【わかりやすいマニュアルの作り方】第142回体育会系の説明

先週末までの猛烈な暑さが過ぎ、やっとひと息がつけるようになりましたね。

今回は、ちょっと変わった方面から書いてみようと思います。

■私のするとおりにしなさい

実は今、妻が某教習所に通っている。それも、二輪免許を取るためである。

二輪免許に関しては、評判が結構良いところを選んでいった。指導が確実で、内容は確かである。それについては間違いない。

しかし。
指導方法については、少なくとも話を聞くかぎりでは、どうも「体育会系」にかたよっているように思える。

もちろん、自動二輪はかなりの部分が、肉体的な運動なので「体育会系」の指導方法は間違っているとは言い切れない。
実際、自分が大型自動振りをとったときの、いにしえの都民自動車教習所の練習やら、いまでもやっているだろう砧や府中の二輪交通安全教室での練習は、理屈よりも圧倒的に「身体にたたきこむ」方式だったし、それは今でもとても役に立っていて感謝している。

とはいえ。

問題はちょっと違う。大型自動二輪の一発試験のための練習や免許を持っている人の技能向上のための訓練ではなく、免許を取るため、言い換えれば「乗れるようになるため」の練習だからだ。

ちなみに「私の言うとおりにしなさい」という指導方法は、だいたい以下のような感じになる。

オートバイのメインスタンドをかける方法についての指導です。

  1. 指導員がやってみせる。「このようにやります。」
  2. 「では、やってみてください。」
  3. できない。
  4. 怒る。「なぜ言ったとおりにしないのですか。」

運動神経の良い、あるいは勘と目の良い人、あるいは基本的に、パワーがあり力ずくであげられる人ならこれでも問題ないでしょうが、妻はさんざん苦労したあげく、うまくできず帰ってきました。

■説明をするということ

簡単に書きましたが、上記の方法は説明ではありません。

手本を見せてその通りにできるのはごく一部の人だけです。まず、普通の人は「まっすぐ立つ」ことからしてできていない、とこれは余談。

帰ってきて、落ち込んでいるので、うちのアドレスV100をひっぱり出して練習をすることにしてみました。取得する免許は、小型限定なのでこれで重量の点では問題はない。

とりあえず、やってみてもらう。だが、全くスタンドが上がる様子がない。

教習所での説明の内容を聞いてみる。

「車体をまっすぐに立てて、車体を引き上げる」

たしかに、間違ってはいない。

だが、これでわかる人は何度も言うが運動神経が良い人だけだ。まっすぐ立つという感覚の訓練を受けたことがないと、普通の人にはそんな感覚はない。

仕方がないので、メインスタンドの立て方を指導する。

  1. 「メインスタンドが地面に着くまで出したら、ちょっと左右に揺すってメインスタンドの、両足が着地しているところを探して」
    両足がついたところで車体が垂直に立ったことになる。
  2. 「スタンドの上に体重をかけて、てこの力でぐっと上がる感じをつかんで」
    力で引っ張り上げても相当のパワーがないと車体は上がらない。
  3. 「上がったら車体を後ろにちょっと引っ張って」これで、すとんとメインスタンドが立つ。

教習所では何度やってもできなかったという妻が、数回手伝いながらやると感覚を覚えたようでできるようになった。

言うまでもなくこういったことは技術である。技術である以上、やり方は説明が可能だ。

自分は、警視庁指導センターや府中の自動車試験場などでかなりの時間を練習に費やしたから(つまり下手だったから)説明の仕方を覚えたのだが、勘が良く、見ただけですぐにコツを飲み込める人間にとっては、こんな説明は面倒くさいだけであろう。

この説明方法を指して「体育会系の説明」と言います。

理解の良い人に教えるときには最も効率的な方法ではあるのですが、向き不向きがありすぎます。

弊社では、だれにでも分かる説明の方法を採用しております。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所


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