【わかりやすいマニュアルの作り方】第125回 テストについて

雪が降りましたね。季節外れでびっくりです。

さて。

今回はテストについて書きます。
え、なんで取説屋なのにテストと思った人、甘いです。
実は取説屋の仕事は書くことは三分の一くらいです。
より大きいのは、事前の取材と実物に対する調査と試験です。
取材については別の回に譲るとして、対象となる商品の試験について書きます。

■テストとは

当然ながら試験は対象となる商品によって方法は全く異なりますが、基本的にはクライアントさんから受け取った資料、場合によって仕様書であったり、パンフレットであったり、旧モデルのマニュアルであったりします。
というのは建前で、何も資料がない場合もあったりするのですが…
それはともあれ、まずはそういった資料を基に、試験を開始します。
試験はほとんどの場合、セットアップや使用前の準備から始まります。

■大切なのは「使う準備」

ユーザーはこういった操作を普通一度ーあるいはシーズンに一度しか行いません。でも、ここでうまくいかないと、その商品を全く使えないといったことになります。
普段の使用は、たいがいはルーチンワークです。そういった作業は間違いにくく、簡単になっています。まぁ正直なところ、毎日使うものがめんどくさかったら買い換えてしまうと思いますが…

ということで、使用の準備やセットアップ、ソフトウェアの場合はインストールを繰り返すことになるわけす。
ちなみに、ソフトウェアの場合は結構難しいことが多く、dllやフレームワーク、あるいはDirectXといった環境をインストールするので、完全なアンインストールができず、クリーンインストールのやりなおしなどはとても手間がかかることもしばしばです。

■テストに悪ずれを持ち込まない

さて、私たち取説屋がこういった試験をするときは、常に心がけていることがあります。
それは、「悪ずれをしない」ということです。
私たちは、実際のところを言えば、様々な商品を扱ってきたプロです。また、技術者でもあります。簡単な結線や工具を使って組み立てたり、ソフトにしても簡単なマクロを組むぐらいのことはできるわけです。
でも、それだけに「慣れ」は大敵です。
「ああ、ここのすきまはちょっとくさびで持ち上げといて」…ダメです。
一般のお客様はそんなことをしません。
組み立てている途中にバランスが崩れたらそこで作業が止まるのが普通です。
「悪ずれ」していると、これを見落としてしまいます。
「ああ大丈夫」で書いてしまうと、バランスをとって組み立てるのが恐ろしく難しいのを平気で書いてしまうことになりかねません。
きちんとしようと思えば、組立開始前に「ささえを用意する」か「2人で組み立てる」といった記載が必要なのに、これを落としてしまうのです。
これでは「わかりやすい取扱説明書」は作れません。

■ギャップを埋めるもの

「一般ユーザーの視点で」というのは言うのは簡単です。しかし、自分の技術者としての技術が上がっていくにつれ、かえって一般ユーザーの立場から離れてしまうのです。
では、そのギャップを埋めるのは何かというと2つあります。
1つめは、先ほどから書いているように、悪ずれをしない「注意力」です。見落としがなければ、とばしたりすることは減ります。
しかし、じつは一番大切なのはもうひとつです。
それは「想像力」です。

■想像力は無限に

椅子を考えたとき、普通は「座るためのもの」と考えます。
私たちのような取扱説明書を仕事にしている人は、次に「この上に立って踏み台として使う」ということを考えます。
でも、知人のマニュアル制作者はもう一つ先のことを見ていました。
「子供が飛び降りて遊ぶかもしれない」
これは正直すごいと思いました。彼は「子供がそういう行動をするのを常日頃見ていたから」と謙遜していましたが。
「お客様の立場で考える」
言うのは簡単です。しかし、どこでも飛び跳ねる元気な子供や、力が弱くなって目も悪くなったお年寄りのことも全部考えて、必要な範囲はどこまでかを決めて反映するということには、たいへんな「想像力」を必要とします。
ぞういった想像力は今の自分でも足りないと思っています。
人生は修行と言いますが、こういった想像力はまだまだ鍛える余地があります。これからもがんばっていこうと思います。

マニュアル(取扱説明書)制作の専門家 取説屋:石井ライティング事務所


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コメント / トラックバック1件

  1. some より:

    「大人の常識」と「子供の常識」は全く違います。
    子供は大人とは全く違った発想で道具を使用します。
    私には5歳の娘がいるのですが、
    日々の行動で気づかされることが多くあります。

    テーブル(こたつ)…歌もしくはダンスを披露するためのお立ち台
    座椅子…若干背もたれをあげた状態で、両足を広げてシーソー遊び、
        もしくは、わざと後ろに倒れる「バックドロップ」ごっこ
    ベッド…トランポリンごっこ
    タンス…引き出しを少しずつ段差を付けて、階段遊びごっこ…etc

    子供は家具でも何でも「遊び道具」にするため、
    特に子供への注意喚起文作成には、毎回頭を悩まされています。
    ですが、娘が日々の行動(遊び)で注意点についての
    ヒントをくれるので、大分助かっています。
    (上記遊び後は毎回、カミさんからこっぴどく怒られていますが…)

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