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【わかりやすいマニュアルの作り方】第186回 取扱説明書制作の実際について

2012年10月16日 火曜日

10月に入ってからさすがに涼しくなってきました。
城南島海浜公園まで、うちのミニバイクでツーリングにいったりしたのですが、8月~9月の立っているだけでフライパンの上で焼かれているような感覚は味わわずにすみました。
もっとも、潮風は強く吹いていましたが、それはわざわざそういうところに行ったのですから文句を言える筋合いではありませんね。
しかし、我ながら出航していく船を見て「ああ、あれは伊豆諸島行きだな」とかわかるようになっているのはすこしマニアに踏み込みかけている気がしました。
でも、伊豆諸島は良いところなんですよ。
…さて。

 

■業務マニュアルを作ったことがある人の話

取扱説明書を作って見たことのある人と話をしました。
いろいろと面白い話をしたのですが、「取扱説明書のようなものは、現代ではワードもエクセルもパワーポイントもあるしで、簡単に作れる」ように思われているという話から始まりました。
では、実際はどうだったかということを聞くと、実に興味深い話を聞くことができました。実際は大違いなのですね。
何よりも、実際に書いてみると、ぜんぜんボリュームが足りない。出来たものは、まるでメモ、マニュアルとしてはとても不完全なモノになってしまった。
書き方については、教えてくれる人がいるわけでもないし、OJT でやれと言われる。
以前の担当者が作った不完全なものがあるけれども直せない。
やろうとしたが、なによりも書かなければならないボリュームに挫折することになった。
書かなければならない内容で、細かいことが抜けている。
たとえば、郵便物は午前/午後の2回持っていくと書いてあるが、実際にはもっとこまめに持っていくのだが、それを書き直して良いのかどうかわからないので、直せない。
誰でも出来ると思われているから、コストをかけられない。分かりやすく書く方法を教えてくれる人もいない。
長文の書き方や、セクション分けについても、アウトライン機能や見出しのコントロール方法も機能としては存在するけれども誰も教えてくれる人もいない。

以上のように、取扱説明書の制作なんて簡単と思われている状態と、実際のギャップという話をたくさん聞くことができました。

■ポリシーは?

実務の問題点については、まぁどこにでもあることでもありますし、いくらでも書くことができますが、そのいくつかは正しい教育をしたり、きちんとかけるべきところにコストをかければ、問題は解決できることが多かったりするので、全部を書き記すことはしません。

しかし、その根本にあるところだけは一言書いておかなければなりません。

「業務マニュアル」って誰のために作るものですか?

当サイトでいつも扱っている商品に添付する取扱説明書は基本的に「お客様」のためです。PL法対策などはいかに大切なことであっても、その一部だしかありません

でも、業務マニュアルの場合、いったい誰のために作らなければならないのか、根本的なポリシーがはっきりしていない場合があるのです…もちろん全部ではありませんが。

しかし、そうした場合、まず「何のために」「誰のために」作るのかといったポリシーをしっかりしないと小手先の技術的な改良ではどうにもならないということにもなりかねません。

まず、ポリシーをしっかりすることです。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所


【わかりやすいマニュアルの作り方】第162回取扱説明書は取材が大事

2012年3月13日 火曜日

今週は、先週のようなミス(無遅刻だったのに、160回でついにやってしまいました…)をやらないように、移動中にAndroid端末(キーボードがあります)でだいたいのところは書いています。

しかし、昔のW-Zero3よりも変換やスクロールが速くて快適ですね。

■取扱説明書で大切なこと

今回は久しぶりに取扱説明書の作り方です。
取扱説明書を作っている会社にはいくつかのパターンがあります。
まずはデザイン会社、これは会社案内やパンフレットの業務の延長としてとらえている場合が多いです。
次に多いのは印刷会社です。必ずしもすべてではありませんが、中には取説を作っているというよりも、印刷物の一つとして制作を引き受けているといったところもあります。
もうひとつは翻訳会社だったことがある場合です。この場合はあまりデザインが凝ったものではなくても良いものができることがあります。

さて、これらにはどういった違いがあるのでしょうか。

もちろん、個々の会社にはすぐれたところがあります。
デザイン会社を母体としている場合は当然ながら美しく、使いやすく、読みやすいページを製作するでしょう。
印刷屋さんは最終的な納品物に関して見積りでは一番強いと言うこともあるでしょう。
翻訳会社の場合はやはり複数言語の展開に強いです。

■弊社の強みは?

