ、ソフトウェアの場合はインストールを繰り返すことになるわけす。
ちなみに、ソフトウェアの場合は結構難しいことが多く、dllやフレームワーク、あるいはDirectXといった環境をインストールするので、完全なアンインストールができず、クリーンインストールのやりなおしなどはとても手間がかかることもしばしばです。

■テストに悪ずれを持ち込まない

さて、私たち取説屋がこういった試験をするときは、常に心がけていることがあります。
それは、「悪ずれをしない」ということです。
私たちは、実際のところを言えば、様々な商品を扱ってきたプロです。また、技術者でもあります。簡単な結線や工具を使って組み立てたり、ソフトにしても簡単なマクロを組むぐらいのことはできるわけです。
でも、それだけに「慣れ」は大敵です。
「ああ、ここのすきまはちょっとくさびで持ち上げといて」…ダメです。
一般のお客様はそんなことをしません。
組み立てている途中にバランスが崩れたらそこで作業が止まるのが普通です。
「悪ずれ」していると、これを見落としてしまいます。
「ああ大丈夫」で書いてしまうと、バランスをとって組み立てるのが恐ろしく難しいのを平気で書いてしまうことになりかねません。
きちんとしようと思えば、組立開始前に「ささえを用意する」か「2人で組み立てる」といった記載が必要なのに、これを落としてしまうのです。
これでは「わかりやすい取扱説明書」は作れません。

■ギャップを埋めるもの

「一般ユーザーの視点で」というのは言うのは簡単です。しかし、自分の技術者としての技術が上がっていくにつれ、かえって一般ユーザーの立場から離れてしまうのです。
では、そのギャップを埋めるのは何かというと2つあります。
1つめは、先ほどから書いているように、悪ずれをしない「注意力」です。見落としがなければ、とばしたりすることは減ります。
しかし、じつは一番大切なのはもうひとつです。
それは「想像力」です。

■想像力は無限に

椅子を考えたとき、普通は「座るためのもの」と考えます。
私たちのような取扱説明書を仕事にしている人は、次に「この上に立って踏み台として使う」ということを考えます。
でも、知人のマニュアル制作者はもう一つ先のことを見ていました。
「子供が飛び降りて遊ぶかもしれない」
これは正直すごいと思いました。彼は「子供がそういう行動をするのを常日頃見ていたから」と謙遜していましたが。
「お客様の立場で考える」
言うのは簡単です。しかし、どこでも飛び跳ねる元気な子供や、力が弱くなって目も悪くなったお年寄りのことも全部考えて、必要な範囲はどこまでかを決めて反映するということには、たいへんな「想像力」を必要とします。
ぞういった想像力は今の自分でも足りないと思っています。
人生は修行と言いますが、こういった想像力はまだまだ鍛える余地があります。これからもがんばっていこうと思います。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所


【わかりやすいマニュアルの作り方】第124回 取説屋の需要について

今回は、ちょっと業務多忙のため「作り方」ではなく、余談みたいなものにさせていただく。
時間もきちんとしていないうえ、前回のネタの続きみたいで大変申し訳ないのだが。

さっそく本題に入る。

自分でも珍しいと思っている「取説屋」の需要と供給についてである。
最近、ビジネス交流会などに参加すると「そういう仕事があったのですか」と言われるのに慣れた、というのは以前も書いた。
ただ、面白いのは、その後に「需要はあると思いますね」と言われることだ。実際にはあまり発注はないのだが。

しかし、そう言われるということは、必要性はあるということだ。
じゃあなぜ需要が発注に結びつかないのか。
まぁ、これも結論はでている。

ピーアール不足なのだ。

えーと。他に適当な例を思いつかないので。
1978年より前に「アニメ雑誌」の需要はあったか?
たぶん、あった。というか、その需要が見いだされたからこそ、その後の大ブームにつながったのだろう。

ビジネスとして。
取説屋は必要とされている。
実感としてそれはある。

きちんと強い需要がある業界とコネクトしてくれることを望む者である。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所


【わかりやすいマニュアルの作り方】第123回 必要なところに届いていますか?

足立区異業種交流フォーラムに行ってきて、とりあえず12部ほどパンフレットを配ってきました。
今回はそのあたりの営業の話をします。

■ニーズが認識されていない

それにしても、(何度も書くようですが)この「取説屋」という仕事の存在自体が知られていません。
会う人ほとんどすべてに「そういう仕事があるのですね」と言われます。
あげくのはてには「取説って何ですか?」とまで聞かれた。それも複数回です。

だが。
おかしくないですか、それって?

自分の仕事が欲しいって話は置いておいても、いまどきの商品に説明がついていないものはほとんどないでしょう。
たとえば鍋を買っても、それがテフロン加工であれば、「空だきするな」とか「金だわしでこするな」といった注意書きの一枚くらいは入っているのが普通です。
財布を買っても、「色落ちしますので…」といった注意書きくらいは入っています。

まぁ、「簡単なものなら自分で作れるだろう」と思いがちではあるのですが。
でも、それは必ずしも正しくないのです。

先日会った人は、自分の作った製品を通信販売で売っていました。
その方は自分で取扱説明書を作って付けているのですが、「自分の思いつかないような使い方をして、問い合わせをしてくる人がいる」ということでした。

昔からのお店で売る対面販売ならば「わからなければお店の人の所に行って聞く」という方法がとれました。しかし、ネットを代表とする通販などで売る場合を考えると、使い方を教える方法は、商品の同梱物やカタログ・ネットしかありません。実は自分の作ったものは届いても、それに込めた「思い」までは届いていないことが多いのです。

つまり、本当はプロの助けが必要であるにもかかわらず「そんな仕事があることを知らない」ために、それが「外部の業者に依頼することができる」ニーズとして認識されていないのです。

■皆様と一緒にビジネスをする

いまさらという感はありますが、ここ2年ほど営業をやって感じたのは、どうしても自社1社だけでは限界があると言うことです。

ですから、現在では自分は他の人たちと一緒にビジネスをしていきたいと考え、それができるしくみを考えています。
上にも書きましたが「困っていることがある」けれども「頼める専門家がいるとは知らない」では、問題は解決しません。

弊社は、こういう「取説屋」という仕事があることを、新製品開発のアドバイスをするコンサルタントの人に、パッケージと一緒に取扱説明書のことを尋ねられる印刷業の人に、本業でなくて苦手なのにやむなくコピーライターが取扱説明書を書いている広告代理店の人に、製品のトータルデザインをてがけるデザイナーさんに…知ってもらいたいのです。

そして、一緒にお互いに儲かるビジネスをやりたいと願っています。


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