亡母に習った水術

その壱

−習いはじめ−

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 偉そうげに書いていますが、実のところ、僕は大学に入る前までまるっきり泳げなかったのです。
 もちろん、それまで夏に水泳教室に通ったこともありました。しかし、どうしたことか、それはまったく成果を上げなかったのでした。
 そして、それはどうにも母には気に食わなかったらしいのです。
「泳ぐなんて誰でもできることよ。泳げないのは間違っている」と。

 そして、浪人生活で太っていた僕に言いました。
「あなたは太っているからやせなきゃなりません。だから、泳ぎにいきます。ついてきなさい。」
 浪人生で、立場の弱い僕には逆らう術はありませんでした。

 こうして、本人がそれと気付かぬうちに古流泳法への道は開かれたのでした。

 もちろん、母は一応言いました。「あたしが教えられるのは、あたしが昔習ったやり方だけよ。だから、学校で教えるのとは違うかもしれないけど、いいわね」 ……なに、いいも悪いもないのです。でも、泳げない僕は、泳げるようになれればよいと思って答えました「うん、別にどんなんだっていいよ」。
 そして、プールに着いたら、母は「師匠モード」に入っていたのでした。

 「しまった」と思った時はもう遅かったのです。

このページの内容は、かつてニフティのあるフォーラムに書込んだ内容を基にしています。本来ならば、現在の正しい知識に基づいて書くべき内容なのですが、今書き直すと、専門用語が生半可に入り、かえってわかりづらくなるため、あえてそのままの内容で、一部だけ直して書きます。また、用語もあえて訂正していません。したがって不足や間違いがあることもたしかですが、ご容赦ください。それぞれの内容には初出の年月を記載してあります。

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