では、弊社のような「取説屋」の強みは何でしょうか。

今挙げたような強みは弊社にはありません。ですが、それに変われると思うものがあって商売をしているのです。
それは、「取材の確かさ」です。

弊社の代表も兼ねておりますテクニカルライターは、もともと(ソフトウェアではありますが)エンジニアでした。そして、動く機械が大好きと言う人間がベースです。

その上にPL法だのなんだのも学びましたが、弊社の特色は、なんといってもその経歴を生かした「技術的な」取材能力です。その上に、商業誌(ゲーム必勝本です)のノウハウをいかして分かりやすく仕上げることです。
この辺りは、技術者出身のテクニカルライターでなければ、
まずひけをとることがありません。

では、取説で一番大切なことは何でしょうか。
予算と言われてしまうとどうしようもないのですが、弊社では商品の意図を正しく伝えることだと思っています。

わかりやすい構成と文章はいわゆる文章力によって形成されるものですが、その土台となる技術の資料・製品の目的といったことの取材、これがないときっちりとした取扱説明書はできません。

弊社は、派手なことはできませんが、こういった地味な取材から取扱説明書を作るように心がけています。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所


【わかりやすいマニュアルの作り方】第153回 お金の話

2011年12月13日 火曜日

寒くなってきましたね。本当に冬だと感じます。

もっとも、もう師走も1/3を過ぎているのですから、本当はそんなにのんびりしたことは言っていられないのですが……

■コスト-お金-手間の話

今回は、お金の話です。
実は、うちはページ単価で12000円くらいから頂いております。
正直もうちょっとと頂きたい案件もありますが、この時期無理は申し上げられません。
さて。
なんでそんなに高いんだと思われた方に、説明させていただきます。

ものすごく簡単に書くと、ほとんどが人件費-手間賃と言い換えても良いです-です。

仕様書をそのまま書き下して終わりであれば、それこそ社内の技術者に「書き直して」で終わるかもしれません。

しかし私達の持っているのは単なるリライトの技術ではありません。

ちょっと思いつく限り列挙してみましょう。

  • 商品を実際にテストして「お客様の使いやすい全体の構成」を作成します。
  • 図のイメージを考えて商品の写真を撮り、それを元に線画を書き起こします。
  • 安全上の注意や警告の内容を考えます。
  • 安全上の注意や警告を操作説明の文を読むのに邪魔にならないように、なおかつ誤解が生じるおそれがないように明瞭に記載します。
  • 製造または販売の責任者を明記します。
  • 特に購入後最初に行わなければならないこと(開梱、初期設定、設置、導入など)があれば別立てにして手順を説明します。
  • 操作方法を手順に従って記載します。
  • テキストの内容にあうように線画を調整し、必要な矢印やマークなどを描き加えます。
  • テキストや画像の材料が揃ったら、それらを本・パンフレットとして読めるようにきちっとかたちにDTP(組版)を行います。
  • 全体の読み直しと校正を行います。

これだけのことを行います。もちろん、場合によって行わないものもあるかもしれませんが。

■開発者の誇り

そして、これらの作業はほぼすべて自動化が難しいものです。自分たちはできるだけの自動化を心がけてはいますが、それでも難しいと言わなければなりません。
なぜならば、この手順は「開発」の手順の一種だからです。

取扱説明書は製品の部品の一つです。したがって、取扱説明書を制作するということは、製品の一部を制作することに他ならないわけであり、それはつまり「開発」の手順になります。

商品開発はどんなものであれ、単純作業ではありません。

弊社では「どんな商品」を「誰」が「どのように」使うのかをきちっと聞き取り調査を行った上で、それに見合うような取扱説明書を制作します。

それが弊社のポリシーでもある「良い商品によい取扱説明書を提供します」ということだと考えています。

そして、それゆえに、人件費-コストがかかってしまうことになるのです。

これについては申し訳ないと思います。ですが、弊社では「なんでも良いから安くやってくれ」ではなく「良い取扱説明書が欲しい」とおっしゃるお客様と仕事をしたいと考えております。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所


