【わかりやすいマニュアルの作り方】第207回 「読み物」としての取扱説明書

前回も、取扱説明書はユーザーサポートだけに使うものではないということを書きました。

また制作された取扱説明書も、公表するメディアは紙だけには限らないということとセットで理解されることです。

今ではインターネットを使ってPDFなどで公表することができます。取扱説明書の中には、当然、製品中で利用している技術についての単語などが含まれていますから、その中のキーワード検索するとその製品のテキストが検索される、ということにもなる可能性があります。もっとも、この辺はGoogleなどの検索サイトの検索仕様などによってきますので可能性という所に止まりますが。
製品がユーザーの目に留まる可能性が高くなるということなのです。

「取扱説明書なんか公開したところで、実際に困っている人以外は読みやしないよ。」
普通に聞くと、妥当に聞こえます。
ですが、これは正しくありません。
僕の知る範囲でも、最低限で2種類(プラス1)の人たちは取扱説明書を読み物として読みます。

今回はこの人たちについて書いてみます。

■技術系の読み物として

最初の人たちは理系の人たち-あるいは技術系の人たちです。わかりやすく言うと、パソコン雑誌や天文雑誌、科学雑誌技術雑誌などを読む人たちです。昔「子供の科学」とか「科学」(学研の「科学と学習」の…です)を喜んで読んでいた人たちといえばわかるでしょうか。

科学・技術系の雑誌は、必ずしも必要な情報を得るために購読されているとは限りません。技術系の人たちはこういう雑誌が面白くて読んでいるのです。
だったら広告のような「文化系向け」の書き方(その製品を使った時の、様々なメリットや、良い結果を列挙しているスタイル)ではなくて、その製品に関する技術的な情報を公表するだけでも楽しんで読んでくれる層がいるということなのです。
そして、この人たちは何かあったときに技術的な相談を受けることが多いオピニオンリーダーである可能性が高いです。

また、取扱説明書は、最終消費者であるところの一般ユーザー向けとはなっていますが、あくまでも技術書であるというくびきからは逃れることができません。
ですがそれだけに、「技術文書を目にすることに慣れている」理系・技術系の読者にとっては、かえって読みやすいといったこともあるかもしれません。

たとえば、組立家具の場合など、出来上がった結果の写真だけではなく、「組立の手順」を見ることができれば、技術的な知識があれば、その製品がどのような性格を持っているのかまで知ることができます。実に興味深い読み物ではないですか(もっとも手抜きをした仕様だと、手抜きもばれてしまうため、そういう仕様の製品を作っている場合には公表はおすすめできません)。

■手順書として

手順書としてというのは、必ずしも理系・技術系でなくても文章を丁寧に読む事を苦にしない人たちです。分かりやすく言うと、文書や様々なドキュメントを読むことを日常的に行っている人たちです。法律や契約、会計・経理、サービスなどの文書を扱っている人たちを指しています。

この人たちは技術系の人たちほどこういった文書を読み慣れているわけではありませんが、さまざまな手順について説明・解説した文書については同じぐらい慣れている人たちといってもいいでしょう。
ただし、「技術的理解力」と言う点では上の技術者、の人たちにはさすがに、一枚遅れをとります。それだけにこの人たちに「わかりやすい」と理解されないと、お客様には買ってもらえないと考えるべき人たちです。
もしも法律家の人に「わかりにくい」と思われたとしたら、実はそれは商品としての製品には、【欠陥】があるということになるのです。いわゆるPL法上の問題ということになります。
こちらは、読者が「製品」としての説明ではなく、「商品」としての説明を求めているということになります。これがわかりやすく使いやすければ、その商品は優れた商品ということになります。

これは広告とは違った意味で、その商品の良さを直接お客様に説明する良い機会ともなります。
そしてこの人たちはまた上の技術者の人たちとは別の意味でオピニオンリーダーである可能性が高いのです。商品購入の決定権がある、といえばわかるでしょうか。

この人たちに、アピールできるチャンスが増えるという事は非常に望ましいことではないでしょうか。

■おまけの人たち

さて実はそれ以外にも読んでくれる人たちがいます。
自分もそれに含まれるのではないかと思うのですが、【何でも読む】人たちという一団が。

  • 大量の本を読む。
  • 読むものがありさえすれば何でも読む。

こういう人たちが、取扱説明書が公開されていればとりあえず読んでみるといった行動をとる可能性があります。
この人たちは上の人たちのような決定権はないかもしれません。
でも、情報提供者・発信者としてはものすごく力のある人たちです。読むこと、掲示板などに書くことを全く苦にしない人達ですから。
自分や家族はたぶんこのへんにはいるでしょう。

こういう人たちのことも忘れてはいけないのです。

■プロのマニュアル屋として

最後にプロのマニュアル屋、テクニカルライターとして言わせてください。

きちっと書かれたしっかりとした取扱説明書は、読んでいて楽しいです

法律的に問題が発生するようなものではない、しっかりとした取扱説明書は読んでいて楽しいものなのです。

この辺を理解してもらうようにすること、これが、私たちの仕事の、やるべき事の一つなんでしょうと思っています。

がんばらなくちゃ、と。

 


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