【わかりやすいマニュアルの作り方】第148回今年やった仕事

2011年10月24日 月曜日

先週は申し訳ありませんでした。さすがに体調を崩してしまってはどうしようもありません。

先週は二度も、都立産業技術研究センターに行ったりと、なかなか忙しい一週間でしたが、途中でちょっとダウンしてしまうのは予想外でした。

まあそんなこと以外に、普段の足に使っている原付二種をスクーターからギア付きに買い替えることにしました。妻が免許を取ったという理由も大きいのですが、なによりギア付きがないと練習一つもできず寂しいのです。

さて。

本題に入ります。

■今年やってきた仕事

メインはIT関連。通信・マルチメディアから、デバイス・ソフト関連まで、なんでもござれ。さらに、説明図だけの仕事、杖、浄水器と広い範囲でやっています。

わかるとは思いますが、取扱説明書って商品であれば何にでも必要なんです。
まぁ、魚だの肉だの野菜だのといった生鮮食料品や本当の最小限のネジのような部品は除きますが。

特に今、中国や東南アジアから雑貨や電気製品を輸入して販売することがあると思います。しかし、ほとんどの場合コストの関係からか、それらにはろくな取扱説明書がついていません。

そんな商品、単価も高くないし、お客様だって輸入品だってわかっているから大丈夫だよと思ってはいませんか?

とんでもない間違いです。

そんな商品、誰が信用してくれるというのでしょう。

■何だって商品自身が説明すべき

いま、ここを見ていらっしゃるのでしたら、ここのサイトを作っている人間にメールして、3~5万も出せば、ベトナム語や中国語のペラを日本語の法規に則った、わかりやすい、きちんと連絡先も書いてあるペラに作り替えることができる、ということはお分かりのことと思います(あー、ベトナム語の翻訳はつけてくださいさすがにそのままでは読めません)。

実際のところ先ほど説明したような各種の商品についても、「作れる」という確信はあって制作の依頼をお受けしていますが、一番最初にやることは常に、「その商品を使う人がどのようにして使うか」という取材であることは変わりありません。

その商品を、誰がどのようにして使う、それをイメージできるようにならないと、使い方の説明はうまくできません。それは説明を紙に落とし込んだ取扱説明書でも当然同じことになります。

その説明書、ぱっと見てイメージが伝わらない、よく読めば書いてあるけれども、では絶対にお客様は読んでくれません。そしてわからないままに、サポートへ電話をしてくるのです。当然ながら内容を理解していませんから、問い合わせの内容も割ととんちんかんになります。営業やサポートの手間が、大変食われるわけです。

お客様側から見ると「何これわかりにくい説明書」ということで、いきなりマイナス印象です。すぐに使えない、お客様にとっても不幸です。

弊社は、特にジャンルを限っていません。

取扱説明書というと、何となく電気製品や動力を使う製品のように感じますが、そんなことはありません。

どんなジャンルでも、操作するところ・動く物があるのであれば、弊社は喜んで取扱説明書を、お作りしますどうぞ、お気軽にご相談ください。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所


【わかりやすいマニュアルの作り方】第137回 翻訳だけでは取扱説明書は無理です

2011年7月5日 火曜日

6月が終わり、いよいよ夏本番が近づいてきました。
弊社はクーラーを使わずに、「空調服」という怪しげなアイテムで夏を乗り切ろうとたくらんでいますが、どうなることやら、です。

さて。今回は翻訳と取扱説明書の関係の話です。

■翻訳しただけでは取扱説明書になりません

最近も問い合わせがありましたが、英語や中国語の取扱説明書がある場合、「これを翻訳すればそのまま日本語で取扱説明書として使える」と思って問い合わせをしていらっしゃるお客様がいます。

はっきり申し上げますが、大間違いです。
技術翻訳に慣れた腕の立つ翻訳者さんが行った場合にのみ、きちんとした日本語として読めるテキストにしあげてくれる場合もあります。もっとも、これだけできる人は少々値段が上がり、ライターに書いてもらうのと大差なかったりするかもしれませんが、それはそれだけの価値があるから、仕方ないことでしょう。

さて。そうでない場合。

英語を読めるから、といって翻訳にはならないのは、どの業界でも当然のこととして知られているとは思いますが、とても簡単な実例を見てみましょう。
英文の取扱説明書に以下のように書いてあったとします。日本語ではどうなりますか?

Getting Start

これはほぼ慣用句みたいなものです。取扱説明書の翻訳に慣れている人ならば、迷わず「スタートガイド」と答えると思います。しかし、取扱説明書をあまり扱ったことがない、普通の翻訳をしてきた人にとっては、「さて、どうしよう?」といったものになるはずです。

■文化の違い

日本とアメリカの間でも、技術的な文化はかなり違います。

先程の書き方もそうですが、機器の取扱説明書に平然と”Enjoy!!”とか書いてあります。
日本で、それを真に受けて「さぁ、楽しみましょう!!」なんて書いたひには、間違いなくクライアントさんからの次の仕事はありません。

ただ、英文の取扱説明書は日本のそれに比べて構造化されている場合が多く、資料として見ると、日本の取扱説明書よりも優れている場合もあります。

ただし、図解のセンスに関しては日本の漫画とアメコミくらい描き方に差があるため、そのまま使うのはまったくお奨めできません。

また、説明の順番に関しても、「どうしてこうなるのかな?」といった場合がしばしば見られます。一応、論理的ではあるのですが、感覚的に違うなというものを感じざるを得ません。

■制度・法律の違い

もうひとつ面倒なはこちらかもしれません。

アメリカの場合FCCの認定を取っていれば、電気製品を発売できます。
当然ながら、この認定は日本では何の意味もありません。

ところが一部の取扱説明書では、どういうわけかこのFCC認定の内容をそのまま翻訳して掲載してある場合があります。
繰り返しますが、日本国内では全く意味のない記述です。

日本で売るものであれば、当然の制度と法律にのっとったものでなければいけません。特に取扱説明書は、製品の一部であり、お客様に説明を提供する唯一の方法だからです。

こういった理由から、弊社では「翻訳しただけでは取扱説明書は役に立たない。」と申し上げております。

きちんと製品を見て、操作して、エンジニアさんに取材をして、きっちりと原稿を書く。
弊社ではこういった方針で取扱説明書を作っております。

貴社の良い製品に、良い取扱説明書を提供したいと考えております。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所


【わかりやすいマニュアルの作り方】第134回 取材の大切さ

2011年6月7日 火曜日

ビックサイトの方に取材に行ってきました。

もちろん仕事で、エンジニアの方から話を聞くのが目的です。

もっとも、自分は船が大好きなので、帰りには有明ふ頭から水上バスに乗って帰りたくて困りましたが。

■取材の大切さ

今までにも何度か書いていますが、良い取扱説明書を作るためには、しっかりした事前取材が必要です。

事前取材には、当然ながらその商品について詳しい話を聞く、機能や特長について、話を聞く、といったことが一つ目の目的に挙げられます。

しかし、取材の目的はそれだけではありません。

エンジニアの方または、販売している方から「この商品の、どこが素晴らしいのか」という、「売る人の気持ち」を聞いてくることが必要です。

「そんなものなくても書ける。」その通りです。しかし、それが良いものになるかという点では、実物を見て、さらにエンジニアさんや販売員さんからお話を聞いた方が良い物になると断言できます。

「製品にかける思い」これがわからないでマニュアルを作るのでは、あまり良いものができない、そう思えないでしょうか。

■人への取材、製品への取材

今回は、製品を作っているメーカー様への、取材がメインでした。

それと同時に、製品がどのように動くかについても取材をする必要がありました。

テクニカルライターという仕事は、人だけでなく、「もの」の言うことも聞かなければなりません。

製品を実際に操作してみて、その製品がどういうコンセプトをもって作られているかを理解する必要があります。

例えばパソコン向けの周辺機器であるならば、お客様は高い確率で技術に詳しい人である可能性が高くなります。

また、家庭用品であるならば、おそらく主なお客様は主婦であろう、と想像されます。

もちろん、主なターゲットが、だれであれ誰が読んでも分かるように、取扱説明書を書かなければなりませんが、それでも基礎知識の有無(例:パソコンユーザーにはUSBの基本的な説明は不要)は、現行の内容を左右します。

■実際の取材

今回の取材は、玄関ドアについてでした。

ビックサイトにおける展示会の出展物の取材でした。そのため、幸いなことに秘密の内容はなく、公開情報だけで構成されています。

今回、マンションのドアについて、可動部分の写真を33枚撮影してきました。
普通に見ると、どれもこれも似たような写真で、面白みはまったくありません。

ただ、実際に、カギが刺さっているところ、カギを抜いたところなど状況によって異なるものをきちんと撮影してあります。
それだけに、そっくりなものが30枚も、ということになるのです。

そして、今回は取材メモを公開します。内容は、カギを掛ける・開ける・カギを抜くといった一連の動作です。難しいことはありません。
ただこの動作は、自分が試してみて、カギを抜く方法がわからなかったことから丁寧にメモを取ってきたものです。

メモメモをとっているときに、社長さんに聞かれました。

「やはり物を見ながらでないと、難しいですか?」

自分はこう答えました。

「はい、やはり、ものを見て、いじってみてが基本ですから」

私たちはこう考えて仕事をしています。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所


【わかりやすいマニュアルの作り方】第126回 取材について

2011年3月22日 火曜日

今回は、調査と並ぶもう一本の柱、取材について書きます。
製品は、自分で調査するのはもちんのことですが、取材させていただかないとわからないことは大変多いのです。

■仕様書調査の限界

最初の調査は「仕様書」による資料調査から開始します。
もちろん、資料はしっかり読みます。ですが、資料には書いてないことも多くあります。
ここで言う書いてないことというのは、技術的な内容に限りません。いえ、技術的な内容に関しては、ほとんどの場合はしっかり書いてあるのがほとんどです。
とはいえ、自分は技術の一般的な常識はもっているとはいえ、詳細な知識にはどうしても欠けるとろがあります。

たとえば、あるPC関連のあるデバイスに「最大転送速度48Mbps」と書いてあったとします。
まぁ、これは某メモリカードの最大転送速度だったりするわけですが、理論値ではそうであっても、そのデバイスがカードを2枚させるようになっていたりすると、実用上は大きく状況が変わってくるわけです。

「スロットが複数あるけど、同時使用は一枚だけ」

「複数同時にアクセスできるが、大幅に速度が低下する」

「アクセススピードは、接続インターフェースの限度による、それを複数で分けて使うので、その分速度は下がる」

「速度は低下しません。常にフルスピードです」(←ありえません)

ざっと考えてみただけで、こういったオプションが考えられるわけです。しかし、これらのことは仕様書を見てもけっこう高い確率で書いてなかったりするのです。
これは別に、悪意があって書いてないということではなく、単純に「技術的に常識だろう」と仕様書を書いた技術者が思い込んでいるのが原因です。

したがって、このあたりが、仕様書による調査の限界となるのです。これより詳しく知るには取材を行う必要があります。

■取材はどうするか

できれば、取材の前に予備調査として仕様書を見ておくことが望ましいです。
とはいえ、その場で初めて物を見るということも希ではない取説屋としては、そうベストを望むわけにもいきません。

対象となる物を見たら、まず普通は「これはたぶんこういう物だな」という推測が働きますが、それでもあえて「これは何ですか」と聞くところから始めます。

これは自分のやった仕事ではまったくありませんが、たとえばイーモバイルさんのAndroid端末など、普通に見たら「ああ、これはPDAだな」と思ってしまいますが、実際には「モバイルルーター」として販売されています。とすると、取扱説明書もモバイルルーターとしてのものを書いて、他の機能はすべて「その他の機能」として書かなければならないのです。
だから「これは何ですか」と聞くところから始めなければならないのです。

技術的なこととは限らないのです。

そして、もうひとつ。

できればユーザーサポート・営業の人に話をしたいのです。
クレームの電話を受けたり、現場でお客様の話を聞く人は、確実に「お客様がどこで迷うか」の情報をもっています。
そういった情報があれば、トラブルの起こりにくい取扱説明書を作ることができるのです。

取材と調査、絶対に取扱説明書の準備はこの2本立てが必要なのです。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所


【わかりやすいマニュアルの作り方】第89回 取材について01

2010年5月18日 火曜日
ここのところ、堅い話が続いて(僕も)困っているので、今回は実際の制作の話にして、気楽に書ける内容にしようと思います。
さて。

●マニュアル作りの第一歩は仕様書から

マニュアル作りは、仕様書をまずだーっと読むところから始めます。
だーっと、です。詳細に検討するのはあとで。
もちろん、仕様書なんかなくて現物しかない場合もありますが、それもまた別の話。
だーっと読んでいくと、大概は仕様のなかに妙にひっかかる、まわりくどい部分があります。
もしも読んでいてそれにひっかからないとしたら、それはバージョンアップや改良でこなれた製品であるか、あるいは見ている方が技術的センスに欠けるかです。もちろん、何度もブラッシュアップされた製品でしたら、それにこしたことはないのですが。

●仕様に問題がある?

通常、販売する以上は、仕様には致命的な問題はなくなっています。
ひっかかるようなところといっても、通常はトラブルにまではいたらず、せいぜいがところ取り回しでちょっと不便に感じたり、一時的にシステムが遅くなったりといった程度のことです。
しかし。
ここはマニュアル制作者としてはひっかかってみないといけません。
「なぜこんなに仕様になっているか」疑問を持つべきなのです。
実機があれば実際にやってみる。仕様書ではわからないようなケーブルの取り回しがあって回避されているかもしれない。速度低下も回避方法があるかもしれない。
やってみたら、エンジニアさんにインタビューする。
エンジニアさんは、もしかしたら「しまった」という顔をするかもしれません。もしかしたら、気がついていない…ということはあまりないと思いますが…かもしれません。
そうやって、「どうすればよいか」とか「どういうときに使う想定なのか」を聞いたら、マニュアルの企画に取り込みます。
どこにどうやって書くか、を考えるのが、取説制作者の役割です。

【わかりやすいマニュアルの作り方】第19回 仕様書をクリアに読める?

2008年11月5日 水曜日

ひとまず佳境の19回です。

5W1Hと言う言葉は聞いたことがあると思いますが、要は仕様書をそれに当てはめてリライトしてやるのです。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
取扱説明書用の5W1Hです。

というところまで説明しました。

実際にやってみると、かならずしも全部を補う必要があるわけではないことはわかると思います。どこを省いて良いかは経験で知ることになりますが。
そして、仕様書を5W1Hを当てはめてリライトし終えると、わかりにくかった仕様書がクリアに読めることに気が付くと思います。

優秀なテクニカルライターならば、この手順を全部とばして、いきなり目次構成の作成まで進むことができます。
このあたりが経験であり、私がこういうノウハウを公開してもすぐには追いつかれない、飯を食っていけるゆえんでもあるわけです。

さて、仕様書を読み終わったことですし、次回からそろそろ全体の構成案と目次構成案の作成に進みましょうか。


【わかりやすいマニュアルの作り方】第18回 取扱説明書用の5W1Hとは?

2008年10月29日 水曜日

さて、18回です。

とは言っても気分的には19回ですが…

実はこのブログ、主にW-Zero3 esを使って書いているのですが、クラッシュに伴い、バックアップからリカバリしたらメールのデータも消えてしまいました。
前回までの分はすでに送信して保存してあったため、問題なく回収できましたが未送信だった今回分の原稿は失われてしまったのでした。
バックアップは大切です。
ちなみに、筆者は週に1度バックアップをとっています。

さて。
前回は以下のように書きました。

仕様書には普通「目的」と「使用する状況」が書かれています。
ここから、チェックシートを作っていきます。
さて、その「チェックシート」の内容ですが、別に難しいことはありません。
5W1Hと言う言葉は聞いたことがあると思いますが、要は仕様書をそれに当てはめてリライトしてやるのです。

取扱説明書用の5W1H

取扱説明書用の5W1Hです。これに当てはめて仕様書をリライトしていくわけです。

5W1H

Who(誰が):その機能を使うのは誰か。一般的なユーザーか、エンジニアか、管理者などの権限を持つ人か。

  • What(何を):操作される対象は何か
  • When(いつ):操作はどのような状況で行うのか。ユーザーが操作したときか、起動時・終了時・エラー発生時などに自動的に起動されて行う操作なのか。
  • Where(どこで):機能の及ぶ範囲はどこまでか。空間的なものと時間的なものを含みます。
  • Why(どうして):機能の目的です。機能が何のためにあるかです。
  • How(どのように):機能の働き方です。一般的に、これが省略されていることはまずありません。

仕様書にはこれらの情報がすべて盛り込まれていることはまずありません。なぜならば、仕様書はエンジニア向けの資料であり、仕様書を書くときはたいがい時間的な制約があります。そして、「誰が」「どこで」などはデフォルト値が暗黙的に推定され、記載されない場合がほとんどだからです。
優秀な仕様書の場合は「なぜ」が書いてあり、使用の理解に役立つ場合があります。こういう仕様書はほんとうにありがたいものです。

続きます。